防災井戸を掘る活動を紹介する東京新聞記事
以下、東京新聞より転載させていただきました。
「防災井戸」8年で21本掘った 千葉・流山の元町内会長・西尾段さん 断水の経験が原動力
大規模災害に備え、防災井戸を掘り続ける元町内会長が千葉県流山市にいる。学習塾を経営する市議の西尾段さん(52)だ。掘った井戸の水は飲めないが、トイレや洗濯の生活用水として役に立つ。西尾さんは「過酷な被災生活の中で、日常を取り戻す一助になれば」と語る。(林容史)
2016年から活動を始めた西尾さんは、これまで掘った井戸は21本に上る。市内に16本、柏、我孫子両市でも計5本を数える。
きっかけは、12年に利根川水系の浄水場の水道水から、基準を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出され、取水停止で断水になったこと。この苦い経験が西尾さんに防災井戸の必要性を痛感させた。
◆手作業で5日かけ
まずは自宅の庭に1本、さらに近くの公園にも市に占有許可を申請して1本掘った。友人、知人に頼まれれば、個人宅の庭へも。
井戸掘りは全て手作業だ。塩ビパイプの先にドリルを付けたお手製の器具で、ハンドルを回しながら穴を掘る。深くなれば塩ビパイプを継ぎ足す。地下水が湧き出る7~10メートルの深さまで掘る必要があるという。
掘った穴が埋まらないよう直径約10センチの「さや管」と呼ばれる塩ビパイプを差し込み、その中に同約3センチの塩ビパイプの「吸い出し管」を通す。パイプの周りにブロックで土台を組み、手押しポンプを設置すれば、井戸の完成だ。
掘る前には、ボーリング調査の結果を県がネット上で公開している「地質柱状(ちゅうじょう)図」や国土地理院の地形図を調べ、水が出やすい場所を推測。民家の庭には水道管が埋まっているため、細心の注意が必要。朝から晩まで作業して1本に約5日間かかり、費用はポンプやブロック代などで7万円ほど。
◆まずトイレが困る
市は、農家や事業所が所有する井戸を、災害時に住民が使える「災害時協力井戸」として登録しており、市内に106本ある。しかし、電動ポンプでくみ上げる方式が多く、災害で停電すれば使えない。だが、西尾さんの井戸は、ほぼ全てが手動ポンプ式だ。
今年1月下旬、西尾さんは能登半島地震で被災した友人宅の片付けを手伝うため、被災地の石川県七尾市を訪れた。作業で汚れた手を洗おうとしたり、こぼれた飲み物を拭こうとしたりして、無意識に何度も蛇口のハンドルをひねった。特に水が流れないトイレには難渋した。わずか2泊3日の滞在だったが、水道から水が出ない不便さを痛感。
西尾さんは「災害が起きたとき、最初に困るのはトイレだ」と強調し、井戸の重要性を訴える。
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