origenesの日記

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ジャン=ピエール・トレル『カトリック神学入門』(文庫クセジュ)

2008-06-28 18:04:55 | Weblog
著者はトマス神学の研究者。トマス・アクィナスに関する叙述は特に詳しい。
古代ギリシア的な理性とユダヤ的な信仰の融合はオリゲネスを始めとする古代ギリシア教父によってなされた。後にカトリックを捨てたテルトュリアヌスのように、「アテネ(理性)とエルサレム(信仰)の間に何の関係もない」という態度をとる思想家もいたが、神学における理性と信仰の融合はラテン教父・アウグスティヌス以降カトリックの主流となった。
以降、アンセルムス、アルベルテュス・マグナス、そしてトマス・アクイナス。古代・中世のカトリック神学はトマスにおいて頂点に達する。トマス・アクイナスをアウグスティヌスよりもアリストテレス的な思想家であると見なす向きもあるが、著者はトマス・アクイナスこそをアウグスティヌスの神学の後継者だと考えているようだ。トマス・アクィナスがアリストテレス主義者(反プラトン的)でボナヴェントゥラがアウグスティヌス主義者(プラトン的)だという偏見について、著者はアクィナスの神秘主義的な傾向を指摘して冷静に批判している。アクィナスもプラトンに深く親しんでいたはずである、と著者は主張する。
ルター・カルヴァン以降のプロテスタントとの緊張感に裏付けられた近代カトリック神学についての叙述も興味深い。ジャック・マリタン、エティエンヌ・ジルソンのような20世紀初頭の神学者、第2バチカン公会議に大きな示唆を与えたカール・ラーナー。教皇庁から問題視された南アメリカの「解放の神学」の学者たちやフェミニズム神学者たち。多様化する20世紀カトリック神学の見取り図が描かれている。
ルター派の学者によって始められた「教父学」という学問も気になった。プロテスタントの神学者たちはローマ・カトリック以前のキリスト教に目を向けようとする。

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