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晩秋のロンドンである。
ここ、テムズ河の護岸を、一人の少年が降りてゆく。 |
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もちろん、事件でも何でもない。
日常の光景である。 |
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子供というものは、川岸とか水辺とか、そういう危険な場所で遊びたがるものなのだ。 |
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というわけでこの少年も、単に、川岸に遊びに来たのである。 |
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少年は、水辺へと向かった。 |
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そこへたまたま居合わせたのが ―― おなじみ、ジョン・オカカ・ワトソン博士である。 |
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「おや、子供が水辺に降りてゆくぞ。落ちたらどうするんだ……」 |
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「あっ、危ない! これは一言、注意せねば」
ワトソンは、少年に声を掛けようとした。 |
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まさにその時、少年は、ワトソンに気付いた。
「わっ!? な、なんだ、あの人は?」 |
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おびえた少年は、あわてて逃げた。それを追う、ワトソン。
「た、助けて~っ!」
「おいこら、誤解するな。ちょっと待たんか」 |
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ワトソンはやや太り気味なので、足が遅い。
だから、少年に追い付くことができない。 |
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少年は、護岸を駆け上がり ―― 茂みの中に隠れてしまった。 |
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ぶるぶる ぶるぶる
「こ、怖いよう……」 |
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そこへ現れたのが、名探偵、シャーロック・ホおむズである。
「見損なったぞワトソン……。お前が子供を襲うとは……」
「違うよ、ホおむズ。誤解だよ」 |
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「いやいや! はっきり見たぞ! 誘拐しようとしただろう!」
「ぬ、濡れ衣だ!」 |
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「その人が僕を、さらおうとしたんだよ!」 |
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ガクッ
「ち、違う……そうじゃないんだ……」 |
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「もう言い逃れはできんぞ! お前が犯人だ!!」 |
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「え、冤罪だよ……」 |