温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

馬槽温泉の源泉地帯を歩いていたら…

2019年07月19日 | 台湾
先々月から続けてまいりました台湾シリーズはひとまず今回で一区切りをつけます。ラストは私のちょっとした危ない体験(愚行)を告白し、以て皆様の安全な野湯めぐりにお役立ていただければと思います。
先日の記事で台北市陽明山の野湯「下七股温泉」を取り上げた際、陽明山国家公園エリアでは近年野湯がある場所に対する立ち入りが厳しく規制されるようになったとお伝えしました。現地メディアでも以下のようにニュースで八煙野渓温泉に入ろうとする人たちやそれを取り締まる関係省庁などを取材しています。

揭秘八煙野溪溫泉直擊民眾違法泡湯


無視罰則!八煙野溪太美 民眾私闖挖溫泉



そんな中で台北市と新北市の境界に位置する「下七股温泉」はまだ規制の対象になっていないために、先日拙ブログでご紹介したのですが、単に規制の網から漏れているだけでしょうから、ここもいつ対象になるかわかりません。同じように規制の網から漏れている野湯エリアがもう一つありますので、行ってみることにしました。



その場所とは馬槽温泉の源泉地帯です。陽明山国家公園の真ん中を貫く幹線道路「台2甲線(陽金公路)」を車やバスで走っていると、大きな橋で谷を越える箇所があります。その橋は「馬槽大橋」と称し、橋の上から北側を臨むと彼方に紺碧の北海岸を眺めることができます。



一方、橋の上から南側の山を望むと、凹状に窪んだ谷地の内部にガレと藪がモザイク状に散らばり、あちこちから白い蒸気が上がっているのがわかります。陽明山エリアは全域で地熱活動が盛んですが、この谷もその地熱活動が目に見える形で表れている典型的な場所であり、ここで湧出する温泉は馬槽温泉として付近の温泉施設へ引かれています。
なお谷頭に聳える山を越えた向こう側は拙ブログでも取り上げたことのある冷水坑という場所であり、息を呑む絶景や温泉浴場などが訪れる観光客を楽しませています。



さて私はそんな谷の入口付近へとやってまいりました。立入を禁止する看板が立っていないので、自己責任で奥へ入り、野湯を探してみることにしたのです。谷を流れる川に沿って杣道が続いています。



ぬかるみが続く杣道を進んでゆくと、足元で白濁の温泉が湧出し、小さな湯溜まりを形成していました。こんな湯溜まりがいくつもあるのですが、そのほとんどが小さくてぬるいため、入浴には適していません。来た道を振り返ると「馬槽大橋」が全容を見せていました。



湯溜まり以上にたくさんあるのが火山性ガスの噴出口。噴出箇所の一つ一つにナンバリングされていますので、その全てを監督官庁がチェックしているのでしょう。それぞれの噴出口ではシューシュー音を立てながら、熱くて白い湯気と火山性ガスを噴き上げています。



上画像のように硫黄が黄色い結晶となってしっかりとこびりついている噴出口もあります。



本記事の各画像をご覧になってお気づきかと思いますが、この地熱地帯の谷ではパイプの残骸が無数に転がっており、せっかくの景観を損ねています。言わずもがな温泉を引くために設置され、その源泉が使い物にならなくなって放置されているのでしょうけど、大自然の中で人工物が散乱している光景は、決してほめられたものではありません。一般人の立入を規制するのは理解できますが、こうした一種の産廃の放置も取り締まるべきではないかと思います。

そんなことを考えながら、足元に気を付けつつ、どこか野湯を楽しめそうな場所はないかと谷の中をウロウロしていたら、急に吐き気を催し、気持ちが悪くなって、頭痛や目眩に襲われました。間違いなく硫化水素中毒です。谷に近づいた時には強い硫化水素臭、つまり卵が腐ったような臭いが鼻を突いていましたが、奥へ奥へと進んでゆき、野湯探しに夢中になっているうち、臭いを感じなくなっていました。これは野湯探しに気持ちが奪われていただけではなく、硫化水素濃度が上がって嗅覚脱出が起きていたものと推測されます(濃度が一定以上になると臭いを感じなくなります)。

ネット上で見つけた資料によれば、硫化水素濃度が0.05~0.1ppmで硫化水素独特の臭い(腐敗した卵の臭い)を感じ、50~150ppmまで上がると、今度は一転して嗅覚脱出が起こり、独特の臭気を感じなくなります。更に150~300ppmへ及ぶと流涙・結膜炎・角膜混濁・鼻炎・気管支炎・肺水腫といった中毒症状が発生し、500ppm以上で意識低下そして死亡してしまいます。800 ~1000ppmでしたら一呼吸で即死しちゃうんだとか。
私の場合は、既に嗅覚脱出のラインは超えており、300ppm以下の危険な環境に自ら足を踏み込んでいたものと思われます。症状を自覚した私は、自らの身の危険を感じ、野湯探しはあきらめて、慌ててこの場から脱出し、風通しの良い橋の上でしばらく休んでいました。立入禁止の看板が出ているかいないかではなく、自分の感覚をよく研ぎ澄まして、危険と判断したらその先には入らないという考え方を持つことが重要ですね。温泉マニアのみなさん、特に野湯マニアの皆様。くれぐれも硫化水素中毒には注意しましょう。

こんな自分の失敗談をお話ししたところで今回で台湾シリーズはおしまい。

明日から日本の温泉に戻ります。

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2 コメント

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Unknown (ぬる湯マスター)
2019-07-21 17:39:46
こんばんわ^^。
如何にも本物の源泉掛け流し、と言う感じですが
やはり管理状況は日本とは比べようも無く、、、。
私の記憶ですと、2017年にも万座の源泉にて、
死亡事故があったと思います。硫化水素は危険ですね。
硫黄泉は湯あたりの方も危ないですが、、、^^。
次回より国内営業に戻るとの事なので、
また耳寄りな情報を期待しておりまする~。
Unknown (K-I)
2019-07-23 17:47:23
ぬる湯マスターさん、こんにちは。
台湾の温泉施設は近年かなり良くなっており、素晴らしい施設も多いのですが、客の目が届かないところは、いまだにゴチャゴチャしており、管理状況がいまひとつです。
硫化水素は怖いですね。私は登山をしたり野湯を愉しんだりするので、この手のことには敏感であったはずなのですが、この時はつい油断してしまいました。油断は禁物ですね。

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