origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

ケネス・クラーク『絵画の見かた』(白水Uブックス)

2008-06-22 18:27:24 | Weblog
ケネス・クラークはルネサンス美術の大家である。本書は、ティツィアーノ『キリストの埋葬』、ラファエッロ『漁獲の奇跡』といった専門のルネサンス美術から、ベラスケス『宮廷の侍女』、ヤン・フェルメール『アトリエの画家』、レンブラント『自画像』のようなバロック美術、ドラクロワ『十字軍のコンスタンティノープル入場』のようなロマン派美術、スーラ『アニエールの水浴』のような印象派美術まで幅広くカバーしている。
イギリスの美術家であるためか、特にターナーやコンスタブルの説明に力が入っているように思えた。著者によると、ターナーの風景画の偉大さは、自然をありのままに捉えようとしたことにあるという。レオナルド・ダ・ヴィンチは自然を克明に描写しようとした点においてはターナーに近い画家だったが、しかし彼は自然を知的に解釈した上で描こうとした。ターナーは知性や理性でなく、自然の荒々しさをそのままの姿で描こうと努めた。著者はターナーを『九龍図』や『富嶽図』に近いところに置いているが、確かにターナーの自然観は近代西欧人の知的な自然観からは多少遠いところにあるように思える。
後、ドラクロワがイギリスで「こんなに美男なのに絵を描いているのにもったいない」という反応を受けていたという話は面白かった。19世紀イギリスの社交界はフランスに比べて、芸術に対する理解が浅かったのかもしれない。

『ゴッドファーザー part3』

2008-06-22 18:22:05 | Weblog
『ゴッドファーザー』シリーズの最終章。おそらく今後part4が出ることはないのだろう。
マーロン・ブロンドもロバート・デ・ニーロもいないゴッドファーザーである。代わりに今回は準主役として『オーシャンズ11』のアンディ・ガルシアが出ている。流血沙汰が少ない分、『ゴッドファーザー』が当初から有していた組織論的なところが前面に押し出されているようにも思えた。マフィアも銀行もカトリック教会も組織であり、権力を求めて彷徨う人々を内に抱えている。『ゴッドファーザー』が広く人気のある作品となったのも、組織を描き出すリアリズムゆえなのだろうなと感じた。
マフィアとして類まれなる才能に恵まれた主人公マイケルは、兄を殺し、妻と離婚し、娘を射殺される。この映画に出てくる権力を求めた人々の中で誰が幸せになっただろう。最後に息をひきとるマイケルの姿は、権力と名誉を求める多くの人々への哀悼ともなっているようにも思えた。