矢口記念大森ユニオン歯科

矢口記念大森ユニオン歯科 院長が綴る、ブログです。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

咬合崩壊病は歯垢病の進行形

2014-03-19 12:07:32 | 歯科

2.咬合崩壊病(症候群)について
虫歯や歯周病(歯垢病)が進行すると、歯を喪失して咬合が崩壊する.

1)咬合崩壊病(症候群)とは
 歯冠の一部あるいは歯根を含めた歯の全体を喪失し,上下の健康な天然歯による噛み合わせを失った状態とそこから生ずる諸症状を包めた概念.

①② 歯垢病の進行と共に咬合崩壊病も進行する.しかし、初期には咬合崩壊の自覚症状がない.また、歯ぎしりや食いしばりによる歯の摩耗や破折など、歯垢病以外の原因によっても咬合崩壊病は進行する.
③④ 歯の治療も要注意である.歯を削る、抜く、という処置は咬合崩壊に加担する一方で、詰める、被せる、入れ歯を入れる処置は咬合(咬み合せ)を修復し、回復する処置である.しかし、適切に咬合再建が行われたとしても、元の天然歯による健康な噛み合せに完全に戻すことはできないことを銘記する必要がある.また、人工物による咬合再建治療には寿命があり、元々ある歯垢病も更に進行する可能性がある.将来必ず更なる咬合崩壊に遭遇する可能性があると思わなければならない.
⑤⑥ また、長い間には歯は徐々に動いて位置を変化させる.抜けた歯を放置して、嚙みやすい片側だけで噛んでいたり、頬杖を付く癖があるなど、いつも片寄った力が掛かっているとそれだけ歯は動きやすくなり、結果的に咬み合わせを崩壊させることにつながる.
⑦まれではあるが、顎関節症の中には咬合関係を狂わせる程の顎関節部の大きな変化を伴う場合がある.
⑧咬合異常感の患者は、通常の咬合調整や補綴処置では訴えている問題の根本的な解決には繋がらないので、安易に咬合に手を付けると失敗する.
いずれにしても、咬合崩壊の初期には「病」というほどの認識はない.咬合崩壊病というほどに自覚症状を伴って明らかになるのは,欠損補綴の中でも義歯(=取り外し式の入れ歯)を上下顎に必要とする段階である.すれ違い咬合(上下顎に歯はあるが、その歯同士では咬み合わない状態)になると、患者さんはもちろん、歯科医師も難しくて苦労することが多い.
同じ補綴処置でもクラウンやブリッジなど固定式の補綴装置で咬合回復処置を受けている時には、咬合が崩壊しているという自覚は無い.咀嚼障害,発音障害,嚥下障害,審美障害など,補綴診療の目的と言われる障害は咬合崩壊病の進行により発症したものである.
咬合崩壊病には歯垢病の進行に伴うむし歯(齲蝕)型の咬合崩壊,歯周病型の咬合崩壊があり、他に歯ぎしり型,食いしばり型の咬合崩壊があり,それらの混合型がある.顎関節症や咬合異常感を伴う場合もある.

2)すれ違い咬合
 上下顎に歯はあるが、その歯同士では咬み合わない状態

すれ違い咬合の一例  虫歯と歯周病で多数歯が抜歯された状態.
 虫蝕と歯周病の病名は消えても、治ったわけではない.歯垢病は残った歯を中心に進行を続ける上、咬合崩壊病が一気に姿を現したことが明らかである.
しかも、すれ違い咬合は、咬合崩壊のピーク(極致)に位置する.
 咬合崩壊病の中でも、特に重要な概念としてすれ違い咬合がある.すれ違い咬合とは上下顎に歯はあるが、その歯同士では咬み合わない状態であり、咬合崩壊の程度が最も甚だしい状態を意味している.義歯を装着しても、咬合のバランスが取りにくく、具合よく噛めないという難かしさが際立ってくる.
 1歯欠損から無歯顎に至る欠損歯列と咬合関係の組合せは、40億通りを越える天文学的数値にのぼるが,これらは見方を変えれば歯垢病とそれに伴って進行する咬合崩壊病の進行過程を示しており,すれ違い咬合に至って咬合崩壊はピークに達する.その後は少数歯残存状態を経て無歯顎に至るが,咬合崩壊病としての諸症状はむしろ軽減されてくる場合が多い

(歯科疾患の構造図を参照).

3)咬合崩壊病の診断
 歯垢病が進行して歯列の欠損が生じた段階は,咬合崩壊が「病」として目に見える状態になった(顕在化した)と言える.それ以前は,1歯毎の咬合崩壊の潜在的原因と進行程度を診断する指標として,C0~4,P1~3はそのまま意味を持っている.欠損が生じてからは,欠損歯数と歯式に加えて,補綴領域で使われている欠損分類(例えばKennedy分類)や咬合を加味した分類(例えばEichnerの分類)などを併記して示すことにより診断は可能であるが,必要ならばさらにすれ違い咬合の分類など、付加的分類を加えてもよい.
 診断の記載例:咬合崩壊Caries型 上顎6歯欠損765|567 KennedyⅠ級,
 下顎Perio.型 6歯欠損 321|123 KennedyⅣ級,Eichner B2.前後すれ違い.

4)咬合崩壊病の治療方針
 第1に、既に崩壊した咬合をそれ以上の大きな崩壊に導かないように食い止めることである.そのためには更に歯を失わないことが根本的解決になる.したがって,咬合崩壊の原因が何であるのかという診断と,その原因として最も高頻度に見られる歯垢病をコントロールすることが何よりも重要である.
 第2に,崩壊した咬合の再建と維持をはかることである.すれ違い咬合の過酷な咬合条件にも耐えうる強固な構造と耐久性は,咬合崩壊を食い止める補綴装置(咬合保持装置)の設計が必要である.
 ここで強調しておかなければならないことは,一般的な部分入れ歯(部分床義歯)の設計では咬合崩壊病の進行を止められないということである.従来の部分床義歯補綴の目標には,「歯列の欠損により生じた機能障害と審美障害を改善し,その状態を出来るだけ長く維持することである.」とある.しかし,出来るだけ長くというのを少なくとも10年、あるいはそれ以上20年30年とするならば、この目標を達成できる部分床義歯の設計はほとんど行なわれていないと言える.特に、健康保険では使用金属や設計に限界があり、十分な強度と耐久性を備えた義歯を製作することはできない.

 これを解決する義歯の設計、金属構造義歯、リテーナー義歯については、次回にお話ししたい.

 

コメント   この記事についてブログを書く
« 「歯垢病」と「咬合崩壊病」... | トップ | 入れ歯はどれくらい長持ちす... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

歯科」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事