軌道エレベーター派

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2015 Space Elevator Conference 始まる

2015-08-23 13:40:54 | ニュース
 軌道エレベーターにかかわる研究者、技術者などによる国際会議 "2015 Space Elevator Conference" (SEC'15) が、米ワシントン州シアトルの "Museum of Flight" で21日(現地時間)から始まった。初日は約50人が参加し、最新の研究成果を発表したり、意見を交わしたりした。

 米国での国際会議は、2002~04年にワシントンD.C.などで開かれたことがあったが、一時中断。しかしその後再び機運が高まって08年に再開し、現在は "International Space Elevator Consortium"(ISEC)の主催で、毎年夏に開催されている。08年に日本宇宙エレベーター協会(現・宇宙エレベーター協会)が設立されて以降は、日本からも例年参加が続いている。

 開会にあたり、今回の司会を務めるISECの David Horn 氏が「将来、軌道エレベーターを実現するために、我々はきょうここに集まった」とあいさつ。続いてBryan Laubscher氏が、軌道エレベーターの概略や基本構造、機能などについてひもとき、研究史を振り返った。地球の重力を振り切るコストにおいて、ケーブルを増設していくことで、1kgあたり30ドルにまで低減することも可能と見積もり、ロケットに比べて軌道エレベーターがいかに効率的かを強調。また、歴史的大事業だった米国の大陸間横断鉄道開通の歴史を紹介し、「軌道エレベーターの実現はこれに匹敵する巨大事業になる」と訴えた。

 実現の最重要課題とも言える素材分野では、シンシナティ大学のMark Haase博士が基礎構造となるケーブルに求められる素材について ①どの素材が充分な強度を持つか ②何が強度を高めるか ③エレベーターのケーブルとして使えるまでどのくらいかかるか──の観点で発表を行った。氏は従来からの素材の筆頭候補であるカーボンナノチューブと、グラフェン、窒化ホウ素ナノチューブの三つを「コアマテリアル」と位置付け、素材の物性や破断条件、研究の成熟度などを比較。このうちカーボンナノチューブを「化学的安定性があり、一番発見が早く研究が進んでいる」などとして、現状で一番有望という見方を示した。
 一方、Laubscher氏はカーボンナノチューブの模型を手にしながら、現行の化学気相成長法(CVD法)の課題を伝えるなどした。初日はこうした発表に加え、コンピュータシミュレーションの重要性を示す発表や、テーマごとにグループに分かれた討論などが行われた。

 SEC'15 は23日までの3日間続き、研究発表やテーマ別ワークショップなどが行われる。最終日にはJSEAの大野修一会長が、協会活動や日本における研究の進捗などを報告するほか、大林組の石川洋二氏が同社の「宇宙エレベーター建設構想」について発表する予定。(軌道エレベーター派 2015/8/22=現地時間)

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