origenesの日記

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J.M.シング『アラン島』(みすず書房)

2008-12-06 20:53:06 | Weblog
ジョン・ミリントン・シングは1871年生まれ、1909年没。イェイツやレディ・グレゴリーとともにアイルランド文芸復興運動の代表的文学者として知られている。
本書は20代後半のシングが、パリ遊学から帰り、アイルランド西方のアラン島を訪れ、書いたエッセイである。新訳であり、意図的に古い日本語や方言が用いられている。パリでうだつのあがらない生活を続けていた20代後半のシングは、西のアラン島に赴くことで、アイルランド文芸復興運動の立役者としての地位を得るに至った。アラン島の生活を理想化している辺りは批判的に読まなければならないが、シングが学のない青年と深い交流を行う辺りは清清しい印象を読者に与えるだろう。
後書きによるとシングは一見鈍い人物だったという。イェイツという天才の影に隠れがちだが、ジョイスからも絶賛された詩人としてもっと評価されても良い存在だと思う。劇作である『西の国の名物男』『海に乗り出す人々』などが彼の代表作である。

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