わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?

翻訳もののSF短編を主に,あらすじや感想など、気ままにぼちぼちと書き連ねています。

ジャガンナート―世界の主~カリン・ティドベック

2022-06-06 21:02:59 | 海外SF短編
「偉大なるマザーの中で新しい子供が生まれ、<育児嚢>の天井に突き出したチューブから吐き出された。子供はビシャッという音を立てて生きた肉の寝床に落ちた。パパが足を引きずりながら分娩チューブに近づき、しなびた手に赤ん坊を抱きあげた。」

 パパ曰く、「世界が駄目になったとき、マザーが我らを受け入れてくれた。マザーは守り手、ふるさとである。我らなくしてはマザーは生きられず、また、マザーなくしては我らも生きることはできない。」

 マザーと呼ばれる巨大な生物?の体内で一生を過ごす人間?たち。女性は、腸の蠕動を司る機関や、脚を動かし移動させる機関に配属され、男性は、受精や脳内において、マザーの案内者としての役目を担っています。
 <育児嚢>でパパの世話を受けながら育った子供は、「欠員」状況に応じて、大きくなった順に、各部署へと送り出され、一生、外界を見ることなく、マザーでの体内生活を送っています。

 この物語は、ラクという主人公が、マザーの不調を救おうとして、自らの持ち場を離れ、体内を探っていくところから展開していきます。
 昔、子どものころ、人体の消化器官を表すイメージを示すため、大勢の小人が、口において、食物を切り刻み、胃において、ひしゃくで消化液を注入し、幽門でバルブでもって送り込む量を調整し、小腸・大腸で、栄養分や水分を、それぞれにバケツで運び去るという、一生懸命に働いているというイラストがあったのですが、この物語を読んで、脳裏に蘇りました。

 このような、巨大なイモムシの如く、「肉感」あふれ、湿潤で、豊満で、狭苦しいがそれでいて心地よく安心できる密な肌感覚に満ちた体内環境というのは、異世界の姿として、SFでは、時折見られるものです。(一番近いのが、母~フィリップ・ホセ・ファーマー①でしょう。)
 昆虫的な異質の共生システムは気色悪いのですが、胎内回帰願望もあるために、認めたくないけれど惹きつけられるという、なんとも言い難い魅力があるというのがおもしろいですね。そういう期待を裏切らない作品です。
 
 ただ、本編の「マザー」は、生物的でありながら、機械構造と合体している、不思議な形態をしているようで、必ずしも自然由来のものとも言えません。
 異様なヴィジョンを描くという趣旨のお話だと思いますので、そんなに「整合性」を求めるものではありませんが、「機械」の部分が、私としては気になりまして、存亡の危機に陥った先代の人類?が、子孫が最も生き残れるであろう方法として、「母性」と「肉体性」に重きを置いて、このような生物に似せたシェルターを作ったのかなあとも感じました。特に、言及もないので、生物と機械との合体ということ自体の異様さの効果を出しているだけなのかもしれませんが。

 


























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