ベランダ蘭

灼熱と強風のベランダで健気に育つランの観察

フウラン「大壮錦・桃山香」 (Vanda falcata 'Daejanggeum' or 'Tousanka')

2018-06-26 | 富貴蘭・フウラン
フウラン (Vanda falcata) の実生作出品種、大壮錦(または桃山香)です。
2017年12月、桜井園芸から桃山香として購入。



韓国において実生作出されたとのこと。韓国と言えば奄美フウランですから、この品種も奄美系という説があります。
しかし、栽培していてもアマミ系の性質は見受けられないと言っている方もいるようで、
それと対応するように、玉金剛(たまこんごう:豆葉)と富嶽(ふがく:黄色散り斑)の交配で作出されたという説もあります。
私も自分の目で開花時期(奄美系は遅い)や、冬季休眠(奄美系は浅い)の性質を確かめていくつもりです。

名前に関しても混乱があり、韓国において、大壮錦(Daejanggeum)という銘で、大韓民国風蘭連合会に2013年に登録されています。
これが正統な名称と言えるでしょう。(何と発音するのでしょうか。デージャンギュム?)
それが日本に渡って流通する過程の伝言ゲームで、大壮軍(だいそうぐん)や、大将軍(だいしょうぐん)などと表記がぶれ、
さらに改名されて、桃山香(とうさんか)となったとか。(購入元の桜井園芸だけ、なぜか「とうざんこう」と読んでいるようですが?)
魅力ある品種の裏で色々な立場の思惑が働いたのでしょうが、ややこしいことです。

参考元:
大韓民国風蘭連合会 http://pungnan.or.kr/bbs/board.php?bo_table=sinpungnan&wr_id=181&page=2
ブログ「富貴蘭讃歌」さん https://blog.goo.ne.jp/fukiransanka/s/桃山香
ブログ「蘭の国から」さん https://blog.goo.ne.jp/rannokuni/s/桃山香



葉芸はガッシリした豆葉に黄色の散り斑(ちりふ)縞ですが、天葉で明るく、徐々に暗んでいきます(クロロフィル合成が回復していく)。
一見すると後暗みの曙芸で、全ての細胞が変異した全斑の状態に見えますが、
下写真の仔芽に、天葉から紺筋が現れていることからも分かるように、正常な緑色細胞との区分キメラ的性質も持つようです。
それゆえに、柄が抜けた青の個体も売られています(ただの玉金剛だったりして)。



このような散り斑は、セルフ実生でも他品種との交配でも伝わることが知られています。
その最も有名な例が、この大壮錦/桃山香の母種とも言われている富嶽であり、多様な実生品種が作りだされる元となってきました。
シロイヌナズナのVAR2遺伝子が欠損した突然変異と類似しており、これも遺伝的な斑入りであろうと予想できます。
(ですが、そうすると上記のようにキメラ的性質を持つことと矛盾しそうです。エピジェネティックな変異? あるいはトランスポゾン挿入?)

この大壮錦/桃山香も、セルフ実生によるコピーで大量に苗が出回り、5年ほど前に価格相場を暴落させた過去があったそうです。
一級の芸を持ちながら、数が増えすぎて希少価値がつかず人気が衰えたのは、豊明殿のたどった道と共通しています。
しかしそのおかげで、私でも購入できるようになったのですが。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。