名画を見る眼(高階秀爾著)

2013-09-11 00:00:19 | 書評
少し前に古い岩波新書をかなり入手。1冊150円の頃の物が中心。著者の多くは鬼籍入りしているものと思われるが、悲しいので一々調べることはしない。

本著は、美術史を「名画鑑賞」という切り口でまとめたもの。1969年の著であるから、本来はかなり現代美術に足を踏み込んだ部分まで対象にすることもできたのだろうが、もっとずっと古い部分の解説。プラド美術館の名画群よりも前になるのかもしれない。

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ファン・アイク、ラファエルロ、デューラー、ベラスケス、レンブラント、フェルメール、ゴヤ、クールベ、そしてマネの「オランピア」。

いいかえれば、絵画が「なんらかの束縛」を受けながら、神話の世界や宗教画とか描いていた時代、さらに職業として成り立つために個人肖像画や王室御用達といった時代。

構図にしても、時のオーソリティに逆らえない時代、常識破りが村八分になっていた時代。

そういうものを、やっと克服していったのが、マネだった。描いてはいけないものだった娼婦の無表情の裸体画をキャンバスにのせた。(今でも女性の人権保護上は、いけないものなのだけど)

というような内容かしら。

思うに、そこから後の時代の美術界のことって、多くの人が知っていて、私だってゴーギャンが若いときは利き腕のファンドマネージャーで、株式投資で私財を蓄えたあと、それを元手に画家をはじめて、以降自転車操業で絵を売りながら太平洋の島々を流転したことなんか知っている。中にはゴーギャンの墓参りに行く人だっているわけだ。

だから、美術史として学問が成立するのは、主として近代絵画の黎明期までということなのだろう。