温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

宮下温泉 栄光館

2014年04月06日 | 福島県
福島県の奥会津地方は、私のfavorite温泉があちこちに点在している名湯の宝庫です。温泉に浸かりたいんだけど、どこにすべきか判断がつかない時には、奥会津を目指せば間違いありません。先日もそんな理由で雪の磐越道を疾走し、温泉をハシゴすべく只見川流域へと向かったのでありました。この日の一軒目は三島町の宮下温泉「栄光荘」です。


 
三島町の県立宮下病院付近に立つ看板から細い路地に入って、ヘアピンカーブで川の方へ下りきった突き当たりに、渋いながらも品の良さが伝わってくるお宿が建っていました。こちらのお宿は界隈の他旅館と較べて比較的早い時間から日帰り入浴を受け付けているので、現地での行動予定に柔軟性が生まれて助かります。



帳場で日帰り入浴をお願いしますと、笑顔で快く受け入れてくださいました。会津の方はみなさん温かい方ばかりですね。館内は綺麗に手入れされており、廊下や柱はよく磨かれていてピカピカです。


 
帳場の左側を進むと、透明のアクリル波板で囲われた渡り廊下に出ます。只見川の川沿いに建つこちらのお宿は2011年の水害で被害を蒙り、一時的な休業に追い込まれたそうですが、この渡り廊下はすっかり新しくなっていますので、営業再開に際して再建されたものと思われます。なおこの廊下にはベンチや自販機などが置かれていますが、廊下自体が二手に分岐しており、右に折れてまっすぐ進んだ突き当たりには離れのお風呂(画像右)がありました。尤も、この時は「女湯」に設定されていましたので、今回は分岐地点から入口を眺めるだけに留めました。


 
渡り廊下を右に折れず、道なりに直進して目の前の引き戸を開けると、展望風呂(男湯)のある棟へと入ります。お花が活けられてる品の良い休憩室を横目にしながら、浴室へと向かいます。


 
脱衣室はいかにも田舎の温泉旅館という感じの、板敷きのちょっと古い実用的な空間なのですが、こちらもお手入れが行き届いており、またこまめな改修も行われているようでして、建物の古さはあまり感じられませんでした。洗面台は2台あり、ドライヤーも用意されているので使い勝手も問題ありません。なお室内の張り紙によれば、宿泊の方の入浴時間は朝5時から夜11時までとなっており、宿泊客は只見川の対岸にある公営旅館の「ふるさと荘」のお風呂も利用可能なんだそうです。ちなみに「ふるさと荘」は以前は三島町直営でしたが、現在は公営でありながら「栄光荘」が実質的な運営を行っており、それゆえ宿泊客は両方のお風呂を利用できるわけです。


 
浴室は只見川に面して3方向が大きなガラス窓となっており、とても明るくて開放的です。また、この窓に面してL字形の浴槽がひとつ据えられており、そのキャパは15~6人といったところです。室内のタイルはしっかり磨かれており、壁の掃除も行き届いているので、室内環境はすこぶる良好です。きちんとしたメンテナンスによって経年劣化を払拭しており、老朽化を言い訳にしないで良い状態を維持していこうとするお宿の姿勢がひしひしと伝わってきます。


 
窓と反対側の壁際には洗い場が配置されており、シャワー付き混合水栓が3基取り付けられていました。
窓外の雪景色の中を只見川が泰然と流れており、川の向こうに聳える山々の稜線も望めます。露天風呂はありませんが、大きな窓から川の流れが一望できますので、室内とはいえ十分な開放感が得られました。


 

窓際の湯口からは絶え間なく源泉が浴槽へと注がれていました。館内において湯使いに関する表示は見当たりませんでしたが、槽内には循環装置の吸引・供給口らしきものは見当たりませんでしたし、源泉供給量と見合った量が排出されていましたから、こうした状況から推測するに、おそらく若干加水した上での放流式ではないかと思われます。この時の湯船は体感で43~4℃となっており、人によってはちょっと熱く感じるかもしれませんが、しっかりかき混ぜれば問題なく入れる湯加減だったように記憶しています。
浴槽内ではお湯に含まれる石灰があちこちに付着しており、浴槽周りに並べられてる石には、ミルフィーユのように層を成した石灰が積み重なって、サルノコシカケのようにコンモリ盛り上がっていました。また槽内にも細かく棘状に石灰がこびりついたり、ステップの表面もボコボコしていたりと、浴槽はすっかり石灰によって分厚く被覆されていたのでした。このようにお湯の濃さがビジュアル面でもはっきりとわかりますね。



お湯は赤み(橙色)を帯びた山吹色に弱く濁っており、湯中では細かい赤茶色の浮遊および沈殿物が沢山あって、お湯をちょっとでも動かすと忽ち大量に舞い上がって濁りを濃くさせます。上画像のように桶で湯船のお湯を救うだけで、たくさんの湯の華をキャッチできちゃいます。この湯の華は入浴中の肌にも付着し、湯上がりにタオルで体を拭ったらタオルがうっすらと赤く染まりました。
こうした見た目から想像できるように、湯面からは鉄の赤錆的な金気の匂いが漂っているとともに、湿った石膏の匂いも一緒になって室内に放たれていました。お湯を口に含んでみますと、薄い塩味や赤錆味に土気味と石膏的甘味、そして炭酸っぽい味も感じられます。湯船の中で肌を擦ると、カルシウムの影響によってキシキシと引っかかる感触があり、硬い感じもあったのですが、湯船から出ると一転してサラサラするのが面白く、お湯の鮮度感の良さも相俟って、力強い温まりと爽快感がいつまでも共存しました。


 
湯船のお湯は浴槽縁の切欠より排水口へと流下しています。なお浴槽のお湯は全量がこの排水口へと流れ込んでおり、洗い場などへの溢れ出しはありません。このため、析出が付着しやすいお湯であるにもかかわらず、浴室の床タイルには温泉成分のこびりつきが見られず、普段からのこまめなメンテナンスの甲斐もあって、綺麗な状態がキープされていました。豪快な掛け流しを演出するためか、湯船から波々と洗い場へ溢れさせているお風呂もありますが、奥会津によく見られるような土類を多く含む重炭酸泉ですと、お湯が空気に触れるとすぐに石灰がこびりついてデコボコになってしまいますから、こちらのように掛け流す量が豊富であっても、あえて床へオーバーフローさせなければ、浴室内は綺麗な状態が保て、入浴客も石灰のデコボコやトゲトゲで痛い思いをせずに済みますね。温泉ファンとしては寧ろデコボコやトゲトゲに嬉しさを感じちゃう悲しい性を有しておりますが、お風呂の品性という側面で考えれば、そうしたものは無い方が良いでしょうし、綺麗な状態を維持することもお宿としてのおもてなしの心でもあるかと思います。

スタッフのみなさんは温かく接してくださり、館内は品が良くて綺麗、お湯のクオリティも良好と、非の打ち所が無い素敵なお宿でした。温泉めぐりをしていると、日帰り入浴のわずかな滞在時間だけでもすっかりその宿のことが気に入って、次回訪問時には宿泊したくなったり、あるいは知り合いに薦めたくなることがありますが、こちらはその好例でした。


第2源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 63.2℃ pH6.8 168L/min(動力揚湯) 溶存物質3709mg/kg 成分総計3924mg/kg
Na+:934.6mg(82.52mval%), Ca++:133.8g(13.56mval%), Mg++:9.8mg, Fe++:0.8mg,
Cl-:908.3mg(46.13mval%), Br-:2.3mg, SO4--:791.9mg(29.69mval%), HCO3-:807.9mg(23.84mval%),
H2SiO3:60.7mg, HBO2:17.0mg, CO2:214.8mg,

JR只見線・会津宮下駅より徒歩7~8分(約700m)
福島県大沼郡三島町大字宮下字塩水4113  地図
0241-52-2636

日帰り入浴8:00~20:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり

私の好み:★★★

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2 コメント

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Unknown (あごちゃん)
2014-04-06 09:32:02
お久し振りです。
相変わらず精力的で感動覚えます。雪が消えて、旅プランだけ先走るんだけと、オススメとはなんかもう、ここ宿泊してみたいなあになりましたよ。
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Unknown (K-I)
2014-04-06 23:45:43
あごちゃんさん、こんばんは。
桜が咲いて雪解けが進むにつれ、旅に出やすくなりますね。とはいえ、先日所用の帰りで新潟県魚沼地方を通り過ぎたのですが、当地はまだまだ雪深く、春の訪れはしばらく先のようでした。会津地方も山間部はまだ雪が残っているようですが、連休辺りには桜も咲きますので、是非お出かけになってみてください。
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