日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
このプラットフォーム上で思いついた企画を実行、仮説・検証を行う場。基本ロジック=整理・ソートすることで面白さが増大・拡大
 



著者は、西元まりさん。
1992年からシルク・ドゥ・ソレイユ関連の現地取材をしている方。


前半は東京についに誕生した常設劇場、ZED(ゼッド)にフォーカス。
当ブログでも既に感想をアップしているあのショーである(2008-10-20 シルク・ドゥ・ソレイユ Cirque du Soleil ZED 専用劇場ならではの感動。)
第1章 では、ZED(ゼッド)誕生の経緯、第2章で東京プロジェクトが始動し、シルク・ドゥ・ソレイユとディズニーの業務提携が深まり、オリエンタルランドとのコンタクトの進展状況を紹介しており、興味深い。

ここでは印象に残った部分をメモしておく。

まず、「ライオンズ・デン」と呼ばれる、関係者が集まって観る通し稽古。
ZEDの場合は、2008-07-19に初めてのライオンズ・デンが行われた。
集まるのは、創設者 ギー・ラリベルテ、クリエイティブコンテンツ&新規プロジェクト担当 ジル・サンクロワ、音楽担当 レネ・デュペレなど蒼々たるメンツ。
監督は、映画監督のフランソワ・ジラール。
ここで何回かショーは鍛えられ、2008-8-14にトライアウト公演が始まる。

さて、このプロダクションはどうスタートしたか。
まず、デュズニーがシルクに打診=「ふたつめのショーを作ってほしい」(1作目はオーランドにある「ラ・ヌーバ」)
そこでのシルクのリアクションは、「なら東京だ!」(まあ光栄)

そして交渉の開始は、2003年10月最初頃から。
最初はディズニーが3社をリードして始まり、だんだんとシルクとオリエンタルランドの2社の交渉となった。
お互いのニーズが合致していたこともあって、1年半後には合意に達するというこれほどのプロジェクトにしてはかなり順調だったと言えるのではないか。
ここはもっと突っ込んで読んでみたいところではある。


次の第3章は、シルク・ドゥ・ソレイユ本社はどんなところか、アーティストの集め方、どんな人が働いているかをそこで働く日本人を紹介する中で紹介。
世界のいろいろなショーで活躍している日本人も登場、こんなに日本人のアーティストがいたんだと正直驚き!
またZEDのオーディションも登場し、なかなか普通は知ることのできないシルクの内情がわかる。


第4章からは一転してシルクのグローバル企業としての検証をざっと。
この5年で急成長を遂げたわけや、実験的にサーカス小屋ではなくアリーナ会場で行われる過去なかったパターンの出し物「デリリアム」(初めて知った)
「サルティンバンゴ」もこのようにリアレンジされているとのこと。
こうすることで、より柔軟にショー公演をすることが可能になるという。

また世界的な戦略についてもふれられている。
まずは、アジア戦略。
マカオのニューショー「ザイア」は当然、長期的にプランを練っている中国進出で彼らに与えられたビッグチャンス、2010年のEXPO万博でのカナダ館のディレクション。
これが中国でのビッグバンのきっかけか?!

そして同時にオイルマネーうずまく?中東戦略。
ドバイでは既にショーを単発で実施しているだけでなく、2011年に専用劇場を作ることを2007年5月に発表している。
それだけでなく今年8月に発表されたのが、シルクの持ち株の20%がドバイの投資会社2社に譲渡されたということで、アジア、中東と積極的に拡大していることをよく認識させてもらった。
ラスベガスで一人勝ち状態で満足することなくこれだけ意欲的に拡大できるのも、そのコンテンツ力の強さ故だろうが、全世界に向けるこのパワーに正直驚きである。


最後の第5章は、ここを避けてシルクを語れない点をきっちり説明、好感が持てた。
それは、ケベック州政府が積極的に推進したコンテンツ事業としてのサーカス。
ケベックサーカス学校や、モントリオールのサーカス芸術都市計画TOHU(トーウ)、そして芸術見本市CINARS(シナール)と抜かりない構成。

ということでかなり長いアップになってしまったが、それだけ引っかかる情報が多く含まれているということで、個人的にもふれていないと困るといういくつかのポイントもそれなりに押さえていて、シルクをもっとよく知りたいという人にはお勧めできる1冊。


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