origenesの日記

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アルフレッド・W・クロスビー『数量化革命』(紀伊国屋書店)

2008-12-06 21:01:00 | Weblog
原題は『現実の計測 計量化と西洋社会、1250年から1600年まで』本書の扱う期間は、中世後期からルネッサンスまで、である。
著者の主張するところによると17世紀の科学革命の前には数量化革命があったという。分刻みの時間、音楽(アルス・ノヴァ)、アルベルティらの遠近法、簿記、会計、インドに由来しているゼロ数字など、中世からルネッサンスにかけてヨーロッパの人々は様々な事物の数量化を試みた。中世後期からルネッサンスにかけてプラトンのロゴス的精密さとアリストテレスの自然世界を考察する思想が結合したところに、科学の精神が生まれ始めたのである。本書では抽象性に彩られた中世が、やがて精密性を重視する近代へと進んでいった過程が多面的に描かれている。
中世中期までは時間とはゆるやかに流れるものであり、一分の違いなどは問題にならなかった。しかし14世紀に機械時計が誕生し、時間というものが精密に計測可能なものだという認識が広がっていく。14世紀の機械時計は15世紀以降の大航海時代を用意した。このような「現実の計測」こそが西ヨーロッパの発展をもたらした、と著者は説く。
数量化革命の代表的人物たるケプラーが惑星は音楽のようだ、と評しているのは初めて知った。彼もまたアルス・ノヴァの数学的音楽に魅せられた一人だった。

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