大阪ボランティア協会・事業レポート

大阪ボランティア協会で実施した事業・イベントの報告を掲載しています。

裁判員ACT通信45号 ~「ミニ学習会」の報告(2017年4月29日開催)~

2017-05-31 21:43:13 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
///////////////■□ 裁判員ACT通信第45号 □■/////////////////

 ゴールデンウイークも終わり、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 今回の裁判員ACT通信第45号は、裁判員ACTの「ミニ学習会」(2017年4月
29日開催)の報告です。

 裁判員ACTでは、昨年度より、「裁判員裁判から見えてくる社会的孤立とそ
の課題」として、様々な視点から犯罪の原因を考え、社会の側として、今後ど
のように取り組むべきかについて探ってきました。今回は、裁判員ACTメン
バーだけではなく、このテーマに興味のある新聞記者や経験者などにも参加
いただき、合計18人で昨年度開催された連続セミナー講演録をもとに語り合
いました。

 まずは、簡単に昨年度の3回の連続セミナーを振り返ります。

第1回(2016年6月19日) 彼はどうして罪を犯してしまったのか~社会的孤立
と刑事司法~
大阪弁護士会所属の辻川圭乃氏より、3つの事件を紹介いただき、障害のあ
る人が加害者となった事件の背景を知りました。

第2回(2016年8月21日) 彼は社会に出たあとどうしているのか~出所者雇
用の取組み~
セリエ・コーポレーション社長の岡本昌宏氏より、福祉施設や少年院などから
少年少女を受け入れ、仕事を提供し親代わりになってきたセリエの取組みを
紹介いただきました。

第3回(2016年10月23日) 彼はどう裁かれたのか~裁判員裁判から見えて
くる社会的孤立~
大阪弁護士会所属の池田直樹氏より、介護殺人の事例をご紹介いただき、
事件に至る前に取りうる方法などについてお話しいただきました。

 それでは、ミニ学習会の報告です。今回、最もたくさんの意見が出たのは、
第1回で取り上げられた知的障害がある人が起こした事件についてでした。

 まず、裁判官、検察官、裁判員いずれも障害に対する理解に乏しいという
ことが課題であるという意見が出ました。また、捜査段階でも知的障害があ
る人は他者に迎合しやすい、先の見通しが難しいという障害特性から、調書
を取られるときに、何にでも「ハイ、ハイ」と言ってしまい、「未必の故意(犯罪
事実の発生を積極的には意図しないが、自分の行為からそのような事実が
発生するかもしれないと思いながら、あえて実行する場合の心理状態:出典
 小学館デジタル大辞泉)があった」とされてしまうことがあるとのこと。その
防止策としては可視化が有効であるとの意見が出ました。
 大阪弁護士会には、司法と福祉が連携する必要性が高いと考えられる被
疑者・被告人に障害がある場合などに、福祉専門職に関与してもらい、被疑
者・被告人の支援に協力する仕組み「大阪モデル」があります。現在の日本
の制度では検察官に起訴するかどうか決める権限があり、起訴されるとほぼ
有罪になるため、起訴前に障害特性のわかる福祉関係者が関与する必要が
あります。このような取り組みが全国に広まることが必要であるとの意見も出
ました。
 ただし、障害といっても、「ここから障害」と簡単に線引きできるものではなく、
障害を持つ人の中には高校を卒業し社会生活を送っている人もいるそうです。
そのため障害に気づいていない人も多く、療育手帳を取得するなどの認定を
受けることができるにもかかわらず受けていない人は、受けている人の5倍
程度はいるとのこと。司法との関係から言うと、刑事施設に収容されている人
にも知的障害が疑われる人が多くおり、障害が見過ごされ、出所後適切な
支援が受けられないため、また罪を犯してしまうという意見も出ました。

 最後に参加者から感想として次のような意見が述べられました。

 社会的孤立を防ぐために取り組んでいる自治体もあり、これは少子高齢化
社会対策とクロスする部分が多い。動き出している自治体もあるが1700あ
る全国の自治体すべてとはなっていないため、全国に伝える必要がある。
裁判官、検察官、弁護士、行政いずれもみな考えていると思う。
 再犯防止の取材をされた方からは、知的障害にはボーダーが多く、刑務所
出所後に支援の在り方を考える必要がある。何もなしでは犯罪を繰り返して
しまうとのこと。中間支援施設で教育+仕事など支援が必要になる。
 裁判員裁判の辞退率が高いことが問題となっている。守秘義務の問題もあ
り、裁判員経験者の経験が他に伝わらず、辞退につながると考えられる。
 職親プロジェクトでは少年院出所後すぐに連れていくのが条件となっている。
ただ、福祉とはつながっていないところも多いようで課題ではないか。
 地域の在り方は重要である。否定的な面も含め地域共生社会について考
える必要がある。住民参加は良いことばかりではない。公的責任の後退で
あってはならず、公的責任を住民で負うのは無理である。
 裁判員裁判では裁判員がなぜ被告人が犯罪してしまったのか共感できる
かどうかにかかっていると感じる。検察側の意見に流されがちである。
 子から親への虐待、ネグレクトも蔓延しており問題であり、セーフティーネッ
トもできていない。裁判員ACTは生活者の目線から活動しており、それは大
切なことだと思う。縦割り社会の中で受け皿から   はみ出ている人をどう
救うのか。

 【編集後記】
 障害を持つ人が罪を犯してしまったとき、障害特性からうまく反省の念を表
現できなかったり、罪を犯す以前に別の被害にあっていることを説明できな
かったりする、ということを知らないと、裁判員に選ばれても正しい判断をす
ることができないでしょう。昨年度の学習会で紹介された事例では、いずれ
の加害者も障害や貧困のせいで社会的に孤立しており、適切な支援を受け
ることができませんでした。もし適切な支援が受けられれば罪を犯すに至ら
なかったのではないかと思われます。障害があるため、経済的に苦しいため
困っているということなら、福祉的な支援制度があり、窮状をうまく説明でき
ない人でも、制度を知っている人や組織とうまく繋がれば何とかなることは
多いと考えます。でも、そのような人の中には、助けを求められない、求め
たくない人もおり、必要なところに支援が届かないということは非常に難し
い問題であると思いました。

 今年度も、昨年度に引き続き、「連続セミナー?裁判員裁判から見えてくる
社会的孤立とその課題?」第2弾を予定しております。
 第1回:2017年9月24日 刑事事件から見える貧困~法律・制度を貧困者
の味方に~(大阪弁護士会 小久保氏)
 第2回:2017年10月29日 少年事件の裁判員裁判~裁判員は非行の背
景にどこまで踏み込めるのか(大阪弁護士会 岩本氏)
 第3回:2017年12月2日 公開学習会
(題名はいずれも仮)
 ぜひ、ご参加ください。みなさまとお会いできることを楽しみにしております。

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★“裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会
事務局:〒540-0012
大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F 市民活動スクエア「CANVAS谷町」
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  http://www.youtube.com/watch?v=JFUgKlTPP60&feature=youtu.
メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
月1回、CANVAS谷町に集まっての例会を中心に活動しています。
裁判員ACT通信へのご意見・ご感想もお待ちしております。
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