オレンジな日々

広島在住のシンガーソングライター&ピアニスト
三輪真理(マリ)のブログです。
音楽大好きな日常を綴っています。

映画『羊と鋼の森』(ネタバレあり)

2018-06-27 | おすすめ映画

映画『羊と鋼の森』を観に行ってきました。
2016年に本屋大賞受賞した宮下奈都の小説の映画化作品。
まずは映画『羊と鋼の森』公式サイトよりストーリーの紹介です。


【転載開始】

「羊」の毛で作られたハンマーが、
「鋼」の弦をたたく。
 ピアノの音が生まれる。
 生み出された音は、
「森」の匂いがした―


将来の夢を持っていなかった主人公・外村(山﨑賢人)は、 高校でピアノ調律師・板鳥(三浦友和)に出会う。
彼が調律したその音に、 生まれ故郷と同じ森の匂いを感じた外村は、 調律の世界に魅せられ、果てしなく深く遠い森のような その世界に、足を踏み入れる。
ときに迷いながらも、先輩調律師・柳(鈴木亮平)や ピアノに関わる多くの人に支えられ、磨かれて、 外村は調律師として、人として、逞しく成長していく。
そして、ピアニストの姉妹・ 和音(上白石萌音)由仁(上白石萌歌)との出会いが、 【才能】に悩む外村の人生を変えることに―。


【転載終了】


映画は期待した以上に良かったです。
監督は橋本光二郎監督。
「1つの音から森の映像が広がる」。小説では文章で書かれた情景を実際にピアノの鍵盤の映像から森の映像にシフトさせていく描写、板鳥の調律を聞いている外村の背景に木々の影が流れる描写、心を閉ざしてピアノから遠ざかっていた和音が外村の調律したピアノを弾いていくうちに海の底から目覚めて水上に上がっていく描写、言葉を映像と音に変えるという映画のこだわり、監督の映画に込めた思いが随所に現れていました。


ピアノ調律師を扱った映画でとっても印象的だったのは2012年に観た『ピアノマニア』(2012年8月3日の日記)。
こちらは実際の調律師を追いかけたドキュメンタリーでしたが、「羊と鋼・・」の方は小説。
その映画化に当たって俳優さんたちは実際の調律師さんの指導を受けて何ヶ月も特訓があったそう。
それも大変な話ですね。


ピアニスト役の上白石姉妹はこれまたやったことのないピアノを何ヶ月も特訓したそうです。
連弾のシーンなんて本当にお見事でした。
もちろん、音声やアップのシーンは多少の吹き替えはあったと思いますが、それでも何の違和感もなく映画に入り込めました。
映画って本当にすごいですね。


北海道の旭川の森の美しさや雪景色の美しさも素晴らしかった。
極寒の地での撮影はスタッフさんも俳優さんたちもさぞかし大変だったことと思います。
それにしても日本の森って本当に本当に美しいですね。
この自然を大事にしていきたいって改めて思えます。
そしてピアノの音がとっても印象的なサントラは、83年生まれの作編曲家でシンガーソングライターの世武裕子さん。
森の梢の音や風の音、ピアノがホールに響く音、などなど、音声さんや録音さんの技術も素晴らしかった。


そして最後に特記しておきたいシーンは、調律師となった外村が目標とする調律師・板鳥に「どんな音を目指していますか」と問うシーン。板鳥はそこで詩人・原民喜の言葉を引用し答えます。

 

「明るく静かに澄んで懐しい文体、
 少しは甘えてゐるやうでありながら、
 きびしく深いものを湛へてゐる文体、
 夢のやうに美しいが現実のやうにたしかな文体」
(随筆「沙漠の花」より)


 

外村は「もう一度お願いします」と板鳥に乞うて、急いで手帳にこの言葉を書き留めますが、この文章は原作の宮下さん自身が感銘を受け、自分が目指しているのはこういう文章だと手帳に書き留めていたものだったそうです。
宮下さんの小説はほとんどデビュー当時の2007年の『スコーレNo.4』を文庫本で読んだっきりでしたが、自分が目指すものに向かって、コツコツと書き続けて、本屋大賞を受賞するような作品を書き上げるようになられたんだなって感慨深く思いました。原作もぜひ読んでみたいと思います。


私もコツコツと頑張ろう。
いい映画に出会えて良かったです。




こちらの、監督と出演者さんたちの制作秘話も興味深いです。





 







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