緑モスも苦戦かな

2005-08-05 22:19:09 | マーケティング
22a201f9.jpg1週間前に、マックの100円戦術の苦戦について書いたのだが、損益決算書を見てさらに驚くのは売上高から売上原価を引いた売上高利益率が僅か14%しかないということ。そしてほぼ同額の一般管理費が必要になっているために、利益はほぼ「0」だ。何かまずいことがあれば直ぐに赤字に転落する。外食チェーンでは普通、売上高利益率は60%くらいであるのだから、いかに薄利多売路線であるかがわかる。例えば、利益率を40%に上げるには、販売単価を70%値上げすることが必要だが、100円のバーガーが170円にはなるかもしれないが500円のセットを850円にはできないだろうし、コーヒーやシェークを170円にするのも難しい。さらに、顧客は相当減るだろう。計算上は再建の道はきわめて難解としかいえない。

ところでマックに対抗するのは、モスバーガーとロッテリア。マックは全国3700店、モスは1500店、ロッテリアは世界1500店のうち韓国700店だそうなので日本は800店か。その他のチェーンもあるだろうが、半数強がマックでモスバーガーはシェア20%程度ではないだろうか。そして、一店舗あたりの売上はマックは年間1億円だがモスは年間8千万円だ(ただし、マックは店舗あたり売上を逓減させているがモスは横ばいから逓増といったところだ。)そしてモスの売上高利益率は40%である。ただし、それらの総合的関係により、やはりほとんど利益は出ずにとんとんに近い。要するにマックは、モスの品質に対して価格で対抗したため、モスは高価格帯だけの顧客層になり、マックは低価格帯だけの顧客層になるという、どちらも最悪パターンになっている。ロッテリアはロッテの決算の中に埋もれているのでよくわからないが、なんとなく、すべて中間型ではないだろうか。

そして、少し前から、モスバーガーは「緑モス(グリーンモス)」という新型店舗を投入して、さらに「匠味シリーズ」という高級ハンバーガーを発売。各店数量限定ということだ。さっそく勤務先に近い「緑モス」に行こうと思うが、何しろ困ったことに、この匠味シリーズだが、午後2時からの販売だ。そして数量限定なので売り切れ御免。しかし、普通の人は午後2時まで待って高級バーガーは食べない。これはますます行ってこなければ、と思っていたら午前中から長い会議の日があって、会議終了後、ちょうどいい時間になる。

最初に看板の色だが、緑のベースにくすんだピンク系の文字とLOGO。普通、中食系では、赤とか黄色が使われる。安い、早い、うまいというのが3原則と言われていた。特にあるチェーンでは。

それに対して、この落ち着いて深い色はどこからくるのだろうと思うと、おそらくスターバックスとかタリーズといったカフェ系なのだろう。ということは、11時から13時まではバーガーチェーンとして機能させ、その他の時間はカフェの機能を狙っているのだろうか。アイドルタイムの店舗利用。その推測は店内に入るとわかる。ほぼ、カフェだ。そして、ほんの少しの変な客がハンバーガーを食べている。私もコーヒーだけにしようかと思ったが、それでは不完全ブログになるので、匠味シリーズを選ぶ。シリーズ最高額は1,000円の「匠味十番」だが、実は見ただけで無理だ。10種類の素材が詰め込められているのだが、私は軽い顎関節症なので、遠慮。610円の普通の匠味バーガーにする。そして、コーヒーも50円奮発して240円の「モンテアレグレ農園コーヒー」にする。「モンテアレグレ農園」ということばは生まれてから一度も発音したことのないブラジルの単語なので、注文するときに大いに不安になるが、どもらずに言えた。合計850円。冷静に考えれば、おそろしく高いわけでもない。マックと比較するともちろん高い。

そしてコーヒーを飲みながら待つこと10分。テーブルに運ばれてきたのは、ナイフとフォーク付、かつ上部のバンズが横に外され、焼きたてのハンバーガーがレタスとトマトの上に乗っている。バンズの内側が軽く焼かれているのは、肉汁を吸ってふにゃふにゃに溶けないように考えたのだろう。その結果、ナイフとフォークを持つと脳手術で頭蓋骨をはずした瞬間の外科医のような図になる。そして、皿の上には調理した人間の名前が書きこまれた名刺が置かれている。また皿も熱い。

つまり、食材以外の部分に高級感を詰め込んでいるわけだが、少し食べるとこれはちょっと高いかなって感想になる。もともとミクロ経済学には「消費者余剰」ということばがある。自分の評価額と実際の価格との差が大きいほど満足度(消費者余剰)が高いという原則だ。マックの100円バーガーの味はちょうど100円くらいの評価だとすれば満足度0円。モスの610円バーガーの評価が700円だったら満足度90円になるが、実際には610円くらいではないかな。つまり価格が500円なら満足できるだろうということか。

その、ちょっと高級感いまいちには3つの理由がある。
1.バンズ(パン)がマックと同様に前歯で噛み切れる超柔らか系だ。
2.トマトが水っぽい味だ。(つまり普通のトマト)
3.最大の問題はバーガーなのだが、生地があくまでも機械こねという感触で、手こねのワイルドさやムラとかという人間的な技術が感じられずに、ちょっと気持ち悪い。肉のどこを食べても、同じ食感で同じ味だ。

しかし、ブラジル高地の農園の名前の240 円のコーヒーは評価350円分はあるのだが、あと50円分を失っているのは、コーヒーカップの肉厚の厚さだ。もっとカップは薄い方がいいだろう。唇は薄いものを好むのだ。

そして、午後2時の店内で食事をしているのは、私と、2つ隣の席で新製品のナン・タコスを食べているアフリカ系の男性の二人だけで、他のテーブルはカフェと同じ状態なのだが、それでは約20軒のカフェがひしめく超カフェ過密地区で、なぜスタバではなく緑モスに来る人もいるのだろうかというのは一つの謎なのだが、スタバは雰囲気が「できすぎ」ていて、ちょっとヒップ人間にはスクエア過ぎるのではないかなと、きょうは軽く書いておく。(スタバの話はまたそのうち・・)