昨年夏から5回にわたって岡山の吉備路文学館でおこなってきた短歌ワークショップ「31文字の私に出会う」第2期(主催:NPO法人アートファーム)の記念冊子が完成しました。第1期から引き続き参加してくださった方や生まれてはじめて短歌をつくったという方をふくめ、受講生は十代から八十代までの13名の皆さん。記念冊子のタイトル「メランジェ」はフランス語で「混ぜたもの」というような意味で、皆でアイデアを出しあってこれに決めました。冊子の内容は、受講生の皆さんの15首連作とエッセイです(私も15首を寄せています)。講座、あるいは記念冊子「メランジェ」に興味を持たれた方は気軽にご連絡ください。1冊お送りいたします。
以下、受講生の皆さんの連作から1首ずつ紹介します。
***
一年後の自分に電話してみたい一年後鳴る電話いやだな/秋山享祐
柔らかな言葉をくれる時でさえ私の鼻は冷たいまんま/市美穂
真っ白い三日月の空は君のことが見えるだろうか 紅茶が熱い/岡桃代
他人とはどのへんまでを言うのだろう父を横目に噛み切るスルメ/岸和秀
寒からう川面に浮かぶ鴨たちは手毬のごとく丸まりて漂ふ/高塚啓子
つりさうな首すぢ二本で支へてる作り笑ひでけづれたゑくぼ/土井康司
レポートの提出期限 宇宙にて枝毛をちぎる あと12分/西川塔子
金属の雲の球面に映り込むほんとうの雲すこし歪んで/ぱいんぐりん
猫ひろう、ようにあたたかい朝だった 慣れた手つきで巻くたまごやき/長谷川麟
病床についてる君の口元に泣きながらはこぶ冷ましたたこ焼き/福山大介
六十年生きればいろいろありまして固き花梨に気合の包丁/藤井弘子
ニンジンが勝手口から逃げたのも月のウサギの計画のうち/村上航
文庫本のページなかなか捲れない指先にまづ冬は来てゐる/山口智子
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます