大阪ボランティア協会・事業レポート

大阪ボランティア協会で実施した事業・イベントの報告を掲載しています。

裁判員ACT通信 第51号 ~「2017連続セミナー第二回報告」&公開学習会お誘い

2017-12-25 17:10:25 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
////////■□ 裁判員ACT通信第51号 裁判員ACT2017連続セミナー第二回の報告
                 および今後の公開学習会のご案内ほか□■////////

一気に季節が進んでもう冬の寒さになってしまった今日この頃、みなさまいかが
お過ごしでしょうか。第51回のACT通信では2017年10月29日に行いました2017
連続セミナー第二回の報告および公開学習会のご案内、昨年度の講演録の紹
介をいたします。

【1】2017 裁判員ACT連続セミナー第二回の報告
 今回は大阪弁護士会の岩本朗氏に「少年事件の裁判員裁判-裁判員は非行
の背景にどこまで踏み込めるのか-」と題しましてご講演いただきました。
 講師が担当された裁判員裁判になった事件を取り上げ、新聞報道から見える
もの、少年が事件に至った背景にあったもの、少年院と少年刑務所について、
裁判員が理解すべきもの、今回の事件の判決および加害少年の現在について
お話しいただきました。
 今回取り上げていただいた事件は、裁判員裁判開始後の早い時期に少年が被
告人となった事件のひとつだったそうです。これは、講師が弁護人(付添人)を務
めた少年(以下、「少年A」とする。)が路上で70代女性からひったくりをし、被害者
を死亡させるという強盗致死事件でした。新聞記事から見ると、被害者死亡という
重大な結果、金目当ての身勝手な動機、被害者を路上で転倒させるという危険な
犯行態様でした。しかも、被害弁償もできず、被害者遺族の処罰感情は厳しいもの
がありました。
 しかしながら、この事件には共犯者がおり、グループの中での立場が弱い少年A
が金策を強いられた結果の事件でした。また、少年Aには軽度の知的障害や学習
障害があり、ADHDの疑いもあるとの情状鑑定結果が出ており、問題対処能力や
遂行機能に障害がありました。事件当時16歳にもなる少年Aは家庭環境に恵まれ
なかったこともあり、知的障害の程度に合わせた適切な福祉的援助を受けることが
できず事件の日まで来てしまいました。
 次に、刑事裁判の審理に話は進み、少年事件では家庭裁判所の証拠をつとめて
取り調べるよう刑事訴訟規則にて決められていることを説明してもらいました。具体
的には、「鑑別結果報告書」(少年鑑別所作成)や「少年事件調査票」(家庭裁判所
調査官作成)などがあり、裁判員裁判でもそれらを「調べる」必要があります。しかし、
それらは専門的過ぎて、耳で聞くだけでは到底理解できるものではなく、かといって
実際に鑑別を担当した鑑別技官や家庭裁判所調査官が説明もしてくれません。そこ
で実際の裁判では調査官経験者や精神科医などに鑑定をしてもらうか専門家証人
として出廷してもらうそうです。少年Aの裁判員裁判の場合は精神科医に鑑定人とし
て出廷してもらったそうです。
 そして、少年に対する処分として刑事処分か保護処分かを裁判員が選択する必要
があります。しかし、少年院と少年刑務所の違いがよく分からない裁判員のほうが多
いのではないでしょうか。今回は、講師から両者の最大の違いについて次のように説
明してもらいました。刑務所は懲役刑等を執行する場所、受刑者の改善更生を主目
的としているわけではなく、反省を求めるところではない。他方、少年院は反省を強制、
全生活場面が指導の対象となり処遇としてはむしろ厳しい面があるとのことでした。
裁判員にこのような前提知識を理解してもらうのは裁判所の役割ではないか、せめて
少年院と刑務所の紹介ビデオを見せるなどして説明をして欲しいし、望みうるなら、公
判前に少年院及び少年刑務所を見学してもらいたいと講師はおっしゃっておられました。
 今回の事件で講師は少年Aの背景から保護処分(少年院送致)が望ましいと考え弁
護されたそうですが、結果として判決は、刑事処分(懲役5年以上10年以下の不定期
刑)が言い渡され、少年Aは少年刑務所に収監されました。刑事処分にはなりましたが、
検察官も少年Aが事件を起こした経緯や少年Aの資質面の問題については争わず、
起こしてしまった事件の重大さから考えたら軽い刑だそうです。そして、少年Aは現在も
受刑中で、講師は被害者遺族との窓口となり、和解金を分割で支払いし、今も面会や
手紙のやり取りを続けておられるそうです。
【編集後記】
 私は少年院と少年刑務所というものがあることすら知りませんでした。少年は大人と
違って発達途上にあり、刑罰一辺倒では必ずしも少年のためにならないと誰にでもわ
かりそうです。しかしながら、報道などで見聞きする少年が起こした事件のなかには、
凶悪なものも含まれており、少年だったら何をやってもよいのか、厳罰に処すべきでは
ないのかという意見に傾きがちです。今回講演を聞き、事件を起こすに至ったのはそれ
なりの事情があり、少年に改善更生を促し社会復帰させるためには、ただ刑罰を与えれ
ばよいとは考えられず、より教育に特化した少年院がよいのではないかと感じました。
裁判員ACTでは昨年より「裁判員裁判から見えてくる社会的孤立とその課題」をテーマ
に連続セミナーを行っています。今回取り上げてもらった少年事件では、少年Aは仲間
から万引きなどの汚れ仕事をさせられいわば「奴隷」のような立場にありました。少年A
は加害者になる前は被害者であったとわけで、昨年第1回目セミナーの障害者が起こし
た事件でも同様だったことを思い出しました。犯罪に至る前に何か手立てはなかったの
か、もっと早く少年Aに適切なケアができなかったものか、と考えてさせられました。

【2】2017 公開学習会のお知らせ
裁判員ACTでは引き続き下記の公開学習会を予定しております。

 

第三回:2017年12月3日(日曜日) 13時半~17時(受付13時~)
公開学習会「私たちは裁判員制度にどう向きあうか~裁判員経験者たちの思い」
講師:笹倉香奈氏(甲南大学法学部教授)
裁判員経験者数名その他(調整中)(そのほか数名の弁護士が助言者として参加予定)

 セミナーの開催場所は、市民活動スクエア「CANVAS 谷町」大会議室(大阪市中央区
谷町2 丁目2-20 2階)です。参加費は、各1,000 円(当日払)です。大阪ボランティア協
会の個人会員は、1割引にします。

 以上の連続セミナーおよび公開学習会への参加お申し込みは、
1)ホームページ
( http://www.osakavol.org/08/saibanin/saibanin_seminar2017.html )から、
又は2)本メールに添付しておりますチラシのフォームに記入のうえ、FAXにてお願いい
たします。
皆様とご一緒できることを楽しみにしております。

【3】「2016連続セミナー」の講演録を配布いたします。
 昨年度、大好評だった「連続セミナー-裁判員裁判から見えてくる社会的孤立とその
課題-」の講演録(3回分)を配布いたします。
 定価300円ですが、昨年このセミナーに参加された方やこのACT通信を見てご注文さ
れた方には、一冊100円でお譲りします。ぜひご購読ください。また、送料を負担いただけ
るのであれば、発送もいたします。希望される方は、ぜひ裁判員ACTまでご連絡ください。
<<<2016年「連続セミナー」講演録の内容>>>
<第1回>
彼はどうして罪を犯してしまったのか-社会的孤立と刑事司法-
講師:辻川圭乃氏(大阪弁護士会)2016年6月19日
★おススメポイント★障害者が起こしてしまった事件を取り上げています。
今回の少年事件と同じように加害者になる前は被害者でした。

<第2回>
彼は社会に出たあとどうしているのか-出所者雇用の取組み-
講師:岡本昌宏氏(セリエ・コーポレーション社長)2016年8月21日
★おススメポイント★少年Aも、そう遠くない将来、社会に帰ってきます。彼が社会に出てきた
とき、暖かく受け入れられるとよいのですが。

<第3回>
彼はどう裁かれたのか-裁判員裁判から見えてくる社会的孤立-
講師:池田直樹氏(大阪弁護士会)2016年10月23日
★おススメポイント★この回は高齢者や障害者をめぐる事件が取り上げられていました。
実は、今年の連続セミナーの第1回目と同じ事件も取り上げられています。
でも、講師が違うとまた切り口が変わって違うものが見えてきますね。


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★“裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会
事務局:〒540-0012
大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F 市民活動スクエア「CANVAS谷町」
(福)大阪ボランティア協会 “裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会(担当:永井)
Email: office@osakavol.org
URL: http://www.osakavol.org/08/saibanin/index.html
★フェイスブック
  https://www.facebook.com/saibaninact.osakavol
★事業報告ブログ
  http://blog.goo.ne.jp/os…/c/75d41997315d8237933718b371a797bf
★裁判員ACTの提言(you tube版)
  http://www.youtube.com/watch?v=Pwk2ee2Dqe0
★裁判員ノート~裁判員になったあなたへ(you tube版)
  http://www.youtube.com/watch?v=JFUgKlTPP60&feature=youtu.
メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
月1回、CANVAS谷町に集まっての例会を中心に活動しています。
裁判員ACT通信へのご意見・ご感想もお待ちしております。

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