アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

世界先住民族ネットワークAINU「ウコ イソイタク 2009」

2009-06-06 10:48:51 | インポート
今日はお楽しみの世界先住民族ネットワークAINU「ウコ イソイタク 2009」
パネルディスカッション「先住民族として認められた意義とは?」です。
パネリストに、佐々木利和さん(人間文化研究機構・国立民俗学博物館教授)、上村英明さん(市民外交センター代表・恵泉女学園大学教授)、阿部ユポさん(北海道アイヌ協会副理事長)が話されます。

有識者懇のまとめがどのように進められているかも佐々木さんから伺うことが出来るでしょうし、質問や修正するべきところの要望など具体的な話し合いが出来て、それを佐々木さんが有識者懇に生かしていただけることを願っています。


2月26日に開催された第5回有識者懇の「議事録」が出されましたので、過日に、気になっていた国立科学博物館研究主幹篠田謙一氏からのヒアリングの部分を確認してみました。詳しくは有識者懇のURLから確認下さい。以下、議事録引用(茶色)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/kaisai.html

第5 アイヌ人骨収集の歴史と倫理的な責任、今後の研究について
資料1に主なアイヌ人骨がどのように集められたかということを表にしました。古くは明治時代から集められた人骨もあります。大正時代あるいは昭和の初期、あるいは戦後に随分沢山の人骨が集められています。このような先達が集めた人骨の研究によって、私たちはアイヌの成立あるいはアイヌの集団の地域差といったものを見ることができたわけですが、決定的に本土と集め方が違っていたのは、本土の日本ではそこの人々自体に収集の目的、ないしはその意義を説明して人骨を集めましたが、残念ながらアイヌ人骨の中にはそのような手順を経ずに集めた人骨がかなり混ざっています。これは人類学者としても率直に反省しなければいけない点だというふうに思っていますが、このような人骨の研究、特にDNAの研究などは、今後更に研究が進めば、より多くのデータを得る可能性があります。ですから、このような人骨も合わせて、慰霊とそれから研究というものの両方ができるような設備が整って、今後アイヌ研究あるいは日本人全体の成り立ちの研究といったものが更に進むといったことを私どもは願っております。


発題者が研究家のようですから、素直に研究のための願望が前面に出ていますが、「人類学者としても率直に反省しなければいけない」という事も語っています。
この部分がとても大切なところだと思うのですが、願望が顔を出して薄れてしまっています。
「反省しなければいけない点」を明確にする必要があると思います。そして、それに伴う謝罪とその後の展開も。

この発題の後の意見交換も、ちょっとびっくりです。以下、引用(茶色部分)

○ 資料1の5ページの図2の系統図について伺いたいのですが、アイヌを3段階に分析して地域を設定していますが、この根拠となった人骨は何処のものでしょうか。
○ これは東大の小金井コレクションです。アイヌの人骨というのは、戦後集められたものは割と地域的に限られており、全道全体で満遍なく集めたという意味では、小金井のコレクションが一番大きいものですから、それを使わせていただきました。


遺骨を「コレクション」と読んでいるのは、学者間ではあたりまえのことなのでしょうか。
小金井良精についてはわたしも道立図書館に行き調べてたりして過去ブログにも書きましたが(詳しくは植木哲也さん著「学問の暴力」参照)、この遺骨は今も東大にあるということですね。それらに対してどうするのかを、この有識者懇での質疑にはなにも触れられていないように思えるのですが、どうなっているのでしょうか。


○ 札幌医科大学のイチャルパ、供養祭と言いますが、遺骨の返還、更にはDNAのレベルでのアイヌ古人骨による研究申し入れについての話し合いなど、取組は進めてきているところです。これらの取組は、不当な方法で収集されたアイヌの人骨の返還などに関わる先住民族の権利に関する国連宣言第12条の具体的な取組でもあると思っています。この取組の更なる推進と、東大や京大などの国内外の大学他に分散し、保管されているアイヌの人骨について、先住民族の先祖の尊厳回復と今後の研究、アイヌ文化、歴史の理解促進、啓発の意味合いを込めて、象徴的な施設を早急に国民の理解を得て国の責任のもとに設置していただければありがたいと思っています。
その上で、アイヌの経済的、社会的状況の改善に関する総合的施策立案のため、日本政府も加入している人種差別撤廃条約の国内実現も見据えて、その報告義務にもあるように、北海道の調査だけでなく、国が主体となって、生活状況の実態調査を早急に取り組んでいくことをお願いしたいと思っております。


この議事録の質疑は発言者の名前が記されていません。どの立場からかの発言かがわからないのですが、上の内容は、
研究申し入れについての話し合いという「取組」=国連宣言12条の具体的な「取組」
ということを言っているように読めるのですが、それでいいのでしょうか??
先住民族の権利に関する国連連合宣言12条は以下の通り。

12 条【宗教的伝統と慣習の権利、遺骨の返還】
1. 先住民族は、自らの精神的および宗教的伝統、慣習、そして儀式を表現し、実践し、発展させ、教育する権利を有し、その宗教的および文化的な遺跡を維持し、保護し、そして私的にそこに立ち入る権利を有し、儀式用具を使用し管理する権利を有し、遺骨の返還に対する権利を有する。
2. 国家は、関係する先住民族と連携して公平で透明性のある効果的措置を通じて、儀式用具と遺骨のアクセス(到達もしくは入手し、利用する)および/または返還を可能にするよう努める。「市民外交センター仮訳2008年7月31日」



○ 今後のアイヌ人骨に対する研究に当たっては、倫理的な問題に対する考慮が必要で、死者に対する慰霊と研究を同時に進められるような新しい環境を、というお話がありましたが、もう少し何か具体的にお考えがあったら教えてください。
○ 札幌医科大学の取組が、イチャルパをやり、それからアイヌの人々とお話をしながら研究も進めさせていただくというモデルケースになっていますので、そのような事例をそのまま進めていくというのが私は一番いいのではないかと考えています。
○ 北海道大学は相当数のアイヌ人骨を保管していて、管理している部局の考えによれば、これはあくまでも慰霊のためにお預かりしているのであり、研究目的ではないとされています。ただ、将来の研究の可能性があるので、その可能性も含めて適切な方法はないかという意見もあり、いろいろ具体的に考えると難しい問題もあるようです。
○ 北海道大学が所蔵されているアイヌ人骨は一桁違う量ですので、この研究が自由にできるようになれば、非常にまた新しいことが分かってくると思います。ぜひ、アイヌの方々との間で研究協力に関する話し合いなどを行いながら、研究を進められていくような体制ができればと思います。


んんん・・・やっぱり「研究」が前面に出ているのが引っかかります。
「反省しなければいけない」ところを反省し、誠実な調査と報告がなされ、さらに謝罪があってのことと思うのです。有識者懇はどうなっているのでしょう。今日、そのことも聞けたら聞こうと思います。

今日はパネルディスカッションですから、ちゃんとフロアーを巻き込んでのディスカッションになればいいですね。


その後のマウコピリカ音楽祭も楽しみですが、日本海側の道路が夜には通行止めになるので、途中で失礼しなければならなくなりそうです。燃えたかった・・・

日時:2009年6月6日(土) 18:00~
場所:ヤマハミュージック北海道 ヤマハアベニュー(2F)
入場料:当日¥2,500 前売¥2,000




札幌から留萌へはこの海沿いの道をず~~っと140キロ北上します(写真では右下から左上へ)

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