温泉クンの旅日記

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遥かなる知床、ウトロ温泉へ(2)

2020-01-26 | 温泉エッセイ
  <遥かなる知床、ウトロ温泉へ(2)>

「まことに申しわけありませんが、当ホテルのチェックイン・タイムは午後3時からとなっております」

 

 とっとと手続きせんかい・・・わたしから放射される無言の<圧>をはね返すように、若鹿のような姿勢のよい青年フロントマンが宣言するようにいう。言ったあと、「教えた通り、それでよし」とばかり頬にかすか笑みを浮かべてこっそり頷く年配支配人を横目でチラリと確認する。ここって公共系だっけか。時計を見ればチェックイン20分前じゃないか、柔軟に対応しろよ。まだいたか、役所から天下った木端役人が。

 

(たしか・・・これって、唐津の国民宿舎以来だなあ・・・)
 ひと昔前の公共系の宿はたいてい、どうにもこうにもまったく融通がきかなかった。
 フロントといえば役所の窓口なみの対応で、チェックインは三時からといったら、これは三時ジャストを意味していてロビーで延々と待たされる。お客のほうが宿で決めたルール(規則、約款)をきっちりと守らねばいけない、そんな雰囲気があったのだ。

 とりあえず、まずは外に出て一服して戻ると、ギャラリースペースに飾ってあるエゾモモンガの写真を見て時間を潰す。

 

 なんとも心が癒されて、腹立ちがしずまっていくようである。

 

 北海道の森に暮らすリス科の小動物。天敵が多くて、危険を感じると天敵が去るまで一、二時間、じっとして動かないそうだ。
 リスも可愛いが、エゾモモンガ、キミ最高に可愛いじゃないか。猫よりも・・・(あわわ、禁句だったぜ。アブナイ危ない)

 

 部屋に案内され着替えると気分直そうと、大浴場に向かった。日帰り入浴も三時スタートだったのを思いだして小走りに急ぐ。

 

  

 掛け湯をして浴槽に身を沈めたが、大好きな温泉でもわたしの逆上状態は一向に収まらない。(悲しいが自分に対してだ)

 

 それはフロントカウンターの壁時計が三時ジャストになり、チェックインしているとまたもひと悶着がおきたのである。
「ご確認ですが、一泊朝食付きの宿泊でよろしかったでしょうか」
 えっ、なにそれ! よろしくないって。 一万四千円も取って二食付きじゃなくて朝食だけなの? ウッソォ―、冗談だろ!
 ごねまくってるうちに、元役人だろう支配人も参戦してきて、予約画面をバーンと見せられるに至って周章狼狽、腰砕けとなり、ついに言い負かされて夕食をプラスした宿泊料金一万八千なにがしに変更することに。外の居酒屋でという選択肢は、着替えが面倒なのと、戻りが登りの坂道であること、知床の夜は冷えるというので捨てた。
 
 平成17年(2005年)に知床が世界遺産登録される前は一万円以下だったはずなのに、高騰して高止まりしたのだろう。一万四千円でも充分すぎるほど高いのに、まったく、一万八千円強は老舗旅館や名門ホテルでも二食付きで探せる宿泊料金だぜ・・・。しかし悪いのはすべて自分の記憶違いと勘違いが原因、なのがとことん悔しい。
 そんなことがあったわけさ。

 
 
(オォ、記憶通りの露天風呂だ!)

 

 西方向であるオホーツク海のほうをみると、ぶ厚い雲の緞帳が空一面にびっしりとなって水平線まで降りている。
 くそっ。これじゃあ、ウトロで夕陽をみるという、長年にわたって引きずるというか温め続けていた肝心のミッションはインポッシブルじゃあないか。


   ― 続く ―


   →「遥かなる知床、ウトロ温泉へ(1)>」の記事はこちら
   →「唐津城」の記事はこちら

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