おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「チーム」 堂場瞬一

2011年01月21日 | た行の作家
「チーム」 堂場瞬一著 実業之日本社文庫 11/01/20読了  

 極めて秀逸。めちゃめちゃ面白かった。半分ぐらい読んだあたりで「フィナーレは絶対泣いちゃうよ~」と予感しました。フィナーレどころか、朝の通勤電車で涙ぐんでいた私。もう、まんまと作者の術にハマって、ドキドキ、ウルウルでした。

 箱根駅伝に出場した学連選抜チームの物語。「箱根駅伝」は直前に読んだ「RUN! RUN! RUN!」と同じテーマですが、人物の描き方、物語の完成度が雲泥の差でありました。

 確かに、箱根駅伝を見ていて、学連選抜チームの選手たちは何を糧にして走るのだろうと思っていました。個人の能力は低くないのに、所属する大学としては駅伝への出場を果たせなかった選手たち。学連選抜チームの中で、自分の担当する区間で好成績を納められればそれでよしなのか。それとも、急ごしらえのチームであっても「チームとして勝ちたい」という思いがあるのか。それとも、やっぱり、所属大学への思いばかりが胸にあふれているのか…。そのあたりの心理描写がたくみ。

 選手ばかりでなく監督やコーチたちも複雑な思いを抱えている。自分の大学チームを箱根に導けなかった予選会11位の監督が学連選抜の監督を務め、どうやって、チームをまとめていくのか。

 そして、何よりも、走っているシーンが素晴らしい。他チームの選手との駆け引き、大舞台で舞い上がってしまっている自分、古傷が痛み弱気になってしまっている自分との戦い。後ろから迫ってくるライバルたちを振り返りたい衝動をどうやって抑えるか、上り坂から下り坂への切り替えでいかにフォームを修正するか―。名実況を聴いているかのごとく、いやいや、間近に選手の足音や息づかいが聞こえてくるかのようにリアルなのです。

 三浦しをんの「風が強く吹いている」を余裕で超えて、駅伝小説ぶっち切りのナンバーワンです。