温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

伊豆の入れなさそうな温泉たち その1(東伊豆編)

2022年09月03日 | 静岡県
(2021年12月訪問)
常軌を逸した変態温泉マニアには、普通に入れる温泉より、一般的には入れそうにない温泉を見つけて悦に入る傾向があります。数年前までの私もそのような好事家の一人であり、方々から情報を搔き集めたり、得た情報を基に推測することで目的地を特定し、わざわざその現地まで足を運んで、入浴向きではない温泉を見つけては人知れぬ達成感を得ていましたが、日々の仕事の忙しさに行動力を奪われてしまった最近は、のんびり湯あみできる温泉に入り、日々の汗や垢と共に疲労や懊悩をきれいさっぱり洗い流して、日常を忘れながら心身を養生させたいという極めて一般的な温泉利用方法をこよなく愛するようになりました。私も世間の荒波に揉まれることで、ようやく常識人に仲間入りできたようです。
でも、たまに数年前までのどうかしていた志向が頭をもたげることがあり、志向の残滓が、完全な常識人になろうとする私を過去へ引きずり戻そうとすることがあります。数か月前に伊豆へ出かけたときにも、元々は予約していた温泉旅館へ真っ直ぐ向かうつもりだったのですが、封印したはずの宿痾が唐突によみがえってしまい、気づけばあちらこちらと寄り道してマニア的な欲求を満たしていたのでした。
今回はそんな道中で立ち寄った伊豆の入れなさそうな温泉たちをいくつか取り上げます。といっても、何しろ私は最近常識人への道を歩みつつあり、温泉好事家としての性格が弱まりつつあるので、今回取り上げる温泉はいずれもマニア度があまり高くありません。悪しからずご了承ください。

(1)某所 漁港の温泉

伊豆半島東部の某所にある漁港へやってまいりました。


漁港の前を横切る路地を歩いていると・・・


コンクリ擁壁の一部をくり抜いたような感じで作られた洗い場があり、白い発泡スチロールが置かれていました。発泡スチロールにはパイプから水が落とされており、水を満たしたその内部は藻類によって緑色に染まっています。
私は何の予備知識も無くこの場所をたまたま通ったのですが、この様子を目にしたとき、発泡スチロールに注がれているのは単なる水ではないような気がして、これまた偶然持っていた温度計でその水を測ってみますと・・・


42.6℃と表示されました。案の定、温泉だったのです。このお湯を手に取って口に含んでみますと、塩辛さと同時に苦汁の味も感じることができました。いかにもご当地らしい温泉の特徴を有しています。おそらくカルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉かと推測されます。宿泊施設などへ配湯して余ったお湯がこのように使われているのでしょう。さすがに湯沸し器を置けない場所ですから、冬場の洗い物には大いに役立つのではないでしょうか。


(2)某所 謎の露天風呂

上記(1)の漁港から東海岸をちょっと南下して、とある川の河口付近にやってまいりました。
あれ、なんだこれは? 一見すると簡易的に設けられた子供向けプールのように思えますが、訪問したのは12月ですから、この時期に屋外でプールに入るのはあまり考えにくい。実際に最近はあまり使われず放置されているのか、プールの中には落ち葉が溜まっていました。


仮設のようでありながら、意外としっかりした造りをしているこのプールの水温を測ったところ、36℃もありました。プールでこの温度は高すぎますね。つまりこれは露天風呂なのです。


露天風呂には常時お湯が落とされており、湯口の温度は41℃でした。師走の外気で冷やされてしまうために浴槽では36℃まで下がってしまうのでしょうけど、湯口で41℃のお風呂でしたら、内湯ならば39~40℃前後という長湯したくなるような湯加減になるかと思われます。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭。癖が無いさらっとした単純泉です。いかにもご当地らしい泉質といえるでしょう。

この露天風呂についてご近所のおばあちゃんに伺ったところ、当地には元々温泉旅館があったのだけれども、閉館後に解体されて更地になった後、海水浴場客が自由に使えるお風呂を設けようと思い立った土地所有者が、このような露天風呂を設けたんだそうです。温泉旅館があった場所なので、当時から敷かれていた配湯管を活用したのでしょう。おばあちゃんのお話がどれだけ正しいのかはよく分かりませんが、いずれにせよ人間が入るためにこの露天風呂が設けられたことには間違いありません。ただ冬に入るものではなさそうです。


(3)荒磯に落ちる熱湯

さらに伊豆東海岸を南下します。次に紹介する箇所は、一部の野湯マニアに良く知られたところなので、既にご存知の方もいらっしゃるかと思います。当初私はここへ行くつもりは無かったのですが、当日の目的地へ向かう途中でこの付近を通過するため、せっかくの機会だから立ち寄ってみることにしました。
遠回りして防波堤をクリアし、比較的大きな礫がゴロゴロしている波打ち際へとやってきました。東伊豆南部の海岸でしたらどこにでもありそうな光景なのですが、ここで振り返ってみますと・・・


礫や岩の間から湯気が上がっているのがお分かりいただけるかと思います。


礫の間をお湯が流れ・・・


お湯はそのまま相模灘へと消えてゆくのです。


このお湯の温度は62.6℃という高温ですから、直に触ると火傷します。このため当地で野湯を実践なさるマニアの方々は波打ち際でチャレンジするようですが、お湯の量や温度と海水が上手くブレンドされることはなく、熱くなったり冷たくなったりの両極端を行き来するだけで、気持ちの良い湯あみはできそうにありません。


ところでこの熱湯はどこから流れてくるのでしょうか。
波打ち際から海岸沿いの道へ戻って、路傍の側溝を見てみますと、そこから湯気が上がっていますね。


側溝から上がる湯気を追ってゆくと、この温泉櫓にたどり着きました。つまりこの温泉櫓で汲み上げられた温泉のうち、使われない余剰分が側溝を通じて海へ捨てられているわけです。


この地区には他にも上画像のような温泉櫓が複数あり、それぞれで余剰のお湯を捨てていますから、地区全体で海へ放出される温泉の量はそこそこ多いのではないでしょうか。


次回記事では南伊豆と西伊豆で同様な趣きの温泉を取り上げます。

次回に続く



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