温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

平川温泉

2012年01月14日 | 鹿児島県

旧牧園町の中心部に近く、しかも国道223号線沿いという好立地にもかかわらず、あまりに渋く古ぼけて地味な佇まいゆえに、国道を通行する殆どの方がその存在に気付いていないだろうと思われる温泉銭湯です。初見にもかかわらず私は一発で見つけてしまったのですが、このような温泉を迷わず発見できた自分の嗅覚に、我ながら惚れ惚れしてしまいました。ま、自惚れはともかく、湯屋の屋根瓦に描かれた名前と温泉マークが消えかかった姿は、この温泉の斜陽な状況を表しているかのようです。


こちらが入口側。建物には温泉の名前を示すような表札や看板の類が見当たらず、ここが本当に温泉が疑わしくなりましたが、開きっぱなしの扉の奥には、いかにもお風呂らしい室内が垣間見えたので、不安は確信へと一気に転じました。



湯屋の向かいにあるお豆腐屋さんがこの湯屋を管理しています。こちらも屋号などの看板が出ていないのでわかりにくいのですが、画像手前の小さな建物の方がお豆腐屋さんでして、店内は雑然としていましたが、豆腐や油揚げが陳列されていたので、それで辛うじてお豆腐屋さんなんだと確認することができました。店内にいたニコニコ笑顔のお婆ちゃんに料金を支払います。



湯屋の手前には貯湯タンクが2塔立っており、その下からはポンプの作動音が聞こえてきます。浴室のお湯はここを経由して送られてくるんでしょうね。


 
男女別に分かれた入口には当然扉が取り付けられていますが、上述のようにこの時は男女双方とも開けっ放しで、脱衣室や浴室が丸見えでした。また玄関入ってすぐのところに、炬燵が置かれた番台の跡が残っていました。現在は使わわれていないみたいです。

脱衣場はいかにも昭和の銭湯らしい標準的な構造で、けっこう広い空間が用意されています。床は板の間、壁や天井にはカビの跡やシミが残っちゃっていますが、これらが却って鄙びた良い風情を醸し出しています。


 
浴室も全体的に草臥れていますが、そこには銭湯らしい広々とした空間が展開されていました。この日は私が一番乗りだったようで、先客が入浴したような形跡は見当たりません。よし! まだ誰も入っていない新鮮なお湯を独り占めできるぞ!! 欣喜雀躍して室内へと潜入です。浴室の右手に半円形の浴槽、左手に洗い場が設けられており、カランの数は4基でした。



あちこちが老朽化しているお風呂ですが、その草臥れ具合に妥協せずにちゃんとお手入れされており、桶も腰掛もきちんと並べられていました。整頓を欠かしていないことの他、安物のプラスチックではなく、檜の製品を使っているところに、温泉のオーナーさんの矜持が伝わってきます。



脱衣所の方を振り返ってみます。水色に塗られた木の内壁ですが、常に湯気で湿ってふやけるそのペンキは経年劣化で剥げており、これが当浴場の背負ってきた長年の歴史を物静かに語っているようでもありました。


 
半円状の浴槽は10人以上入れそうな大きさです。浴槽はタイル貼りですが底など所々が剥げており、そうした箇所は新たにタイルが貼られることはなく、そのままの状態で使われていました。中央に這わされた湯口のパイプは湯面の下まで伸びており、そこから断続的にドバッドバッと音を立てながら源泉が浴槽へと投入されています。そしてそのお湯は縁から静かにオーバーフローしていました。無色澄明で無臭、ほぼ無味ですが微かにアルカリ性泉的な微収斂があるように感じられました。
ややぬるめの湯加減。体への当たりが柔らかい優しいお湯で、全身をお湯に沈めるとフワっと浮くような感覚に包まれます。いつまでも長湯していたくなる浴感で、ついついまどろんでしまいました。


単純温泉 49.0℃ pH8.2 溶存物質925.0mg/kg 成分総計929.5mg/kg
(昭和53年)

国分・霧島神宮駅・鹿児島空港などからいわさきバスで「堂之下」バス停下車すぐ
鹿児島県霧島市牧園町宿窪田2046-5  地図
0995-76-0096(平川豆腐店)

12:00~21:00
100円
備品類なし

私の好み:★★★

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