日本国家の形成(山尾幸久著)

2014-07-10 00:00:21 | 書評
東京圏に住んでいると、どうしても「歴史といえば江戸時代」という雰囲気なのですが、西日本だと、そんなことはまったくないわけですね。京都奈良は別格としても大阪では難波宮というほんの一瞬の首都のことを研究していえるし、神戸では福原遷都のこと、九州では邪馬台国論争があるし、出雲とか吉備とかだって、地名や人名や、どうみても日本古来のものじゃない。倉敷市の中心にある阿智神社にいけば、そこは中国渡来の人の集落にあった神社と堂々と書かれてます。

いまごろ、日本に移民が必要、なんて論議してますが、古代日本は、朝鮮半島や中国大陸からの移民だらけだったわけですし、そもそも、ずっと昔はアフリカ大陸から南回りで来た人と、北回りで来た人が、とうとう追いつめられて日本列島に集合してしまったわけです。アフリカから日本に来るためには、いくつもの海を、行く先に島があるとの勝算もなく漕ぎ出したでしょうし、中には、日本に到着してもなお、東に島があるのではないかと、根拠ない確信をもって、丸木船で出発してしまった人たちも大勢いたでしょう。

で、日本国家が形成されはじめたころの事情を、文献的かつ合理的な想像で補いながら記述した一冊です。

山尾先生は、日本国家の形成に密接にかかわるのが、5世紀頃の日本と朝鮮の関係とみていて、日本の半島での出先であった「任那国」の衰退と、日本からのまき直し、そして白村江の戦いでの日本の敗北により、海外領地を失うことにより、逆に国内に本格政権が確立されていった、とされるわけです。

ちょうど、米軍に敗れて、民主化したようなものかもしれません。米軍は日本を占領してしまいましたけど、朝鮮半島から日本への追手はこなかったわけです。そのころ、朝鮮半島に強い政権があったら、九州は占領されてしまっていたかもしれません。

まあ、日本が任那のように朝鮮半島の一部に傀儡政権を建てたり、全部を併合してしまったりした過去はあるのですが、思えば英国とフランスの関係だって、英国はフランスにやってきて戦争ばかりしていたのだから日本と朝鮮(韓国)の関係を同じようなもので、今でもそう仲がいいわけじゃないということなのでしょう。