23年前、インド

インドに行ったのはもう23年も前だった。

高校時代の友人Kに聞いたところ23年前だと言う。それからいろいろあったのでそれ位は経つかもしれないと思っていたらやっぱりだった。



発端はKがインド映画が見たいと言い出したことだった。気が変わる前にと急いで航空券を予約し、日本武道館の近くの方にあったインド大使館でビザを取った。飛行機に乗るまではかなり短かったはずで、年末に飛行機をとったので正月明けの飛行機でたしか1週間とか10日間の短い旅行になった。


デリーの空港はちょっと暗くてガランとしていた。そこからどうしてデリーの街へ出たのだっけ?　バスだったろうか?　

デリーの街は思ったよりずっと寒かった。あまり良くない安ホテルはやはりガランとした部屋で寒い。仕方なく街で山積みになって売られている大きな布を1人1枚買った。それからは毎日それにくるまって寝た。それでも夜は寒かった。暑くはないせいか噂に聞いていたように臭い街ではなかった。

デリーには何しろ人がたくさんいた。日中は広い道路でもアスファルトの舗装が見えない位にいた。その人の川の中に牛の上半分が見える。水牛が沼地に入って植物の根を食べている光景に似ているが水の代わりに人がいた。


商店とか街は以外に普通だった。普通の個人商店がずらずらと並んであったし裏通りは普通に子供が遊んでいたり食べ物屋さんがあったりいろいろ。困ったのはトイレだけ。公衆トイレは汚いけれどあって、溝が前から後ろに掘ってあるところに人がずらずらと並ぶ感じのもの。それでも隣との間に仕切板があるのは助かった。

インドの人はとても親切だった。怖い感じもほとんどしなかった。

夜になってくると通りの人ごみは消えて無くなった。そうすると昼間にもいたはずの牛が実はその何倍もたくさんいたのだとわかってびっくりした。夜には昼間とは違った夜店が出た。屋台の食べ物屋さんがいくつも出た。大皿にいろいろな肉が乗っていてそれがひな壇のように積み上げられている。そこから選んで盛ってもらう。

最上段には羊の白い脳味噌が数個、切られない状態で標本のように乗っていた。

もちろんせっかくなのでそれを注文してみたら以外に美味いことが判明した。白子と言えば白子だ。ただ、インドでは盛られる量が多いのでいくら美味くても飽きる。


食べ物で失敗したのはまさにその量の多さ。ある食堂で数品注文したら平たい金属の大皿になみなみと入れてくれたので結局食べきれずに残してしまった。そんなに食べるのか、と周囲の注目の的になってしまった。



目的の映画だけれど、これはちゃんと1本見られた。ものすごい長い映画で学園物が最後はアクション映画になって終わった。途中で休憩が入ったり、映画館に入るのに半地下の倉庫に荷物を預ける必要があったり。

ニューデリー駅近くの小さなホテルでそこに住んでいた家族にお茶を煎れてもらった。その人はシーラ・カノジアって名前だったと思う。社会保険事務所か何かそう言うところで働いていると言っていた。子供が2人いた。そのホテルから外を見るとどこまでもどこまでも同じような街の建物が見えてたまに電線を伝ってサルが移動していた。



やはり下痢はした。あの時から下痢をすると水のような便が出るし臭いも変わった。腸内の細菌がインドで変わったのだろうか。23年経った今でも、その子孫を飼っているのかどうか、それはわからないが。


ガンジーのお墓に行った時、カーストのような階層とか差別のような状態はそれまで良くないと単純に思っていたのが、ここにはそれが必要なのだな、とわかった。どれだけ自分が単純にしか考えないかを思い知らされた。



あれから23年、インドもだいぶ変わっただろう。デリーから空港へ向かうバスターミナルにはインドの現在の人口をカウントする表示が出ていた。本当にきちんとカウントされているとは思わないが、今もあれはカウントしているのだろうか?　そのうちまた行ってみたいと思う。今度はもっとずっと長く、住むほど長くインドを見て見たい。


あの時、こんなにインドの人が多く住むマレーシアに自分が住むなんて、想像もしていなかったなあ。