前日から約束してあったHさんに、これから家を出るよと連絡して、どちらからも同じくらいの距離の所にある薮へ出かけた。自転車の前籠に鍬の頭部分を入れて、軒並み家が建ってしまった早朝の町を、ペタルを踏んだ。
六年前句友のHさんが誘ってくれてから、ある年は夫を亡くして、そんな気にはなれずに止め、又その次には彼女が息子さんを亡くして取り止めと、此れで4回目である。
公共の土地で、不文律に解放しているところである。8時前で早いと思っていたら、つるはしを片手にもった男性が、けっこう沢山入ったビニール袋を提げてこちらに向かって下りてくる。「待てずにみんなが取って行くので、からきし無いわ」が挨拶だった。
ほんの2センチくらい頭の先を出しているのを、見つけて掘るのである。一つ掘ったら次を探して歩きまわる私と違ってHさんは、動かずに笹の葉を、はだけては、次のを見つけてをられる、八十三歳の落ち着いた方である。それを見ていたら一つあると横か、縦か筋になってあることがわかった。一時間位居て剥いたら皮ばかりのようなのを九つ(本といえないのが、悲しい)採った。
37年間実家から、毎年筍を送って来ていたが、薮の管理が大変で売ったらしい。通りに面した唐傘屋がこの薮を裏に控えて、材料に竹は伐ってくれるし、何坪かは切開いて番傘や、じゃのめ傘の干し場になっていた。10センチくらい伸びてから慌てて母か私が、掘ってセメント袋に入れて一輪車で運んだりしたことを思い出していた。
Hさんが、良い運動になりましたと言ってカートの袋から、ドリンクをだしてくれたので二人でそれを飲みながら、来年を約して、ベテランの句で
○ 筍にとどめの鍬の傷となる と言われるので、
○ 筍や最後の一撃とどめさす と言って笑った。