和泉式部日記を読み始める

2012-04-17 00:00:34 | 書評
これは、約1000年前に書かれた古典。和泉式部の恋愛を描いた日記風物語であり、本人が書いたものなのか、あるいは第三者が和泉式部をモデルに書いたものか、よくわかっていないようだ。角川ソフィア文庫で、近藤みゆきさんの現代語訳で、比較的容易に読める。

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しかし、実は冒頭から、問題のシーンが始まる。まず、四月十余日より物語が始まる。読み始めたのが4月12日なので、偶然にも、ほぼ同じだ。恋人に先立たれて、悲しみに伏せている和泉式部のもとに、別の高貴な男性の召使が現れる。新たな恋のメッセンジャーボーイである。当時は、ラブレターは短歌を作ることにより成立していた。

それで、ここから始まるスリリングな叙述は、実際の歴史上の人物と重ねると、おそろしいほど危険な宮廷ロマンスであることがわかる。

まず、先立たれた恋人というのは冷泉天皇の息子である。そして、新たな恋を仕掛けたのは、その弟(つまりいずれも皇太子)である。しかも、その弟の方の皇太子(つまり、新恋人)には正妻はいるし、さらに和泉式部の方も、最初の結婚が破綻したのに、きちんと離婚してなかったそうだ。現代風にいえば「W不倫」。

それで、二人は4月の下旬に、体を合わせることになるのだが、当時の常識として、三夜続けて通えば結婚したことになる。ところが和泉式部の期待とはうらはらに一夜の交わりで終わり、そこから恋のかけひきが始まるわけだ。

本文庫は、前半が古文で書かれていて、そのあとに現代語訳があって、最後に文学論が書かれるという三段形式である。千年前のやまと言葉にそう詳しいわけでもないので、章ごとに古文を読み、現代語で確認するという作業を繰り返しながら読み続けている。現在は4割ほど進んだところだ。

ところで、現代語に直していただいた近藤みゆき先生だが、大学の先生にかかわらず大胆な訳し方のような気がする。自身も恋のかけひきが得意だったのだろうか。どうも現代的に表現すると、「玄関の鍵はあけておきますので、夜の間にいつでも入ってきていいですよ」というような内容を、そのまま書いてしまう。どういう女性教授なのか知りたくもあり、知らない方がいいことも あるのだろう。

そして、貞観地震の痕跡とでもいうか、「末の松山」の故事が使われている。

それで、読み切ってないのでなんとも言えないが、今後、かなりドキドキする展開である。