騎馬民族国家・日本古代史へのアプローチ(江上波夫著)

2014-07-29 00:00:15 | 歴史
kibaminzoku昭和42年に上梓された有名な「騎馬民族征服王朝説」の本である。

この本の前半部は、アジア北部に拡がる地域に住んでいた(住んでいる)騎馬民族についての解説である。遊牧民だった彼らが鉄器と騎馬を手に入れ、掠奪戦の末、支配地域を増加するとともに、農耕地帯にも領域を増やしていった事実を、スキタイ人、匈奴、チンギスハーンなどの例をあげて特徴を説明。

そして、後半に本著の核心である日本国家の起源について記すのだが、古墳時代の中頃に、朝鮮半島を征服した騎馬民族が日本を攻撃して、結局、大和朝廷を作ったというような説である。

で、この学説は一時、熱気を持って語られたようだが、実は多くの疑問も投げかけられた。なにしろ、いまだによくわかっていないわけだ。だから、仮説として読めば、いいのだが、江上先生は、自信たっぷりに断定的に書いている。

実際には、縄文時代人というのは、いわゆる南方系で狩猟型民族で、そこに弥生時代に半島系の人たちが米作を持ってくる。で、遺伝子的には現代日本人の6割が縄文系で4割が弥生系とも言われるが、先住民族である縄文系が滅亡するのではなく、米作文化を取り込むことによって民族融合が進んでいく。そのあとの古墳時代に半島と「なんらかの関係」があって日韓の人的交流が進んだものの、白村江の戦いで日本が敗れることになり、日韓が別の国になったと考えるのだろう。