もっと知りたいクリムト(生涯と作品)

2011-10-30 00:00:06 | 書評
klimt1東京美術から発行されている「もっと知りたいシリーズ」の画家クリムト編。

クリムトは19世紀末から20世紀初頭にウィーンで活躍した画家で、一般に「分離派」と呼ばれている。なにが分離派かというと、当時のウィーンにはフランスの印象派すら紹介されないような保守的な雰囲気が漂っていたそうだ。

それに対するアンチテーゼとしての新手法での挑戦者たちの総称ということだそうだ。そして、権力と戦うためには、どの世界でも団結が必要で、その挑戦者たちが集まったのが分離派ということ。

だから、分離派の中にも印象派風もあり、点描派あり、アールヌーボーありといったところだ。アンチ自民の民主党のようだし、アンチ民主の自民党みたいなものだ。バラバラ。

実際、クリムトの代表作は、クリムト以外の誰にも真似さえできないような、豪華さで、その中に寓意性や神話性を含んだものだが、彼は若い時には、点描や印象派風など様々な絵画にチャレンジしている。ひまわりも描いている。

ただし、どうしても金色と赤色をふんだんに使った絵画が、彼のお気に入りであったか、様々な女性群を描いている。ただ、よく見ていると、金色衣装かヌードが多く、青い服を着せた絵には、別の意味も含まれているようだ。

解説によれば、彼の絵画の裏側には、様々な女性たちとの性遍歴が隠されているそうで、最愛の人妻であるエミーリエ・フレーゲルとは生涯交わったことがないプラトニック関係だったのだが、一方、財力のある彼の部屋には、順番待ちのモデルたちが列をなしていたそうで、片っ端に食っていたそうだ。

独身だった彼が亡くなったあと、生物学的な親子関係を自称するものが多く、実際には14人が彼のこどもと認定されたそうだ。

そして、華やかな彼の作品を見ようにも簡単ではない。何しろ作品数が二百強で、一部は大戦の戦火で喪失してしまった。

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日本で、クリムト展が開かれたこともあるそうだが、作品が少ないということから、今後何度も開かれるとは思えない。

軽く調べたところ、愛知県の県立美術館にトヨタが寄贈したものが1点。トヨタ自身が保有したもの1点。計2点があるようだ。

また、ウィーンにかなりの作品が残っているようだが、一か所にまとまっているわけではなく、あちこちの美術館に点在しているようだ。

とりあえず、画集でも見ておくことにしておく。