ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 (宰相 幣原喜重郎) 最後のご奉公』

2021-08-11 14:17:42 | 徒然の記

 塩田潮氏著『 (宰相 幣原喜重郎) 最後のご奉公』( 平成4年刊  文芸春秋社 )を、これから読みます。580ページの、分厚い本です。

 「親英米派の外交官であり、外相だった。」「国際協調による平和外交を主張し、軍部と衝突した政治家。」と、私は氏について、この程度のことしか知りません。付け加えるとしたら、対英米戦争を考えている軍部から、幣原外交は「軟弱外交」「国辱外交」と誹謗されていた話です。

 朝日新聞でさえ、当時は聖戦遂行の記事を華々しく書いていたのですから、あの頃の軍に従わないというのは、誰にでもできることではありません。「国辱外交」と批判されても、信念を曲げなかった氏は、むしろ大した人物だったのではないでしょうか。現在の自民党議員諸氏が、党内の媚中勢力と公明党に忖度し、反日左翼マスコミを恐れ、「中国非難決議」さえできない現状を見れば、幣原氏との違いが分かります。

 しかしその人物が、憲法九条に大きな貢献をしていたというのですから、ショックです。どのような状況下で、どのような経緯でそうなったのか、是非とも知らなければなりません。78才の学徒ですが、20才の気持ちに戻り探究心が燃えます。巻末に、著者の略歴がありますので、まずそれを転記します。

 「昭和21年高知県生まれ、慶應大学法学部卒。」「文芸春秋社の記者を経て、昭和58年に独立しノンフィクション作家になる。」「著書『霞ヶ関が震えた日』で、第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。」

 今はここまで知れば十分なので、先を急ぎます。

 目次を見ますと、序章から終章まで19章の構成で、「ワシントン会議」、「満州事変」、「濱口首相狙撃事件」「敗戦」、「大命降下」、「マッカーサー草案の衝撃」と、激動の昭和が語られています。

 後書きの叙述にも、心が惹かされました。

 「幣原喜重郎は、忘れられた宰相である。」「明治、大正生まれはともかく、昭和生まれの日本人の大半は、」「昔、幣原という首相がいたと聞かされても、顔も名前も浮かばないというのが実態であろう。」「しではら・きじゅうろうと云う、読み方さえ知らない人が少なくない。」

 私もその一人でしたから、本棚に並べていても、特段の注意を払いませんでした。今回初めて手に取り、後書きを読み、強い関心を覚えました。

 「戦前は『幣原外交』、戦後は『日本国憲法の生みの親』といった活躍をしながら、」「これまでほとんど、正面から取り上げられることがなかった。」「それには、隠された事情があった。」

 「云うまでもなく、憲法をめぐる戦後の果てしない論争、」「根深い対立が、その最大の原因だった。」「幣原氏を取り上げようとすると、憲法制定の経過、」「とりわけ第九条の、戦争放棄条項が設けられた事情について、触れないわけにはいかない。」

 自分の知らないことを教えてくれる人は、全て師と云うのが私の信条ですから、潮田氏はこの時から、私の師になりました。姿勢を正して読みました。

 「ところがこの部分は、戦後最大の論争テーマであり、」「容易に踏み込むことができない、問題であった。」「とりわけ戦前の『平和外交』の象徴とも云うべき氏が、」「戦後『平和憲法』の起草に関わったという巡り合わせを、どう位置づければいいのか。」「誰もが、容易に回答が出せなかった。」「そのため氏は、歴史のエアポケットに置き去りにされたのである。」

 たとえ師であっても、「平和憲法」という言葉は気に入りませんが、平成4年と云う時代を考えれば、黙認するしかありません。どんな時代だったのかを、息子たちのため、ネットで調べましたので転記します。

 ・内閣総理大臣 宮沢喜一氏

 ・内閣官報長官 加藤紘一氏 12月12日より河野洋平氏

 ・鄧小平氏 「南巡講話」の開始 ( 湖北省武漢より )

 ・イギリス 保守党メージャー政権誕生

 ・細川護煕氏が、日本新党結成

 ・金丸信氏が、佐川急便から55億円受領した事件で、副総裁辞任。のちに、議員辞職、経世会会長辞任

 ・経世会会長 羽田孜氏  会長代行 小沢一郎氏

 ・天皇中国訪問 歴代天皇初の訪中

 ・アメリカ大統領に、民主党ビルクリントン氏当選

 ・羽田孜氏、小沢一郎氏が経世会脱退し、羽田派(改革フォーラム21)を結成

  ・韓国大統領に、金泳三氏当選

 朝日新聞の、捏造慰安婦問題の記事に大慌てし、ろくに調査もせず金大統領に平謝りした宮沢氏と、日本国民を苦しめることになる「河野談話」を発表した官房長官の時代です。この時に出版された本なら、著者が「日本国憲法」を「平和憲法」と言い間違えても、致し方無しでしょうか。

 前置き(予備知識)はこのくらいにして、次回から書評を始めます。

コメント (2)
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