矢口記念大森ユニオン歯科

矢口記念大森ユニオン歯科 院長が綴る、ブログです。

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長持ちする入れ歯が歯と咬合を守る

2014-06-02 09:25:57 | 歯科

前回、入れ歯がどれくらい長持ちするかについて考えました。入れ歯自体の耐久性や寿命だけではなく、歯の病気や寿命に大きく影響され、さらに人の老化と死とも密接な関係があるとお話ししました。実際に多くの方が使っている入れ歯のほとんどは、長持ちすることよりも機能の回復や外観の回復を優先していると言えるものです。ですから、入れ歯を作り変える毎に自分の歯も失われて、次第に大きな入れ歯を入れるようになる、という経験をされる方が多くなるのです。“入れ歯で噛めない”という感覚は、失った歯の本数の多さよりも、残っている自分の歯同士が上下で咬み合っているか否かが重要です。上下の自分の歯同士の咬合を失った状態を「すれ違い咬合」と呼びますが、それまで入れ歯で噛めていた人でも、すれ違い咬合になると“入れ歯で噛めなくなった”という訴えが急に多くなります。すれ違い咬合の予防と、すれ違い咬合対策の義歯設計が重要な所以です。
 長持ちする入れ歯に対する私の目標は、金属床義歯であれば最低でも10年、それをクリアできれば20年、さらに30年と目標を伸ばして来ました。現在約40年の臨床経験において、37~38年間最初にお作りした一つの義歯を使い続けている患者さんも経験しています。こういう方は、義歯を入れた後自分の歯を失うことが非常に少ない場合と、失っても義歯を作り変えることのない設計の義歯になっている場合があります。歯周病の歯を持つ場合を例に説明すると、歯周病でグラグラする歯を義歯が固定して、咬む力を全体に分散させ、弱った歯を守る効果を発揮できれば、義歯を入れた後抜歯をすることなく長く安定して噛めるという結果が得られます。一方、義歯を入れた後も歯周病が進んで、失う歯が出た場合であっても、そこで新たな義歯を製作するのではなく、作り変える必要のない設計にしておけば、失った歯の部分的修理だけでその義歯は使い続けることができます。
 歯を守りながら10年、20年、30年、40年と長く使い続けられる耐久性と、たとえ歯を失った場合でも部分的修理で義歯をさらに使い続けられる設計を備えた義歯は、金属構造義歯金属リテーナー義歯になります。金属構造義歯は、金属床義歯の持つ構造的な弱点を改善し、強度と耐久性を出来るだけ向上させた設計で、フレームワークのスケルトン構造に、二重構造を典型とする立体構造を持っています(下図)。

金属二重構造のフレームワーク:剛性を高め、機能性および耐久性の向上につながる

これが義歯の剛性を飛躍的に高め、たわみを抑えることで義歯の機能性を高めると共に、破折強度と耐久性を大幅に向上させるのです。しかし、金属構造義歯の概念は、欠損補綴としての部分床義歯(パーシャルデンチャー)の中で育まれたため、支台装置や連結装置には従来のクラスプやバーなどが用いられる設計もあります(下図)。

クラスプとバーを用いた金属構造義歯:支台歯を失うと継続使用が困難であり、長期使用を目指す設計とは言い難い。

極端な例では、上図のような下顎の両側遊離端義歯に支台装置は緩圧型のRPIバークラスプという設計も生まれてしまいます。
 一方、金属リテーナー義歯は、咬合を長期間保持するオクルージョンリテーナーとして機能することを意図している点が金属構造義歯という概念とは異なりますが、義歯としての基本的構造設計は共通です。それは長期間使用できる強度、耐久性、耐摩耗性を考慮した設計になるからです。支台装置はキャップクラスプが標準となり、下顎両側遊離端義歯の例では、二重構造は欠損部のスケルトン構造だけでなく、上部は残存歯の連続切縁レストと下部はリンガルバーの併用といった二重構造を歯列弓の全体に設計します(下図)。

金属リテーナー義歯:二重構造は欠損部だけでなく、連続切縁レストとリンガルバーの併用などの立体構造を歯列弓の全体に設計する

上顎の金属リテーナー義歯:支台装置は臼歯部のキャップクラスプで、強固な2次固定効果を発揮する

 最後に、重度の歯周病で動揺する全部の歯を固定しながら、機能を続けて10年以上歯と咬合を守っているチタン製の金属リテーナー義歯を紹介します。将来いつ動揺歯が脱落しても、増歯修理は容易に行える設計になっており、最終的には口蓋床の追加修理を行えば全部床義歯として使用できると考えています。

上顎前歯4本と左右の第2大臼歯の合計6歯は既に喪失していた。

上顎に製作した金属リテーナー義歯; チタン製で窒化処理を施したため金色を呈する

リテーナー義歯の俯瞰図 キャップクラスプが動揺歯を固定しながら機能している

 

 

 

 

 

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