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この日はなぜか、おむさんのお気に入りのリュックが無かった。 |
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そこでおむさんは、不本意ながら、カメラバッグに乗っていた。いや、上半身だけ乗せていた。 |
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「う~ん……これって、いまひとつだなあ」 |
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「いつものリュックじゃないと、落ち着かないなあ」 |
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「よし! 私に任せろ!」
「えっ?」 |
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「お前のリュックを、探してきてやるぞ」
「ほんとですか!?」 |
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……しかし、おかか先生はいつまでたっても帰って来なかった。 |
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「先生、どこ行っちゃったんだろ? 心配だなあ」 |
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「よ~し、先生を探しに行こう」 |
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「ただいま。遅くなってすまんな」 |
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「ほら、お前のリュックを持って来たぞ! ……あれっ? あいつ帰っちゃったのか?」 |
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「……」 |
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「ちょっと乗ってみるか」 |
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「ん~」 |
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「なかなか快適だなあ」 |
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「あっ、先生ー!」 |
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「し、しまった! 奴が戻って来たぞ」 |
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「おかか先生! 僕のリュックを持って来てくれたんですね!」 |
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「しかも、僕のために、温めてくれてたんですね……!」
「い、いや、実は、その……」 |
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「先生は優しいなあ……!」
「よ、よせよ。照れるじゃないか……」 |
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おむさんはこうして、お気に入りのリュックの上で、くつろぐことができたのだった。 |
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「先生、どうもありがとう!」
「な、な~に。たいしたことじゃないさ……」 |
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「……ちょっと誤解されたけど、まあ、いいよな」 |
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