ワークシェアリングって、・・

2009-03-13 00:00:10 | MBAの意見
「ワークシェアリングって賃下げだよね。」みたいな、つまらないことを書くわけではない。

電機業界、自動車業界を中心に広く拡がり始めた「ワークシェアリング」だが、実際にはなかなか難しい問題をはらんでいる。

たとえば、ある工場で、「毎週5日出勤していたのを、4日出勤(隔週で強制休日1日取得)にして、給料を8割にする。」というのは、「ノーワーク・ノーペイ」の原則から言えばある程度理解はできるが、その1工場だけの会社であるなら完結するだろうが、工場が2ヶ所あって、生産性の高い工場の稼動を100%にし、生産性の悪い工場の稼動を60%に落として、そちらの工場の従業員の給料だけ60%にすると言ったら、「まったくの不公平」ということになる。さらに、全従業員の給料を80%にすれば、フル稼働の工場の従業員からは、「必死に働いているのに、働いていない従業員と同じ給料に下げられるのは不公平だ」という声があがるだろう。

かくして、制度を変えないでワークシェアリングだけを行うのは、無理があるわけだ。

そして、少しこの「ワークシェアリング制度」を客観的に考えると、こう言い換えることができるだろう。

負の残業代制度

通常、会社の残業というのは、年間の基準労働時間の月割り分を超えて働く時に発生するもので、通常の時間当たり単価よりも2割ほど高い。(実は、多くの会社のボーナスは、基準労働時間単価に対して計算され、いくら残業しても増えることはないので、残業時間の方が労働単価が低いことが多い)

ワークシェアリングというのは、この基準時間(たとえば年間1850時間とか)よりマイナスなので、その分の給料を払わない、ということである。基準時間よりプラスなら残業手当てになり、マイナスなら負の残業代となり、差し引かれる。

ということは、ワークシェアリングの流れが、広く普及していくには(それ自体は望ましくないが)、新たな概念が登場するのではないかと、見ている。

基準労働時間の低位設定

先にあげた2工場間の問題などでもいえるのだが、基準労働時間を年間1850時間ではなく、例えば年間1500時間に設定。つまり給料のベースが下がるわけだが、勤務時間も短い。工場が100%稼動になって2000時間になれば、500時間が残業になる。1800時間なら300時間が残業。最低保証賃金は1500時間分である。

もちろん、最低保証時間を1000時間にするなどという横暴なことはできないだろうし、工場が完全停止した時にも1500時間分払うのかというような極限的状況には対応できないのだが、少なくてもこの経済的苦境を乗り切るためには、少しは有効なのではないだろうか。

もっとも、こんな冴えないプログに書いてもしょうがないわけだが、「負の残業代制度」とか「基準労働時間の低位設定」といった概念は、まだ各種論説では見かけていないので、今のうちに特許庁に申請しておきたいのだが、まあ、何ヶ月かして世間で広く認識されるようになった場合、「そういえば、誰かが書いていたなあ」と思い出してもらえば、それでいい。


ところで、最近、ワークシェアリング的に仕事が減ってきて、早めに帰宅することが多いが、先日も帰宅中の電車の席で目を閉じてウトウトしていると、前に三人の派遣社員の女性が立って、「契約、いつまで」「たぶん、今月末までよ」「Aさんか私か、どちらかがクビみたい」「3月末で年休が2日残っているのに、怖くて使えない」「会社が正社員と派遣社員について、どう考えているかだわね」と、結構、悲惨な会話が続くわけだ。

世に言う、「派遣対正社員のバトル」である。

こういう問題については、以前、手頃な長さの手厳しい論文を書いたことがあり、近くPCを使わないところに、しばらく行くはずなので、その間の「つなぎエントリ」に数回にわけて連載するので、よろしく。

一つのキーとしては、派遣社員と正社員の間に、「期間契約の社員」という新たなワークスタイルを作るべきということ。30年国債と普通預金の2種類ではなく、満期2年、3年、5年の定期預金だってあればいいじゃないか、ということである。