手紙(2006年 映画)

2016-11-28 00:00:44 | 映画・演劇・Video
東野圭吾原作の小説を映画化。殺人犯の兄を持つ弟が差別を受け続け、それは妻や娘にも及ぶことになる。弟と兄を結ぶのは「手紙」であり、また加害者と被害者の家族を結ぶのも「手紙」である。

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殺人といっても、ミステリーとかアクションとかの方向ではなくあくまでも社会派的に一編を通し、シリアスな霞が漂い続ける。「加害者の家族までもが差別を受けるという苦悩こそが受刑中の加害者への罰なのか」という命題が観客にも与えられる。

ところで、兄が入れられたのは千葉刑務所。明治以来の千葉監獄の建物がそのまま改造され使われているのだから居住環境は知れるだろう。遠い過去に、その近く(中ではない)に住んでいたことがあるのだが、記憶の中には脱獄事件があったことが残っている。住宅地の中にあることの問題点は脱獄のこと。脱獄者は逃げ回るためには衣類や金銭が必要なため、近くの家に押し入る可能性が高いわけだ。しかも命がけで行動するわけだ。

一方、その明治式の刑務所が街中にあって多くの人が目にすることで、「あそこに入れられたらこわいなあ」と思わせることで犯罪抑制効果を狙っているのだろうか。

主演は山田孝之。この映画から10年経ち、堅実な演技で堅実な俳優になっている。その妻を演じるのが沢尻エリカ。この映画の時は人気絶頂だったが、翌2007年に「別に・・事件」を起こし、さらに「エリカ様」となり、世間を甘く見て、役にありつけなくなったが、2012年から復活し、「新宿スワン」で再び大女優コースに戻るのだが、この時の共演が本作の主演である山田孝之。偶然ではあるのだろうが、人のリンクってよくあることのように思える。


映画の中で、刑務所への慰問のシーンがあった。こんな妙なところに書くのもなんだが、以前、私に将棋を教えてくれた平野さん(故人)というプロの六段の先生は、よく刑務所や長期療養病院の慰問に行って対局されていた。先生の師匠は業界内で事件を起こしたことがあり追放されたのだが、弟子として償いをしていたのかもしれないと、ふと、きょう思った。