アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

文部科学省アイヌ遺骨調査

2013-03-08 15:04:03 | インポート
少し前ですが、以下の報道がありました。

アイヌの骨、11大学で保管
時事通信 2013年2月23日(土)
 文部科学省が2011~12年にかけて、アイヌ民族の遺骨調査を行った結果、北海道大など11大学で保管されていることが分かった。22日の政府のアイヌ政策推進会議(座長・菅義偉官房長官)の会合で報告された。
 アイヌの骨は第2次大戦前後に北海道などで、大学研究者らがアイヌの墓を掘り起こし、埋葬品とともに収集。アイヌの子孫が遺骨の返還を求めていた。政府は4月にも開く次回会合で遺骨数など具体的な調査結果を示す。(2013/02/22-21:17)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013022200960


アイヌ政策推進会議のHPで確認すると今回ニュースになった第10回制作推進作業部会の「議事案」は閲覧できますが、「議事録」は打ち込み中で閲覧はまだ出来ませんし、当日配布されていた資料も開示されていません。早く調査結果を確認したいものです。
アイヌ政策推進会議HP  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/meetings.html
これまで全国の国公立大学に収蔵されているアイヌ人骨は6大学で計1574体と言われていました。11大学名と遺骨総数の確認、そして、どのような経緯で遺骨を保持・保管しているのか、どのような研究に用いられたかを知りたいです。
1574体の詳しい数については過去ブログ参照→http://pub.ne.jp/ORORON/?entry_id=4066756


この季節に留萌管内でよく見かけるオオワシ


さっぽろ自由学校「遊」2012年度後期連続セミナー 「アイヌ先住権とはなにか」を全4回を先日聞き終えました。
講師の市川守弘さん(弁護士)は、アメリカ最高裁の諸判決から以下のようにまとめます(要点をわたし流に書きます)。
1 ヨーロッパ人が大陸を発見するまでは、先住民族はそれぞれのグループ (nations)が、それぞれ独自の法と制度によって、大陸で独立した存在(すなわち、国)としてあった。
2 ヨーロッパ人の発見によって、その発見した国が先住民族からの土地の購入及びその土地の開拓の権限を与えられた。
3 それぞれの先住民族グループはこの結果、他の発見国との交渉のー切を排除されたものの、それ以外は元々の権利を維持し、土地を所有する、独立した政治的集団として考えられていた。


その元々の権利が先住権。
これをアイヌ民族に当てはめると、先住権の主体は、それぞれのコタンだ、と。
各コタンが狩猟、漁労の地域(イオル)を持ち、樹木伐採、採集など土地資源を活用していた。これら歴史的慣習的行為をしていたその権限が先住権だ、と説明。

そこで、現在のアイヌ政策推進会議のメンバーのひとりである常本照樹さんの文を紹介。「欧米の法体系を継承した日本では権利主体は原則として個人である」(『学術の動向』2011.9「アイヌ民族と「日本型」先住民族政策」より)と言うが、アメリカではトライブという集団の権限(権利)が認められているよ、と。
現在の日本政府とその代弁者は、土地、資源へのアイヌ民族の権限、過去の賠償問題を否定することに根源があるから、このような根拠のないことをいうのだと指摘。

先の「権利主体は個人にある」というのは、わたしも別のところで何度かご本人の説明で聞いています。その際に、例としてこのボールペンの所有権がだれそれにあるというように、と言う様な事を言われていたのを記憶しています。疑問を持ったままでしたが、是非とも常本さんにアメリカのトライブという集団の権限と「個人のみに権利主体がある」との主張の違いについて聞いてみたいです。

最後に市川さんは、先住権の再構築が必要だと述べます。かつてのコタン構成員による先住権の主張を強化する、もともとあった権限をその構成員の継承者が主張していったらいいのだ、と。
それとは別に、差別や民族議席などの新たな権利問題もあるので、意識的に別問題として取り組む必要があるとも指摘。

これらの主張は過去ブログにも書いたように、アイヌ人骨返還等訴訟においてもなされており、遺骨はコタンに返還すべきとしています。

さて、次回、第3回公判は4月19日(金)、午前11時半より札幌地裁にて行われます。原告の小川隆吉さんの意見陳述が予定されています。
(法廷室未定ゆえ、11時15分に1階ロビーにて集合)

翌4月20日(土)は、午後1時15分より第3回シンポジウムを下記のように開催いたします。詳細な裁判報告も含めて世界の先住民族の遺骨変換の報告を聞きます。あわせてご案内いたします。

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シンポジウム「さまよえる遺骨たち」パート3「先住民への遺骨返還はセカイの流れだ」
日時:4月20日(土) 13:15開会 15:45閉会
場所:札幌市教育文化会館(中央区北1西13)
報告1「ドイツにおける遺骨返還の状況」小田博志(北海道大学大学院文学部准教授)
報告2「イギリスの状況」植木哲也(苫小牧駒澤大学国際文化学部教授)
報告3「アメリカの状況」市川守弘(弁護士)
裁判報告
入場無料(資料はお買い求めください)



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