田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

とある田舎町の「学校の怪談」 episode 24 砂場のオバケ 麻屋与志夫

2015-04-14 08:30:56 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode 24 砂場のオバケ。
ひどいイジメだった。
だって殺しちゃったんだもの。
「まさか、死ぬとは思わなかった」
なんて、三人ともいってるけど。
うそだ。
何回もあんなイジメをやっていれば、なれてくる。
どこまでやれば、失神する。
これからさきに進めば、死ぬ。
そんなことわかっていたはずだ。
アイツラには快感だった。
イジメラレル生徒には、死の恐怖だった。
アイツラは死の恐怖でクラスを支配していた。
怖くてだれもイケニエの子を助けられなかった。
みてみぬふりして、ぼくらは、クモの子を散らすように逃げた。
だから夕暮れどきの校庭にはだれもいなかった。
イケニエは砂場に連れていかれた。
みんな二階の教室からそれをみていた。
「殺されちゃうよ」
とはだれもいわなかった。
ただ、だまって恐怖にふるえながら砂場をみおろしていた。
あらかじめ掘って置いた穴にイケニエは埋められた。
頭まで砂をかぶせられた。
アイツラは、たのしそうに、その作業をしていた。

「おいでよ。こっちへおいでよ。あそぼう。いっしょに、あそぼう」

ソンナ声が砂場でする。
何人もの生徒がソレを聞いた。
でもそれを聞いた生徒のほとんどは――。
砂場に顔をおしつけて死んでいた。
だから生き残っている生徒の口から。
「こっちへおいでよ」
という声を聞いた。
……と告白されるまでは、だれもそのことをしらなかった。
砂場から声がする。
「こっちへおいでよ。いっしょに、あそぼう」
学校の、いまは伝説となっている。
殺された生徒のリベンジがはじまったのだ。

「こっちへおいでよ」

呼ばれるのがイジメッコではなく――。
二階で死の遊戯を目撃していた生徒だった。
なにもしないで、見ていただけ――。
友だちを助けないで――。
殺されるのを、見ていただけ――。
二階から見ていただけの子が呼ばれていた。
殺すより、罪が深かったのだ。
ただ見ていて、イジメッコの死の遊戯を黙殺した。
ほくもその目撃者だった。
そのことが恐怖をさらにつのらせた。
なにもしなかった子が、呼ばれてつぎつぎと死んでいく。
友だちが殺されるのを黙認していた者が――死んでいった。
じゃ、イジメッコはどうなったのか。
ある朝、砂ダンゴを口いっぱいに詰め込まれて死んでいた。
砂場に川の字になって、三人きちんと並んで死んでいた。
もちろんあの子と同じように窒息死だった。
いまでもあの砂場はアル。
でも砂場にはだれも近寄らない。
砂遊びする子もいない。
ぼくらの学校の都市伝説だ。

「こっちへおいでよ」



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忘れものをした。ボケ元年だ。 麻屋与志夫

2015-04-13 07:30:12 | ブログ
4月13日 月曜日

忘れものをした。ボケ元年だ。

●もうはまだなり、まだはもうなり。という格言がある。 
●「あっ。ポシェット忘れた」
瞬時、カミサンは走りだしていた。
わたしは猫の餌をしこたまリックに詰め込んでいる。
走れない。
あまり暑かった。
汗だくだった。
エントランスのカート置き場で荷物をおろした。
タートルのセェターを脱いだ。
セェターとポシェットをそのまま置いてきてしまったのだ。
●カミサンがホームセンターの広い駐車場を走っていく。
小さな後ろ姿が園芸品売り場に消えた。
エントランスはその先だ。
カミサンがあわてるにはわけがある。
ポシェットの中には現金とカードが入っていた。
半月暮らせるくらいの金だ。
老夫婦にとっては大金だ。
ああ、もうだめだ。
忘れ物をするようでは、いよいよボケがはじまった。
過日も孫に英語の問題を聞かれた。
わからなかった。
15年間は、高校三年生を教えていない。
中学生だけの塾になってしまった。
大学の入試問題を教えるには――。
予習しなければ教えられない状態になっていた。
その上。孫は超一流大学の受験生だ。
教えられないのは、悲しかった。
高校生が入塾してくれないかな。
そうすれば、忘れた歌を思い出す。
そうすれば、一生懸命、大学入試問題の勉強をするのになぁ。
そんなこんなで、ボケたぁ―と悲観した。
「まだまだよ。いままで物忘れなんか、したことないじやない。これでフツウの人になったのよ」
まだまだよ。と励まされてうれしかった。
忘れ物はブジ受付に届けられていた。
店員の男の子が気が付いたとのことだった。
ありがとう。
家に帰ってから荷物を計量した。
12,5キロあった。
「まだまだ大丈夫。もうすぐ82歳になるのに、これだけの荷物を背負って40分も歩けるなんて、スゴイ体力よ」
また、カミサンに励まされた。
●でも、もう82歳になるのかと慄然とした。
もう、あまり先がない。
「そんなこと考えたらだめよ」
そうだ。先日お会いした恩師は100で、まだまだお元気だった。
悲観的なことをいってはいけない。
110歳まで生きてやる。
まだまだだ。
と自分をはげましながらも、まだは――もう。
まだは、もう。という想念からは逃げられない。
はやく、もっと、もっとイイ小説をかかなければ――。
と自戒した老いたる高等遊民なのでありました。

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ブラッキー、死なないで。 麻屋与志夫

2015-04-12 05:44:28 | ブログ
4月12日 日曜日

●ブラッキ―がすっかり老けこんでしまった。

カラスの羽のように漆黒の毛がつやつやと油でも塗ったように光っていたのになぁ。

茶色に色変わりした。

もちろん全身茶色になったわけではない。

背中の毛が色あせて光の当たりかたによっては茶色っぽくみえるだけなのだが。

●抱きあげても、背中の骨がゴツゴツしてお腹のあたりの脂肪も減り、要するにやせ細ってしまった。

ふっくらとして、弾力のあった下腹部に肉はついていない。

いちばん肥っていたときの半分くらいの重さしかない。

●「認知症じゃないの」とカミサンがいう。

猫もボケるのだろうか。

たしかにおかしい。

外に出たがる。

出してあげても直に戻って来る。

餌をたべたがる。

いつも飢えているみたいだ。

食べたことを忘れてしまうのだろうか。

●ブラッキ―は16歳。

まだまだ元気でいてもらいたい。

わたしが小説を書きつづけてきて、一番苦しい時期をわかちあった、戦友みたいなブラッキ―だ。

いつもPCの脇に香箱すわりをしてジーッと声にはだせないが、わたしをはげましつづけてきた愛猫だ。

がんばろうよ。

おたがいに長生き競争だよ。

●けさも4時にブラッキ―に起こされたから、こうしてブログが書けたのだものな。

感謝しているよ。ブラッキ―。
















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とある田舎町の「学校の怪談」episode 20 明日香の進学希望校 麻屋与志夫

2015-04-11 10:58:35 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode 20 明日香の進学希望校。

春の雨がしとしとと降りだしていた。
教室の窓ガラスがすっかり濡れている。
芽のふくらんできたバラが霞んでしまった。
窓を細めに開ける。
雨のにおいのする夜風がそっと吹きこんできた。
「先生、わたし栃南高校に進学決めたよ。学校の先生が、新しい高校だから受験希望者も少ないから、合格できるって」
「えっ、どこにあるの」
「やだあ、先生、知らないの。駅の南だよ」
明日香ちゃんはにこにこ笑ってこたえた。
木村は動揺した。
ソンナ高校の名前は聞いたこともない。
明日香はかわいらしく、首を傾げていた。
英語の問題集に黒板の解答を記入している。
いくら注意しても、ただ自動的に回答欄を埋めているだけだ。
なにもかんがえない。
発音もしない。
――音読しなければ英語は身につかないのにな。
穴埋だけの授業をしているプリント塾から移って来た生徒だ。
一対一の個人指導と宣伝している。
実態は机を仕切り板で、間仕切りしただけの。
「バタリー鶏舎方式」の塾に長いこと在籍していた。
いくら注意しても穴埋め作業をせっせとやっている――。
「栃南高校ってあるの」
木村は次の中二の時間に生徒たちに訊いた。
みんなキョトンとしている。
――そうだよな。あるはずがない。
わたしの知らない新設校がこの街にあるわけがない。
おそらく、あまり成績がわるいので、どこも県立高校は受験させてもらえないのだ。
それで、かわいそうに苦し紛れに、空想上の新設高校をつくりあげたのだ。
かわいそうに。
外では雨足が激しくなっている。
春の雨にしては激し過ぎる。
木村はそっと胸のポケットからメモをとりだした。
明日香ちゃんが、教室を去る時、手渡してくれたものだ。
「先生、ながいこと、お世話になりました。さようなら」
そう書いてあった。
――これで明日香ちゃんの笑顔がもう見られない、寂しくなるな。
やるだけのことは、やった。
明日香ちゃんだって、せいいっぱい努力した。
勉強のやり方は、はじめて教わった学校や塾の先生の影響をうける。
勉強態度がわたしの意に添わなかったのは仕方ないことだ。
明日香が受験の当日。
消えた。
元気に家を出たというのだ。
でも、どこの高校を受験したというのだ。
まさか、ありもしない、空想上の栃南高校を受験するために、出かけたのではないだろう。
警察の必死の捜査にもかかわらず三日が過ぎた。
マスコミが東京から駆けつけた。
誘拐事件として大騒ぎになった。
木村は明日香に聞いた、駅の南にあるという高校の場所にいってみた。
路肩に明日香のピカチュウの鉛筆ケースが落ちていた。
雨にぐっしょりと濡れていた。
ほとんど原形をとどめていなかった。
ここに次元の割れ目がある。
そのスリットから明日香は向こう側に行ってしまったのだ。
木村らはようやく咲きだした街路樹、彼岸桜の梢を見上げていた。
明日香のこころを思うと桜の花がくもって見えなくなった。
春の雨が、明日香が教室を去った時のように降り出していた。
遠望する駅の明かりが影った。
霞んでしまった。
雨のためではなかった。
木村は明日香ちゃんを想い、その場に立ち尽くしていた。
塩辛いものが唇にたれてきた。
雨水ではない。涙だった。
「なにも……力になってあげられなくて……ゴメンナ」
木村は、泣いていることにも気づいていなかった。









 

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春の朝。雨。街はまだ眠っている。 麻屋与志夫

2015-04-11 06:19:40 | ブログ
4月11日 土曜日

●夜来の雨が降り続いている。

5時起床。

街はまだ目覚めていない。

静まりかえっている。

濃い灰色の雲が不気味なうねりをみせて空を覆っている。

雲は確かに動いている。

これから晴れるのだろうか。

古賀志山は見えない。

●千手山の桜ももうおわりだな。

色褪せしてきた。

宝蔵寺のしだれ桜は散りだしている。

そうした風景を二階の寝室から眺めてから階下に下りる。

●ホリゴタツにはいるとブラッキ―が寄って来た。

「リリと仲良くしてやってよ」

と話しかけても、ニャンとも応えてくれない。

●さてと、きょうも、ショートショートを書こうかな。





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香取俊介著。不況の長いトンネルを抜け出そうとしている今、ビジネスのあり方を再考するにふさわしい本です。


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夜になって雨。静かに春の夜るが過ぎていく。麻屋与志夫

2015-04-10 21:11:18 | ブログ
4月10日 金曜日

●夜になって雨が降りだした。

カミサンと猫、ブラッキ―とリリ――広い家で2人と2匹の夜が静かに過ぎていく。

●先住猫のブラッキ―はあいかわらず子猫の新参者リリをきらっている。

こまってしまう。

なかよくしてくれればいいのだが、リリが近寄ると猫パンチをくりだす。

威嚇のウナリ声をあげる。

なんとか、仲良くなるような方法はないのだろうか。

飼い主としては、悲しい。

情けなくなってしまう。

●このところ毎日ブログを更新している。

小説のほうは停滞気味だ。

これも、情けない。

●家の中はシーンと静まり帰っている。

かすかに屋根を打つ雨音がする。

春の夜が更けて行く。

明日は晴れるのか。





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わきて見む老い木は花もあはれなりいま幾たびの春に あふべき 西行  麻屋与志夫

2015-04-10 17:43:52 | ブログ
4月10日 金曜日

●小説を書く。
裏話。
わたしの場合。
なにげない日常生活の中で、ふと、これは書ける。
と閃く瞬間がある。
実生活でテレビを見ていて、新聞を読んでいて、読書の合間に、ケースバイケースだが――。

●そうした閃きを感じた時には直に書きだす。
最初の一行が決まれば書きだしてしまう。

●なんの準備もしない。
ストーリーがどうなっていくかわからない。
だから、長編よりも短編、短編よりもショートショートにわたしは向いている。
「ある田舎町の学校の怪談」と「超短編」を連載している。
「超短編」の1~50話は「アサヤ塾の窓から」というタイトルになっている。
なんらかの意味ですべてアサヤ塾に関連したところからネタを吸い上げている。
現在進行中の51話からは、「老いの窓から」というタイトルにしたい。
だから主人公はすべて老人だけにしぼっている。

●前作の「皇紀2675年の花の下にていま死なん」はかなり自信がある。
いかがでしようか?
毎年、御殿山と千手山公園に花を見に行く。
ありがたいことに、わが家から数分の距離にある。
そして花の季節になると西行の歌を思い浮かべる。
そう、あの有名な「願わくば 花の下にて 春死なん その望月の如月の頃」から「春死なん」を「いま死なん」としていただきました。
「わきて見む老い木は花もあはれなりいま幾たびの春に あふべき」 からは老いた桜の木のロウタケタ美しさと哀れのイメージをいただきました。
わたしなりの大好きな西行へのオマージュ(仏: hommage)です。

●文学作品は読書を重ねて行くと、ああ、これはどこから、誰から影響をうけている。
などといことがわかってきます。
それも楽しみ方のひとつです。

●さて、これから桜を楽しみにカミサンと散策に出かけます。

    

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

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夢見るGGの夢占い 7 「スラックスの裾が切り落とせない」 麻屋与志夫

2015-04-10 05:59:06 | 夢見るGGの夢占い
4月10日 金曜日

夢見るGGの夢占い7「スラックスの裾が切り落とせない」

●奇妙な夢を見た。
サッカ―選手になっていた。
なんぼなんでも、いくら夢の中だからといって、このGGがサッカー選手とは――ね。
驚きだ。
願望の表れ、現実における、希望の達成をこんな形で現してしるのだろうか。
とこれまた、まだ夢の中で考えているわたしがいる。
デニムのスラックスをはいていた。
選手は短パンでなければいけないといわれた。
だれにいわれたのか、わからない。
夢だから追求のしようがない。
裾をハサミでジョキジョキと切り落としているのだが、布が濡れていておもうようにハサミが進まない。
ピッチでは、歓声。歓声。歓声。
早く行かなければ。
試合開始に間に合わない。
あせればあせるほど、ハサミは停滞してしまう。
手で引き裂こうとしても、布が固くてだめだ。
冷や汗が出る――。

●占いコーナー。
額の上の前頭はほとんど無きがごとしGGの髪だ。
後頭部はボサボサ。
すさまじい密生、乱れにみだれている。
ハンチングの後ろで髪が氾濫している。
カミサンが明日『切って』あげる。
といっていた。
この『切る』ということばに触発された夢だったのだろう。
後ろ髪のヤツ、ドウセなら額の上で氾濫してくれればいいものを――。

●ある拙作、長編小説を読みかえした。
これはもう、かなり切りつめないと整合性があっていない。
不要の箇所はおもいきって、切り捨てると、覚悟を決めている。
この『切り捨てる』が脳裏のどこかに言葉として、潜在していた。
でも、いちど書き上げた箇所は、そう簡単に切り捨てることができない。
『切る』というイメージはそこからも来ていたのだろう。
夢とはおもしろいものだ。

●それにしても、どうしてイメージとして、デニムのスラックスを短パンに縮める作業になったのだろうか。
わからない。


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超短編 5 皇紀2675の花の下にていま死なん。 麻屋与志夫

2015-04-09 07:10:37 | 超短編小説
5 皇紀2675の花の下にていま死なん。

平成27年の春だ。
戦後70年たっている。
その記念行事がいろいろとある。
年老いたものたちは、戦争中に使われていた、「ことしは紀元2600年」という標語をいまも忘れてはいない。
神国であり鬼畜米英には負けるはずがない。
必ず神風が吹くと、国民学校の先生が教壇で教えてくれた。
ことしは皇紀2675年にあたるようだ。
新鹿沼駅で降りた。
御殿山公園まで花見に東京からやってきたのだった。
小高い丘の上にある公園だ。
新垣結衣の「フレフレ少女」のロケにでた野球場が丘の上にある。
この坂道をのぼるのが、老人にとっては健康を計るバロメーターだ。
昨年よりは息切れがする。
ウグイスの鳴き声を聞きながら坂の途中で一休み。
いつもの桜の幹に壁ドンみたいな恰好で体を寄せる。
だいぶ息切れが酷い。
「GGになっちまったよ、道子ちゃん」
と桜の古木に話しかける。
――この桜はわたしが縁故疎開から東京にもどるときに植えたものだ。
隣の道子ちゃんと2人で植えた。
「こんなとこに植えてしかられないかな」
「記念樹だから。わたしとトオルの2人の思い出になるから」
坂道はまだ舗装されていなかった。
道幅もいまの半分もなかった。
路肩を焼夷弾の筒の鉄板でつくったシャベルで掘った。
「もう会えないの」
「会いに来るよ。ぜったいに会いに来るから」
「きっとよ。待ってるから」
幼い会話をいまでも再現できる。
「道子ちゃん。元気だった」
老人はごつごつした木の幹にはなしかけた。
根元がすっかり腐朽していた。
樹勢も衰退していた。
内側が空洞になっているからなのだろうか。
声をかけると幹の穴から音がもれでてくるようだった。
それが道子ちゃんの声に聞こえるのだ。
「待ってるから。まってるから。マッテルカラ」
ごつごつした黒い瘤と空洞のある桜が全身で恨みの声、泣き声をあげているようだった。
「いま少し待ってて、書き終わったら行くから。会いに行くから。まだ、道子ちゃんとぼくとのこと書いていないんだ。いちばん書きたいことを、さいごまで、残しといたんだ。能なしだから、なかなか書きだせないでいるんだ。傑作にしたいと欲張ってるんだよ。だってぼくと道子ちゃんのこと書くのだもの、後の世まで残る傑作にしたいよ」
道子ちゃんと植えた記念樹に会いにくるようになって、5年になる。
来る年ごとに、坂を道を登るときの息切れはひどくなっている。
いまだに、道子ちゃんとの思い出は小説としてまとまらなかった。

「道子はよっぽどトオルちゃんのこと好きだったのだね。中学を卒業すると東京へでたのよ。東京に行けばトオルちゃんに会えるとおもっていたのね」
5年前にはじめて帰省したとき、道子の母は100歳でまだ生きていた。
「立川まではいったらしいんだ」
「曙町の家は戦災で焼けてしまって……深大寺のほうに越してしまっていたから」
「基地の赤線で働き、体も心もぼろぼろになって帰って来たんだ。トオルちゃんに合わせる顔がないって、毎日泣いていたよ。泣き疲れて死んじまった。まだ17だったよ」
わたしにトカせたかった、トイテもらいたいとねがっていた、帯をこの桜の枝にかけてその重みで満開の桜が散った。道子は花に埋もれて息絶えた。


純潔で結婚するという、貞操観念がのこっていた戦後間もなくのころだった。

桜の老木は花が散ったら伐採されることになっていた。
老人がその老木に寄りかかって、抱擁している姿勢で息絶えているのを発見された。
老人は幸せそうなあどけない笑顔をしていた。




 


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超短編 4  「ある殺し屋の挽歌」  麻屋与志夫

2015-04-08 16:11:25 | 超短編小説
4 ある殺し屋の挽歌

子猫だった。
まだよちよち歩きの子猫だった。
「ニャア」と鳴いていた。
生後一月くらいだったろうか。
わたしは、抱きあげようとした。
さっと身をかがめた。
プシュと銃声がした。
コールデン街の薄闇にマズルフラッシュが一瞬きらめいた。
サイレンサーをつけていても光はかくせない。
音だけは確かに低かった。
わしは耳もとに衝撃波を感じた。
子猫を抱きあげた。
逃げた。
おそわれるのには馴れていなかった。
銃撃の的にされるなんて、この俺が――。
ふところで子猫が鳴いていた。
「おまえのおかげで、命拾いをした。おまえを抱き上げようと屈まなければ命はなかった」
恐怖で全身グッショリと汗をかいていた。
殺し屋が死を恐れるようでは、ヒットマンとしてはやっていけない。
わたしはその場から逃げた。
都落ちした。
――あのときの子猫は、20歳になっていた。
「よく今までおたがいに、生きてこられたな。猫の20(ハタチ)は成人式ではない。いつ死んでもおかしくはない歳だ」
すっかり老けこんだ殺し屋はスーパーのカートを押しながら、独り語と。
ふいにパンパンと銃声。
子どもがオモチャのピストルでかれを撃った。
かれは「ウッツ」とカートに上半身を倒した。
ソノ見事なリアクションに撃った子どもは、びっくりしている。
殺し屋のふところから老猫が転がり落ちて「ニャア」と鳴いた。

   




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