温泉クンの旅日記

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続・別所温泉(3)

2018-01-21 | 温泉エッセイ
  <続・別所温泉(3)>

 部屋に備え付けのグラスがないので、建前スタイルの湯呑酒をグビリガブリと呑んでいるうちに、ウトウト昼寝する暇もなく夕食の時間になってしまう。
 一階の狭くてシブい食堂に入って名前の書いた紙がある卓に座る。廊下の騒がしい奥座敷にはどうやら団体客が入っているようで賑やかである。



(あれれっ、わりと普通っぽい夕食メニューじゃんか!)
 会津湯野上温泉の蕎麦が売りの温泉宿みたいな安いところに泊まった経験から、宿賃相場の高い別所温泉のなかで、ここも夕食のメインが手打蕎麦だから格安なのだと納得していたのだった。

「お飲み物はどうしましょうか?」
 腰が曲がっていてもまったく不思議でない年頃の超ベテランの仲居さんが訊く。働いているひとに若い人はまったくみかけなかった。古ツワモノばかりだ。
「熱燗って一合ですか」
 そうだ、と答えたので池波正太郎を見習って二合頼む。下地が充分入っていることだし寅さん好みの宿ならやはりお銚子の酒がよく似合う。
 食堂の扉が開いたので、新客をチラリと見るとさきほどの外人であった。ビールを頼むやりとりを聞いて、なんだ日本語ペラペラだったんだとわかり拍子抜けする。
 運ばれてきた蕎麦の量をみてガッカリする。



 それなりの夕食揃えなので文句は言えないが、期待していただけにいかにもこれは少なすぎる。昼に真田の庄で手打蕎麦食いたいのをぐっと思い止めて上田でラーメンにした甲斐がまったくない。

 朝早く、楽しみにしていた別所温泉の外湯へ歩く。
 外湯だが朝は六時から夜は十時まで営業している。寒いので数ある外湯のなかで一番近い「大湯」に決めた。別所で一番大きい外湯で露天風呂もあるのが嬉しい。



 木曾義仲と葵午前がこの地で療養したのに因み、別名「葵の湯」と呼ばれている。
 入浴料は百五十円と格安だ。浴室に入ると、内湯が客でいっぱいだったので、掛け湯だけして外にある露天風呂で時間をつぶしてから空いたころを見計らって内湯へ戻る。
 広めの内湯はうっすら緑がかっていて、硫黄臭もたっぷりの熱めの、頭と身体がしゃきっとする朝にぴったりの湯であった。一瞬だけ内湯がわたしだけになった。どうやら、大湯の周りにある旅館の宿泊客が朝メシ前に入りにきているようだった。シマッタ、時間をちょいとだけずらせばガラガラになるのだ。

 外湯を出て、玄関脇の喫煙所で一服する。ついでに北向観音を詣でようかと思ったが善光寺とセットであることを思いだしやめておく。もうすぐ朝メシの時間だ。
 宿に戻り、大広間で想像したとおりの朝食である。



 和の朝の基本に忠実、まったく文句なしだ。外湯の威力でご飯がすすみ、お代りをしてしまった。
 さて、そろそろ宿泊客のチェックアウトタイムが始まって、出立をゆっくりめと決めたわたしは、夜中と未明に入った後の最後の入浴タイムである。
 独り占めで、内湯ゆっくり、からの露天風呂は昨日よりは熱めで文句なし。



 最後の仕上げに、また内湯をしこたまゆっくりで、〔別所の湯〕を締めたのであった。




  →「続・別所温泉(1)」の記事はこちら
  →「続・別所温泉(2)」の記事はこちら
  →「北向観音」の記事はこちら


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