紙の月(角田光代著)

2015-04-01 00:00:06 | 書評
kaminotuki宮沢りえ主演で映画化までされた小説。実は、角田光代の小説は、文体が合わないせいか、読むのに少し疲れることが多い。何度かにわけて少しずつ読み進んでいった。

銀行に勤める女性行員(契約社員)が、横領を繰り返し約1億円を夫以外の男につぎ込む筋なのだが、あらかじめこの主人公(梨花)がタイに高飛びしたところから始まり、その後で元に戻って犯行をはじめたところに戻るので、ある意味、精緻に犯行の手口を書いても、到達点を想像してハラハラする必要はない。

それにしても、偽造証券の作り方など、かなり細かい描写があって、書類の偽造とかしたことがなるのではないかと思われるのだが、角田光代の描写というのは、ずいぶん細かいところがあると思えば、おおまかな部分もあり、そのあたりが読んでいてペースがつかめない一因なのかもしれない。

ある意味、横領の手口の裏側で浪費の描写があるのだが、なんとなく、横領すればするほど、おカネを浪費するという描写は、自分が湯水のように浪費しているようで、ちょっとワクワクしてしまうのだが、私も病気なのだろうか。

そう思えば、この小説の読み方というのも、『犯罪小説』というカテゴリーで考えるだけでもなく、『際限のない浪費』という人間の欲望を描いたものだ、と言うことさえできることに気が付く。いや、作者は違うことを書きたかったに違いないだろう。