赤門のある大学

2009-10-27 00:00:22 | 市民A
akamon数十年ぶりに東京大学の地を踏んだ。と書くと、東京大学卒業のように聞こえるが、まったく関係なし。三浪して東大に入学した高校の友人に連れられて、数十分構内にいたことがあるだけ。入学して喜ぶ21歳の脇に、就職活動で四苦八苦している21歳がいる図だ。だから今回で二度目。東京大学総合研究所で開かれている「鉄・137億年の宇宙誌」を見に行ったわけだ。ちょっと金属素材を探していたので、参考のため。

赤門の歴史は、比較的有名で、徳川11代将軍家斉といえば、政務そこのけで生涯子作りに励み、50人以上のこどもを作ってしまうという少子化担当大臣も垂涎のオットセイ将軍なのだが、その21女である溶姫が加賀藩に輿入りする時に、持参金で加賀藩が立派な門を作って受け入れたとされるようだ。

加賀藩といえば、薩摩藩、伊達藩と並ぶ天下の大藩である。他の小藩は家斉の娘を縁組する際には、幕府から数万石程度の加増を受け取っているが、もらった持参金で赤門を作るとは太っ腹である。

ところで、自分自身で東大に行く気は、サラサラなかったし、何年間も後で役に立たない受験勉強までし、さらに不合格のリスクを負ってまで東大に受験するなどとは、不合理のきわみと思っていた。

ところが、最近、与党三党の党首(代表)は、そろって東大卒だという話を聞いたので調べてみると、本当だった。

さらに調べると、もっと驚いた。

与党では、衆議員議席数1位の民主党、5位の社民党、7位の国民新党の3党首が東大卒。一方、野党でも、議席2位の自民党、3位の公明党、4位の日本共産党が、東大卒をキャップにしている。東大卒ではないのは、6位のみんなの党(早大)、同点8位の新党大地(拓大)、新党日本(一橋)だけだ。なおこの両党はそろって1議席だ。

少し前は、多くの党首が私立大学だったように思うが、やはり、・・・

「民から官へ」ということなのだろうか。


さて、東大の地理的母体となった加賀藩だが、幕府に対しても相当の力を持っていたようで、犬将軍綱吉の時代に、藩邸内の井戸に狐が落ちて死んだ事件で、救助作業に失敗した加賀藩武士に対して幕府から沙汰のあった「切腹命令」を軽く無視している。今も構内に雑草が生い茂り、狐が出そうな場所もあるようだ。

bukimiそして、狐といえば狐狸庵先生こと作家遠藤周作氏が、東大(小説中ではT大とされる)を題材に、「ニセ学生」という短編小説を書いている。福武文庫で「内田春菊編・ブキミな人びと」の中に組まれている。

簡単に筋を解説すると、主人公は、三浪してまで受験した結果、また不合格。郷里で吉報を待つ母親に、どうしても不合格の電報が打てず、つい、「合格」電報を打ってしまい、収拾不能となり、合格したことにしてしまい、ニセ学生になる。

最初は、翌年受験して合格すれば、1年の差は「留年したことに」して、間尺を合わせるつもりだったが、案外、世間は「東大」というと、すぐに信じてしまうことに気付く。そうして、彼のニセ大学生活が始まるのだが、ついに禁断の一手を指してしまう。

本物の東大生男女と交際をしてしまう。そうなれば、話が通じないのだからバレてしまうのが当然なのだが、作家遠藤周作は、そんなに簡単にニセ学生を許さない。ニセ学生とたまたま風貌がそっくりの東大全共闘の委員長が登場し、警察に狙われていて危険な学生集会へ替え玉登場することを求められる。嫌なら、バラすということ。

そして、ついに委員長として論壇に上がり、たちまち逮捕されてしまう。

ところが、ニセ委員長を演じた罪も、警察が彼のことをニセ東大生と見ぬくことができずに、東大生特権で、無罪放免。腐っても東大ということに気づいたニセ学生は、結局、日本の本質に嫌気を起こし、入学していないはずの大学を自主退学し、故郷で農業に励むことになる。