牧歌と英雄詩

牧歌(pastral poems)の反対は英雄詩(heroic poems)であるという。この２つは対照的である。
農民や牧夫と言った貧しい人々のことを歌う牧歌。
アキレスやアエネアスのような影響力の大きい英雄のことを歌う英雄詩。
短編詩が多い牧歌。
長編詩が多い英雄詩。
抒情詩的な牧歌。
叙事詩的な英雄詩。
ウェルギリウスは叙事詩『アエネイス』の書き手であると同時に、優れた牧歌も書いた。スペンサーもドライデンも、牧歌を書いた。「牧歌」は一見「牧歌的」に見えて、実はそれ自体が「都会」や「戦争」に対する皮肉にもなっている。

マルクス主義系の批評家ウィリアム・エンプソンによると、牧歌とは上流階級的な言葉で貧しい人々のことを書く詩であるという。貧しい人々のことを貧しい人々の言葉で書く詩ではないのだ。確かに牧歌の書き手は上流階級的な言葉を知っている。ウェルギリウスにしても、ヒーニーにしても。その上流階級的な言葉を用いて、彼らは貧しい人々を描く。