origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

金沢

2008-02-14 21:48:20 | Weblog
金沢に行ってきた。以下の3つの文学館を見てきた。この3人は金沢三大文学者と呼ばれているらしい。
「泉鏡花文学館」
泉鏡花の幻想的な雰囲気を見事に表現した文学館。『義血侠血』『高野聖』を始めとする彼の作品の概要を知ることができ、更には鏡花ゆかりの品々を鑑賞することができた。女性の幽霊の話が多いのは、幼き頃に母親を亡くしていたからなのか。実世界での男女の恋愛も、男性と幽霊の女性との恋愛も、鏡花の手にかかれば同じように幻想的なものとなってしまう。秋声が近代の井原西鶴だとしたら、鏡花は近代の上田秋成だろうか。
「徳田秋声文学館」
日本の小説は源氏から西鶴へと飛び、西鶴から秋声へと飛ぶ、と川端康成は言った。日露戦争以降の奔放な女性の生き様を描いた『あらくれ』が代表作として有名だが、むしろ『仮装人物』や未完の『縮図』の方が魅力的かもしれない。芸者との恋愛を叙情的に描いたという点では、川端との共通性を感じる。
「室生犀星文学館」
「ふるさとは遠くにありて…」で有名な抒情詩人を記念した文学館。北原白秋が、犀星と萩原朔太郎を評して、何もかもが対照的でありつつも2人で一体のようだ、と評しているようだが、近代詩を切り拓いたこの2人の詩人は確かに綺麗に対照的な気がする。モラルを逆なでするようなボードレール的詩人である朔太郎に対して、叙情的に自然を読み込む犀星。この2人の双方が「近代詩の曙」であり、双方ともなくてはならないものなのだろう。