農家民宿 月水荘の日記

限界集落で、世界中からのお客さまをおもてなしする農家民宿の日々

1リットルの血がもったいなかった出産

2020-06-30 15:33:29 | 育児
本当に、びっくりする。
2回目だけど、やっぱり驚く。
喉が切れるくらい絶叫して、普段は敬語で話している助産師さんに対して「水!」「無理!」と単語を投げつけるだけの無礼な態度しか取れないくらい、そもそも会話なんかとてもできないくらい苦しんでのたうち回り、下半身の骨を金属バットで思い切り砕かれているような痛みにいっそ気を失いたいと思い、でも気絶もできず、全身の筋肉が悲鳴を上げる中、最後の力を振り絞っていきむ。
大量に出血し、もう無理だ、と思ったところでやっと、やっと一人の人間をこの世に生みだすことに成功する。
大量にかいた汗がひいていき、寒気で震えが止まらなくなる。でもやっと終わった、やっと…。成し遂げた。もう何の力も残っていない。
どう考えてもここでエンディングテーマが流れるとしか思えない。

なのに、これが終わりではなくて始まりだということに心底、びっくりする。
車に轢かれて全治二ヶ月みたいなこの状態で、人間を一人育てるというハードな仕事が待ったなしに始まるということが、ドッキリかと思うくらいびっくりする。

というわけでこの春、第二子の娘が生まれた。
陣痛が始まったのは夜中だった。出産予定の助産院までは、一時間かかる。夫が運転する車が山道をいくと、鹿が、イノシシが、タヌキが次々と前を横切っていった。
「なんで止まるの!早く!痛い痛い~」
ブレーキを踏んだ夫に文句を言うと、
「だってウサギさんが…」
ヘッドライトの中に、道の真ん中で立ち往生しているウサギがいた。なぜかまったく動いてくれない。ウサギに阻止されているうちに、どんどん陣痛が進んでいった。
助産院に着いて、助産師さんと夫に両脇を抱えられながら中に入った時には、あと30分くらいできっと出てくるような気になっていた。だって2回目だし。病院に着いて30分で生まれたって、去年第二子を出産した友達が言ってたし。もうこんなに痛いし。
一人目の時は、人類の想像をはるかに越える痛みに「騙された!妊娠出産とかやめときゃよかった!子供欲しいっていう友達にはやめとけって言おう!『出産はおすすめしません』てチラシ作ってポスティングしよう」と強く思ったけど、今回はもっとマシなんじゃないかな。二回目だし。そんな根拠のない期待を抱いていた。

助産師さんにわがままを聞いてもらい、入院予定の普通のお部屋でそのまま出産することになっていた。とりあえず私はベッドに入り、夫と息子は部屋の隅で寝袋にくるまって待機する。

ほどなくして、急に殴られたような痛みに襲われた。それから約5時間、私は絶叫し続けた。
全然痛いわ!誰や、二回目はマシやって言った奴!誰も言ってないわ、自分で勝手に思ってただけや!
叫びながら、力任せに夫の腰をつかむと「肉が痛い」と夫が声を上げた。5年前の息子の出産の時は、服しか掴めなかったのに、この五年で腰回りに肉がついたせいだ。自己責任だ。
こんな絶叫の中、一緒に立ち会った息子は熟睡している。夜中の3時とかだから仕方ないとはいえ、よくこの状況で寝れるな…。
何でまたこれやろうと思ったんだ、やっぱやめときゃよかった…と思いかけたけど今回はそんなに強く思わなかったのは、痛み自体は前回とそんなに変わらないけど、想像の範囲内で済んでいるのと、陣痛と陣痛の合間にちゃんと力を抜くことを覚えたおかげだった。
前回は、パニックになりすぎて陣痛の合間も全く休めなかったから。

窓の外がすっかり明るくなった午前7時すぎ。
ずるりと、頭の大きな女の子が私から分化した。おにぎりせんべいにそっくりな顔だった。
汗がひいていくにつれ、寒さで震えが止まらなくなった。歯がガチガチする。にわかに、助産師さんたちが慌ただしくなった。
どうやら、一リットルほど大量に出血してしまったらしい。どうりで寒気がするはずだ。
急遽、提携している総合病院に搬送され、一晩入院となった。早く助産院に戻って赤ちゃんに会いたかったので、「いつ戻れますかね?」と何度も看護師さんに確認し、元気だと印象づけるためBBクリームとチークをぬって顔色を良くしてみたりした。

「もったいない~。くそ~やめときゃよかった」
翌日、夫の運転する車に乗って助産院に戻る道中私は非常に悔しがっていた。緊急入院の費用が出産一時金の適用外で、6万円弱実費でかかったからだ。
「あんなに出血なんてするんじゃなかった」
「仕方ないやん、自力でコントロールなんてできんやろ」
夫が至極当然のつっこみをする。
「いや、こんなにかかると分かってたら気合いで止めたのに。これから母乳で血液を使うのに、あんなに出しちゃって血もお金ももったいない」
だけど、助産院に着いて娘を抱き上げたとたんに、マグマのように多幸感が強烈に流れ出してきて、ええやん、こんなに丸々とした子が無事に生まれてきたんだから6万円くらい何なん?安いもんやん、激安やん!血だっていくらでも出すわ、これからまたじゃんじゃん作ったらええわ。という気持ちになった。

子供を産んで育てることは、びっくりすることの連続で、そのうちそれにも慣れてびっくりしなくなって、でもまた新しいことに驚かされる。一人目と違うことは、これから起こるであろうたくさんのびっくりが、恐れじゃなく楽しみだと思えることだ。







草があれば生きていける

2019-04-15 13:37:37 | てづくり
生きて息しているだけで幸せな、4月ですね。
このあいだお客さんを駅まで送ってから、「酒を片手に海辺で読書」という贅沢を実現するべく、さびれた海水浴場の近くにある自称コンビニ(コンビニと書いてあるが、田舎によくあるよろずや的な小さい商店)に歩いて向かっていたときのこと。
光に満ちた世界のすべてがごきげんに笑っているように見えて、海は絶え間なくきらきらしていて、ああほんまに幸せやな~とにやにやしていると、自称コンビニの出入り口にハイボールのポスターが!
「ああ、しあわせ」という文字の下に、私と同じように(錯覚)微笑んでいる、井川遥が!

「なあなあ、今日井川遥が私と同じこと考えてた!めっちゃ嬉しい!」
と夫に報告すると、
「そんなこと本人が思っているわけないだろう。撮影で言わされているだけだ」
と言われた。


ところで、春は野草の季節です。
冬野菜の収穫が終わり、次の植え付けに入る端境期でもあり、あまり野菜がない時期。
この時期には、野草が貴重なビタミン源になる。

和ハーブ検定一級の私から言わせてもらう。
野菜は一日350グラム摂らなきゃいけないなんて言う栄養学は、野草を完璧に無視している!
野草に含まれるビタミン類は、栽培された野菜の平均3倍。さらに、ぬくぬくと世話をされている野菜に比べ(ごめんね、野菜さんたちをディスってるわけじゃないよ)、どんな過酷な環境でも生き抜く彼らの生命力はすごい。抗酸化作用も大いにあり、フィトケミカルも豊富。
従って、野菜よりはるかに少ない量で事足りる。
これを食べない手はないだろう。


家の裏に生えているユキノシタは天ぷらにすると肉厚で美味しい。
柿の若葉も、天ぷらにするとまるでフルーツみたいな甘酸っぱさがあって美味しい。
のびるは、刻んで軽く炒めるか茹でて、ごま油と塩昆布で和える。
あっという間に背丈以上に伸びるイタドリ(この地域ではゴンパチ)は、皮を剥いてあく抜きの下処理が大変だけど、独特の歯ごたえが大好きなので、後々の大変さを顧みずついつい採りすぎてしまう。
ハコベは私にすると少々土臭く、料理するのはあまり気が進まないけれどお茶にすると母乳の出を良くしてくれたり、歯周病の薬にもなる。

4歳の息子も野草採りが大好きで、知らぬ間にのびるをたくさん収穫してストックしておいてくれていたり、イタドリの下処理をしていると「手伝おうか」とスッと隣に座って一緒にやってくれたりと、非常に頼もしい。


京都でシェアアパートに住んでいたころの友達で、「3月の一か月、一回も買い物をせずに鴨川で採取した野草だけで生き延びた」という強者がいたけれど、不可能な話ではない。
私も、沖縄のやんばるの奥地にある養蜂家のご夫婦のお家でwwoofをやっていて炊事を任されていた時は、最寄りの最寄りのスーパーまで車で一時間という僻地だったためしょっちゅう食材に困った。
その結果、家の周りに生えていた野草を工夫して料理するようになった。
そこで得た真理は、
どんな草でも天ぷらにするとそれなりに美味しい
ということだった。

しあわせな四月。
散歩をしながら、「あれも食べられる、これも食べられる」と目を光らせていると、
「今すぐ地震が来て物資がストップしても、うちは生き延びられるな…フフフ」と、井川遥と悪代官を混ぜたようなほほえみが浮かぶのだった。








フラフープ解禁

2018-07-25 16:15:16 | 日記
仕事中にyoutubeでかける音楽はもっぱら90年代のJ-POPリストで、なぜなら青春時代の背景に流れていて音楽というのは問答無用でテンションが上がるからなんだけど、このあいだTRFの「EZ DO DANCE」のPVの若かりしころのYUKIが可愛すぎて、仕事を中断して見入ってしまった。

白いチューブトップでお腹全出し。白いホットパンツで足全出し。白いスニーカー。
スタイルが完璧な人しかできない格好だ。私が同じ格好で映る映像を残せと言われたら、一億円もらっても断るだろう。

去年の秋ごろから、「ママ、おなか大きくなったねえ」と息子に無邪気に言われるほど太ってきた。
30代半ばになると代謝が落ちて太りやすくなるって本当なんだ、、、!と衝撃を受けつつ、このままではいけない!と思ってフラフープを買った。
さっそく狭い和室の中で回していたら、息子に謎の猛反発を受けた。

「ママ、フラフープここで回さないで!」
「え?なんでよ。…まあいいや、わかった。移動すればいいんでしょ」
隣の部屋に言って改めて回していると、息子がついてきて
「ママ、ここでフラフープ回さないで!」
「移動したじゃん!なんでママにフラフープやらせてくれないの!痩せさせてよ!」

理不尽な言いがかりにやや喧嘩腰になりながら、息子を振り切ってフラフープを続けていると、
「フラフープまわさないで~。うわあ~。」
息子が泣きながら崩れ落ちた。

なんでだよ!

そんな息子からの妨害を受けたことを言い訳にして、しばらくサボっていたフラフープを再開した。
数か月のインターバルを置いたせいか、今度は息子も反対しなかった。

今日もフラフープを回す私の横を、安全のためヘルメットを装着した息子が通過していく。
(ヘルメットは、乗って運転できるおもちゃのショベルカーに付属していたもの)。


分厚い唇は似合わない

2018-05-11 06:45:44 | 日記
この一週間ほど、ne-yoのような唇で過ごしていた。


先月末から忙しすぎて、体調が激悪だったときに、いつも使っている自然派のリップクリームを塗った。
直後に、激しい痛みに襲われ、唇が真っ赤になって三倍くらいの大きさに腫れあがった。

ネットで調べてみたところ、どうやら急にみつろうアレルギーになってしまったらしい…。
痛いしかゆいし、ごはん食べるのもつらいし、笑っても痛いのでだいたい表情もne-yoで過ごしていた。

今やっと元に戻り、自分の唇がこんなに小さかったことに驚いている。
この一週間で、自分には分厚い唇は似合わないことがわかった。整形はしないでおこう。

今まで平気だったのに、急にアレルギーになることなんてあるんだなぁ。そういえば、弟も高校生の時に急に牛肉アレルギーになったっけ。
抵抗力が落ちていたせいで、もしかして元気なときは出ないかもしれないのだけど、再び試す勇気はない。
みつろうとかココナッツオイルとか、自然素材だけのリップクリームですごく潤うしお気に入りだったからけっこうショックだ。

I want エビカニ

2018-05-08 15:08:55 | ローカル
「アイワナ エビカニ~ アイワナ エビカニ~♪ エビ・カニ・エビ・カニ・オ~♪」

三歳の息子がよく歌っている謎の歌。
保育園で習ったとも聞かないし、もしや、我が町を代表する観光施設「エビカニ水族館」に捧げたオリジナルソングだろうか?

その名の通り、エビとカニだけを集めたニッチな水族館。
資金不足で一度は閉鎖しかけたものの、全国のファン(?)の惜しむ声に応えたか何かで、すさみ町道の駅の新設とともにリニューアルオープンした。
エビとカニなんてスーパーの鮮魚コーナーでも見れるじゃん、と思うなかれ。規模が小さいながらも、「え!世界にはこんなエビとカニが、、、!」と新鮮な驚きを味わえること請け合いである。

ちなみに、エビカニだけといいながらウミガメもいる。
エビカニ水族館常連の息子は、最近ではエビカニの水槽の前は「わ~おっきいかにさ~ん」などと口だけで感嘆を示しながらろくに見もせず走って通り過ぎ、最後のウミガメの水槽に直行してガチャガチャで買った餌をあげるのがお気に入りだ。

どういうシステムなのかは知らないが、移動水族館もやっているらしい。エビカニ水族館と書いたトラックをよく見かける。
うちに来てくれたら、鮮魚の出前と間違えてエビを茹でてしまいそうだ。

リニューアルオープンした時、ぴかぴかの建物を見て一抹の寂しさをおぼえた。
以前の、あのさびれ具合がとても好きだったのに。特に、手作り感あふれる入口の「ペットボトル自動ドア」(手動で開けたドアが、両端に吊り下げられた水入りペットボトルの重みで自動で閉まる)が…。
と思って、初めてリニューアル後の水族館を訪れて驚いた。
建物は新しいのに、入口だけ「ペットボトル自動ドア」だったのだ。やっぱり、私と同じように惜しむ人が多かったに違いない。

エビカニ水族館では、お気に入りの水槽のサポーターになることもできる。
寄付をすると、水槽の上に名前が飾られるのだ。EBKN48の推しメンを見つけてサポートするのも楽しみ方のひとつだろう。

ステージでケガをして、テーピングをしているメンバー。


甲殻類の殻が表面にある骨だとすると、殻が損傷したら骨折なのだろうか?


冒頭の、息子のエビカニソングはやけに頭にこびりついて離れないので、無意識に「エビ・カニ・エビ・カニ・オ~」と口ずさんでいたら、
「ママ、オ~と違うで。フォ~やで」
と息子の指導が入った。