矢口記念大森ユニオン歯科

矢口記念大森ユニオン歯科 院長が綴る、ブログです。

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正しい入れ歯の知識

2020-06-11 10:59:45 | 歯科

ここでは、正しい入れ歯の知識や使い方、手入れの仕方などについて順番に解説して行きます。

1)入れ歯(義歯)の種類と知識

(1)固定性義歯と可撤(カテツ)性義歯

義歯は大別すると「固定性義歯」と「可撤性義歯」の二つがあります。固定性義歯は、一般にブリッジと呼ばれます。歯にセメントで固定してしまうので、患者さんが自分で取り外すことはできません。歯と歯肉の健康を守るためには、ブリッジの支台になる歯の根元や橋の下側もきちんと歯磨き(プラークコントロール)することが重要です。普通の歯ブラシのほかに、歯間ブラシやフロスなどを使う場合もありますから、担当医や歯科衛生士の指導を受けて正しく行いましょう。

可撤性義歯の可撤(カテツ)とは、取り外しができるという意味です。一般に入れ歯といえば患者さんがご自分で取り外しができる可撤性義歯を指しますが、特殊なものとしては患者さんは外せずに歯科医師が外して調整する術者可撤式の義歯もあります。

入れ歯には、部分入れ歯と総入れ歯があります。部分入れ歯を専門用語では、パーシャルデンチャー部分床義歯、局部床義歯、などと呼ばれます。部分入れ歯には一本の歯が失われた場合から、最後の一本の歯が残る場合まで、非常に多くの類型があり、しかも上顎と下顎の咬み合わせの違いまで入れると、その場合分けの数は何と40億を超えることになります。千差万別どころの話ではありません。一つひとつの入れ歯の形や咬み合わせの違いが、その入れ歯の取り扱いや清掃においても画一的にはできない特徴や複雑さを生んでいるのです。自分の入れ歯について、それぞれ歯科医院で個別指導を受ける必要があります。

一方、総入れ歯は一顎のすべての歯を失った場合に用いられる可撤性義歯です。すなわち、上顎の総入れ歯、下顎の総入れ歯、そして上下顎の総入れ歯の三種類があります。専門用語では、コンプリートデンチャー、全部床義歯、総義歯、などと呼ばれます。

 

 

 

 

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3周年を過ぎました。早いものですね!

2016-03-31 14:52:36 | 歯科

大森ユニオン歯科を開設して早くも丸3年が過ぎました。お陰様でつぶれることなく継続できていることを皆様に感謝申し上げます。
 そればかりでなく、著書「歯の喪失という生涯学習-立正安口腔論」とDVD「リテーナー義歯の臨床~歯を抜かずに咬合を保持する!咬合補綴の実際~」を世に出すことができました。これらは、図らずも私の45年にわたる歯科補綴臨床に対する考え方の集大成であり、DVDはその臨床テクニックの一部を映像で紹介している内容です。書物は、歯と咬み合わせの健康を守るための話を中心に、食育や健康体操や心と精神の健康、幸福へと話が展開していきます。一般の方から専門家まで幅広い読者層を念頭に置いて書きましたので、読んでいただくと随所に参考になるところが必ず出てくると思います。一方、私自身の生涯学習という意味もありますので、正直多少分かりにくい難しいところ(仏教関連など)もあるかと思いますが、その点はご容赦ください。
 ご興味をお持ちの方は、一般書店またはインターネットの書店からご注文いただくことができますので、是非お読みください。

 

DVD「リテーナー義歯の臨床 ~歯を抜かずに咬合を保持する!咬合補綴の実際~」

ジャパンライム株式会社 株式会社ラスターテック のホームページから、お求め戴けます。

 

耕書堂 岩下書店 書籍「歯の喪失という生涯学習―立正安口腔論」

Amazon 楽天ブックス TSUTAYA Online などからお求め戴けます。

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病葉(わくらば)のいのち

2014-07-31 17:55:55 | 歯科以外

 7月の連休に94歳になる母を連れて散歩に出かけた。猛暑から逃れる為でもあり、足腰の衰えを少しでも防ぐ為でもある。山中湖畔に三島由紀夫・徳富蘇峰の文学館があり、せせらぎや木漏れ日の中を文学の小路が廻っていて、とても気持ちよく歩くことができる。所々に富士山や山中湖にゆかりのある文人達の句碑や歌碑が置かれていて、句や詩歌を楽しむこともできる。長い距離を一気に歩けない母には足休めにもなり都合が良い。その中に富安風生の俳句の館「風生庵」が比較的最近出来たようで、古民家を移築改装した展示館になっていた。長い縁側に腰を下ろしてしばし休憩した。

木戸や長い縁側は綺麗な木目が活かされている。縁側のある古民家の造りは、家の内と外の隔てを全く感じさせないから不思議だ。縁側に座っている心地よさは、空間的にそのまま内と外とがつながっていることもあるが、散策してきた森の樹木と、かつてその樹木であった木材で作られた家の、過去から現在の時間的な調和というべきものもある。その縁側は美しい木目を見せている・・・つまり木という素材とその使い方(設計)も重要なのだと思う。これも日本人の知恵であり、日本の歴史と文化の成せる凄技(スゴワザ)と言って良いのだろう。

ここまで歩いてくる途中で、いろいろな落ち葉の中にほとんど葉脈だけになりかけている一枚が目に止まった。思わず手にとって見ると細かな網目模様が実に美しい。朽ち果てて土に戻る過程にこれほど美しい姿をみせる時があるとは、正に自然の妙としか言い様がない。比較のために黄色く色の変わっただけのものも一枚拾って、二枚一緒に持ち歩いていた。

 

 

そして、風生庵の縁側に腰を下ろした時に、二枚の落ち葉も一緒に何気なく縁側に置いた。それを見た時に、また私は驚かされた。次の写真である。自然の妙に偶然が重なった実に不思議な写真になっている。一種のだまし絵とでも言うのであろうか。だまし絵という表現は相応しくないが、木の葉と縁側の板の年輪が区別できない程見事に調和して溶け込んでしまっている。黄色く変色したもう一枚の落ち葉も、木の命の移ろいと調和に十分役割を果たしていると思う。

 拾った落ち葉を病葉(わくらば)と言ってよいのかどうか定かではないが、命の移ろいを感じさせる言葉なので少し考えてみることにする。 

病葉や大地に何の病ある         虚子
わくら葉のしんぼうづよくはなかりけり  一茶

という句を見つけた。私としては、これ程の美しさや驚きを与えてくれるのであるから、

病葉や何の病もなかりけり  
わくら葉のけっこうしんぼうづよいかも

とでも言いたくなる命の輝きがある。 

病葉や病あるとも輝けり
病葉や大地に帰る命かな

古民家の縁側という木の日本建築の持つ時間的、空間的凄技の中に、私が偶然持ち込んだ病葉であったからこそ、同じ木の葉が見事に調和して、その命の一瞬の輝きを見ることが出来たのだと思う。

 

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長持ちする入れ歯が歯と咬合を守る

2014-06-02 09:25:57 | 歯科

前回、入れ歯がどれくらい長持ちするかについて考えました。入れ歯自体の耐久性や寿命だけではなく、歯の病気や寿命に大きく影響され、さらに人の老化と死とも密接な関係があるとお話ししました。実際に多くの方が使っている入れ歯のほとんどは、長持ちすることよりも機能の回復や外観の回復を優先していると言えるものです。ですから、入れ歯を作り変える毎に自分の歯も失われて、次第に大きな入れ歯を入れるようになる、という経験をされる方が多くなるのです。“入れ歯で噛めない”という感覚は、失った歯の本数の多さよりも、残っている自分の歯同士が上下で咬み合っているか否かが重要です。上下の自分の歯同士の咬合を失った状態を「すれ違い咬合」と呼びますが、それまで入れ歯で噛めていた人でも、すれ違い咬合になると“入れ歯で噛めなくなった”という訴えが急に多くなります。すれ違い咬合の予防と、すれ違い咬合対策の義歯設計が重要な所以です。
 長持ちする入れ歯に対する私の目標は、金属床義歯であれば最低でも10年、それをクリアできれば20年、さらに30年と目標を伸ばして来ました。現在約40年の臨床経験において、37~38年間最初にお作りした一つの義歯を使い続けている患者さんも経験しています。こういう方は、義歯を入れた後自分の歯を失うことが非常に少ない場合と、失っても義歯を作り変えることのない設計の義歯になっている場合があります。歯周病の歯を持つ場合を例に説明すると、歯周病でグラグラする歯を義歯が固定して、咬む力を全体に分散させ、弱った歯を守る効果を発揮できれば、義歯を入れた後抜歯をすることなく長く安定して噛めるという結果が得られます。一方、義歯を入れた後も歯周病が進んで、失う歯が出た場合であっても、そこで新たな義歯を製作するのではなく、作り変える必要のない設計にしておけば、失った歯の部分的修理だけでその義歯は使い続けることができます。
 歯を守りながら10年、20年、30年、40年と長く使い続けられる耐久性と、たとえ歯を失った場合でも部分的修理で義歯をさらに使い続けられる設計を備えた義歯は、金属構造義歯金属リテーナー義歯になります。金属構造義歯は、金属床義歯の持つ構造的な弱点を改善し、強度と耐久性を出来るだけ向上させた設計で、フレームワークのスケルトン構造に、二重構造を典型とする立体構造を持っています(下図)。

金属二重構造のフレームワーク:剛性を高め、機能性および耐久性の向上につながる

これが義歯の剛性を飛躍的に高め、たわみを抑えることで義歯の機能性を高めると共に、破折強度と耐久性を大幅に向上させるのです。しかし、金属構造義歯の概念は、欠損補綴としての部分床義歯(パーシャルデンチャー)の中で育まれたため、支台装置や連結装置には従来のクラスプやバーなどが用いられる設計もあります(下図)。

クラスプとバーを用いた金属構造義歯:支台歯を失うと継続使用が困難であり、長期使用を目指す設計とは言い難い。

極端な例では、上図のような下顎の両側遊離端義歯に支台装置は緩圧型のRPIバークラスプという設計も生まれてしまいます。
 一方、金属リテーナー義歯は、咬合を長期間保持するオクルージョンリテーナーとして機能することを意図している点が金属構造義歯という概念とは異なりますが、義歯としての基本的構造設計は共通です。それは長期間使用できる強度、耐久性、耐摩耗性を考慮した設計になるからです。支台装置はキャップクラスプが標準となり、下顎両側遊離端義歯の例では、二重構造は欠損部のスケルトン構造だけでなく、上部は残存歯の連続切縁レストと下部はリンガルバーの併用といった二重構造を歯列弓の全体に設計します(下図)。

金属リテーナー義歯:二重構造は欠損部だけでなく、連続切縁レストとリンガルバーの併用などの立体構造を歯列弓の全体に設計する

上顎の金属リテーナー義歯:支台装置は臼歯部のキャップクラスプで、強固な2次固定効果を発揮する

 最後に、重度の歯周病で動揺する全部の歯を固定しながら、機能を続けて10年以上歯と咬合を守っているチタン製の金属リテーナー義歯を紹介します。将来いつ動揺歯が脱落しても、増歯修理は容易に行える設計になっており、最終的には口蓋床の追加修理を行えば全部床義歯として使用できると考えています。

上顎前歯4本と左右の第2大臼歯の合計6歯は既に喪失していた。

上顎に製作した金属リテーナー義歯; チタン製で窒化処理を施したため金色を呈する

リテーナー義歯の俯瞰図 キャップクラスプが動揺歯を固定しながら機能している

 

 

 

 

 

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入れ歯はどれくらい長持ちするか?

2014-05-02 12:11:37 | 歯科

入れ歯にも寿命はありますが、人工的に作られた物としての耐久性という意味だけでなく、歯や歯周組織と一体になって咀嚼や発音などの機能を営むため、歯や歯周組織の変化や寿命に大きく影響されます。そのため、一つの入れ歯を使い続ける期間はそう長くなく、部分入れ歯の場合一般的には約2~3年と考えられています。健康保険制度の規則には、新しい義歯を製作する場合には、旧義歯を6ヶ月以上使用していなければ認められない、いわゆる「6ヶ月規制」があります。裏を返すと6ヶ月経過しないうちに、新義歯製作の保険請求がなされる事例がそれほど多いことを示していると言えます。
 一方、総入れ歯の場合は20年、30年と一つの義歯を長く使っておられる患者さんに出会うことが時々あります。私の経験では102歳の女性で40年以上使用している総義歯を拝見したことがありました。この方は、矢口静雄氏(院長ブログ2013.8月参照)のお母様で「百歳バンザイ」というNHKのテレビ番組に出演されたこともありました。総入れ歯の場合、ご自分の歯が全部ありませんから、変化するのは歯肉(その中の歯槽骨)だけであり、健康でご長寿な場合はその変化も緩やかで少なく、義歯をご自分の体の一部として実に見事に使いこなしているという印象でした。
 義歯の寿命を物としての耐久性という意味から考えると、壊れたりすり減ったりして使えなくなるという問題がありますが、健康保険の義歯では使用材料に制限があり、症例にふさわしい十分な強度や耐久性を与える設計は困難です。修理を何度か繰り返した後、作り変えることになります。義歯が壊れるだけでなく、自分の歯、特に義歯のバネを掛けた歯を虫歯や歯周病で失うことも、義歯を作り変える大きな要因になります。結果として、経年的に次第に喪失する歯の数が増えると共に、作り変える義歯は大きくなって行くことになります。通常、義歯は機能回復することは出来ても、歯を守ることは出来ません。
 健康保険外の、自費の入れ歯には金属床義歯がありますが、金属床義歯だからと言って必ずしも長持ちする入れ歯とは言えません。なぜなら、強度や耐久性ではなく、快適な装着感、味覚、発音、バネの見えない外観の良さなどに付加価値を求める場合も多くあり、金属床義歯イコール丈夫で長持ちする義歯にはなりません。義歯を支える歯を喪失すれば、やはり再製作になる場合もあります。咬み合せの力が強くかかる症例、歯ぎしりや食いしばりの強い症例などでは、さらに金属を多く使用し、構造的にも剛性の高い設計が必要になります。
 私たちは、部分入れ歯でも20年、30年と使い続けても壊れたりすり減って使えなくなることのない義歯を目指して金属構造義歯を開発してきました。金属構造義歯は剛性が高く、機能時の義歯のたわみを最小とすることから、残存歯の動きを押さえ、支台歯を固定する効果があります。そこで、さらに金属構造義歯の設計を発展させ、残された歯を出来るだけ守り、咬合(噛み合せ)を長期間保持する目的の義歯を設計するようになりました。これを金属リテーナー義歯(咬合保持装置)と呼びます(ホームページ診療案内、義歯の種類を参照)。残された歯を長持ちさせることは、義歯が長持ちする可能性を高めることにつながります。
 しかし、口腔内環境において、義歯が虫歯や歯周病と競合しつつ、歯と咬合を出来るだけ長く維持することは、決して容易なことではありません。そこには、人の死に向かって進む加齢変化への対応というさらに大きな問題があるからです。

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