-畑沢通信-

 尾花沢市「畑沢」地区について、情報の発信と収集を行います。思い出話、現況、自然、歴史、行事、今後の希望等々です。

「金鳥」の伝説

2013-07-23 18:17:52 | 伝説

 今回は、畑沢の岡田沢に伝わる伝説です。岡田沢は、下畑沢の東側にあります。「おばなざわの地名考察」によりますと、「岡(おか)」は、周囲よりも一段小高い地形を言うそうです。岡田沢とは、小高いところに田んぼがある沢ということでしょう。実際、岡田沢は、千鳥川の河岸段丘にあり、沢の西端には1.5mほどの段差があります。畑沢全体が山間の傾斜地ですから、河岸段丘の発達は乏しいのですが、唯一、千鳥川の最下流部に近い岡田沢にだけ、河岸段丘が見られます。

 さて、今回は尾花沢高校が昭和41年に発行した「尾花沢伝説集」から、「金鳥」の伝説を紹介します。なお、「きんちょう」と読むのか、「きんのとり」と読むのかは確認していません。

 

-金鳥- (以下は原文のままです。)

 岡田沢には金鳥二羽と朱漆一樽埋められてある。

 昔、岡田沢に大長者が住んでいて、そのころに埋めたのである。その場所は一番早く朝日が当たり、また一番遅く迄夕日が映え、三ツ葉木を目じるしに植えてある。夜になるとその金の小鳥が出たい出たいと啼くそうである。

 

 短い伝説です。金の鳥は軍資金、漆は武具作製の材料と仮定して、素人は自由な想像をします。時は戦国、いつ敵が攻めてくるかもしれない物騒な世の中です。もしものために、畑沢を本拠地とする豪族が、岡田沢に隠しました。岡田沢の奥へ進むと、隣村の細野に抜ける道があります。敵に攻められて撤退する時は、この道を抜けることができます。一番、早く朝日が当たって一番遅くまで夕日が当たるのは、峠のところです。峠に隠せば畑沢にも細野にも下ればよいので、運搬が楽です。そのような準備をしていたのですが、やがて延沢氏の統治になり、さらに最上藩が廃藩になるに及んで延沢氏もなくなり、この地で戦の準備をする必要がなくなりました。そこで、宝の持ち腐れで悔しい気持ちを「小鳥が出たい出たい」と表現しました。

 ただ気になるのは、「大長者」です。この場所は、背炙り古道へ向う畑沢の入口に近いところです。もしかしたら、峠の荷役で財を成した長者が出たのかもしれません。畑沢の昔を見ると、大金持ちがたびたび出ているようです。これらは、背炙り古道との関係を疑いたいのですが、とんと手がかりはありません。

 ところで、全く伝説とは関係ないお話ですが、4月に紹介した「ツヅラ貝(マツカサガイ)」は、この岡田沢に生息していたそうです。今も生存していれば、私にとっては金鳥です。



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