温泉クンの旅日記

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来集軒 東京・浅草

2009-04-09 | 食べある記
  <来集軒>

 東京の観光名所の浅草の昭和20年代から営む老舗ラーメン店である。芸人、落語
家が通う、有名な店といったほうがいいかもしれない。



「いらっしゃい」
 テーブルにお冷やのコップがトンと置かれる。
「・・・(いかん、そうだった)」
 テニスボールのように打てば返すような注文を待つ、下町の江戸っ子女将(だろ
う)。

 この店には、いいところ年に二、三回くらいしかこない。
 というか、来られないのだ。昼に浅草にくればやはりアルコール優先でまず来ら
れないし、夜に浅草に来たときはもっと優先で、しかもこの店は終わるのが早すぎ
るのである。

 ここで食べよう、と決意したときくらいしか訪れられないのだ。
 だから、「いけねぇ、そうだ、そうだった。この店はいる前に注文決めとけば
よかった!」とあとで思うのだ。
 何にしようか。いつものようにラーメンか。小瓶のビールをつけようか。焼き
そばにしてもいいかな。どうしよう。

「・・・決まったら言ってください!」
 コップを置いたほんの二、三秒後、「イラッ」とした表情をかすかに見せ
「チッ!」と云わんばかりに奥に向かってしまう。

 まあ、どうせたいした客ではないと思われているだろうから、こちらも開き直っ
てゆっくり考える。



 いつもラーメンだけど、チャーシューがイマイチである。たぶん普通のひとは
旨いというのであろうが、チャーシューで旨いと思ったのはただ一軒、銀座和光裏
の「銀座なかよし」だけのわたしである。
 今日も、ひと齧りで残すのも具合が悪い。うーむ。決めた。
 ここまで書くと長いが一瞬である。

「すいません! 小瓶のビールともやしそばを」
 たしか、落語家、こぶ平だったか、ここのもやしそばを絶賛していたのを急に
思い出したのだった。

 小瓶のビールを飲んでいると、客が続々とやってきた。
 女将がお冷やのコップを置くと同時に「ネギ抜きで」とか「海苔抜きで」とか
「麺固めで」とか憎らしいほど反応の早い、いかにも常連らしい客が続き、女将の
対応もいそいそしていかにも嬉しそうである。
(なんだ、チャーシュー抜きもありなんだ)



 運ばれてきた「もやしそば」は絶品であった。ずっとラーメンばかり食べていた
が、これのほうが数倍自分に合っている。
 横浜発祥の「生馬麺(サンマーメン)」と同じといっていい。あんかけだから
なのか、玄妙な味わいである。横浜のものとまったく比べて遜色のない、いい勝負
の旨さである。
 たしかに、こいつにははまりそうだ。
 これからは、間髪入れずに「もやしそば」と、とにかく頼もうと決めたのであっ
た。

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