背筋を伸ばして

2010年02月02日 16時04分00秒 | B地点 おかか

 

 

新春に萌え出たばかりの若草の芽も、雪に覆われてしまった。
それでも草たちは、健気にも、雪の中で生き抜こうとする。
しかし、この草は、余りの寒さのため、生きる希望を失ってしまったのだった。

「ああ……誰か助けて……寒いよ……冷たいよ……」
「も、もうだめだ……僕は凍死するのか……」
がくっ
だが、この時 ―― 遠のいてゆく意識の底で、この草は、猫たちの会話を耳にしたのだった。
「おい、寒いなあ」

「ええ。こんなに積もるとは思いませんでしたよ」
「いつになったら春が来るのかなあ……」

「いつでしょうねえ……」
「とにかく、ひたすら待つしかありませんよ」
「他に、どうしようもないじゃありませんか……」
「それはそうだが……待つにしても、前向きに待ちたいな」
「前向き? どういうことですか?」

「だからその、希望を持って、未来を見据えて、胸を張ってさ」
「背中を丸くして縮こまってたら、気が滅入るだろ?」

「……僕たちが猫背なのは、当然じゃないですか」
「いや! 背筋をぴ~んと伸ばさなくてはいかん!」

ぴ~ん
猫たちの、こんな会話を聞いて、この草の心にも、勇気が湧いてきたのだった。

「……よ~し! 僕も頑張ろう!」
ぴ~ん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


足跡を即席で残せ

2010年02月02日 15時45分00秒 | B地点 おかか

 

 

「……降ったなあ!」

「……積もりましたねえ!」
「二年ぶりの雪だぞ」

「まあ、この程度で済んでよかったですよ」
「なんだかワクワクするなあ!」

「でも、寒いじゃありませんか……」
「む? おい、見ろ!」
「鳥の足跡があるぞ」
「よ~し、私も足跡をつけよう!」
「……おかか先生ったら、若いなあ」
「う、う~ん。冷たそうだな……」
「やっぱり、やめた」

「な~んだ」
「だって冷たいだろ……」
「カイロの上に乗ってたほうがいいよ……」
「あっ先生、足跡!」

「え?」
「ほら!」

「あ、ほんとだ」
「先生、この足跡で満足なさい」

「そ、そうだな……」