アカペラ(山本文緒著)

2011-09-23 00:00:41 | 書評
山本文緒は、「お気に入りのライター」である。もっと詳しく言うと、現役作家の中であるが。

そして、小説について言えば、作品数は少ない。寡作家である。

akapera


この短編集である『アカペラ』の最初の短編は、2001年に直木賞を受賞したあとの受賞1作目である。

が、ここで著者は人生の大問題に直面する。一つは再婚したこと。もう一つは、うつ病になったこと。実際、「直木賞」「再婚」「うつ病」が、どういう順番で、どういう因果関係になるのか、私にはわからないのだが、そこからしばしの休筆期間に入った。本著二編目の短編『ソリチュード』が復帰作である。そして三作目が2008年の『ネロリ』。

実際、彼女の小説は、ストーリーの展開が早いのだが、いかにも日常的な筋立てであっても、実はすごく重いところがある。どうにもならない人間の性(さが)なんてものを取り扱ったりする。

第一小説『アカペラ』は、家庭崩壊の中で揺れ動く少女を描くのだが、ちょっと禁断の世界にはまる。実は、長編家族小説的に展開するのかと思うと、まさに突然に小説が終わる。まあ、ちょうどいい。

第二小説『ソリチュード』。ダメ男君が主人公。ジゴロである。あちこちの女性との関係を清算しないで次に走るため、人生が複雑になる。ジゴロを魅力的に書くものだから、ジゴロ生活に魅力を感じてしまうが、あくまでも小説の中だけだ。

第三小説『ネロリ』。あくまでも人間関係が、「ネロリ」の話である。ドロドロとしていて解決不能。

ところで、現在『野生時代』で長編小説『なぎさ』を連載中である。

そして、最近、ちょっと栄養取り過ぎのような感じだ。