ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

品格

2012-12-06 12:44:03 | 徒然の記

 入江相政著「侍従長のひとりごと」(講談社刊)を読み終え、遠藤周作著「ぐうたら人間学」(講談社刊)を手にしている。

 入江氏の本には、花鳥風月、人間模様、時代の流れや人びとの暮らしなど、率直な感想にユーモアあり風刺あり、乱暴な言葉にさえ捨てがたい魅力があった。何度でも読み返したいほどの味わいがあった。遠藤周作氏の著作は、狐狸庵先生閑話という表題で、随分宣伝されていたが、私は初めて読んだ。こんなつまらないものだったのかと、10ページほど読んでがっかりした。

 軽妙なユーモア作品と褒めそやされていたけれど、同じ出版社が、こんな玉石混交の本を出すのかと、改めて知った。不本意なことで、書くのも躊躇うのだが、遠藤氏の本は、読み終えたら、資源ゴミの回収日に出そうと考えている。

 入江氏の本が愉しかったので、遠藤氏にも同じ期待をした。それが、そもそもの間違いだった。同様の身辺雑記でありながら、これほどまで読後感に差があるのは、偏に作者の品格が作用している、と思うしかない。

 短いタイトルを付け、遠藤氏は沢山の小文を書いているが、どれも下品で、嫌な気にさせられる。読者に笑いを与えたいという頑張りは、理解するが、眉をひそめずにおれないお粗末さだ。読み出した本を、途中で止める習慣がないので、最後まで読んだ。途中で作品の評価が逆転するかも知れない、そうあって欲しいと望んだが、最後まで、氏は語り口を変えない信念の作家だった。

 私の「みみずの戯言」に、品格があるかと自問すれば、他人を批判する資格はないのだが、遠藤氏はプロの作家だし、無名の年金生活者の批評など、片腹痛いに決まっている。彼はもう、既に故人となられたことだし・・、ああそうだった、氏は既に、黄泉の国の人だった。

 死者に鞭打つような、後ろめたさにかられるから、これ以上書くのは辞めにしよう。これ以上批判すると、上品さに縁のない者同士で、同病相哀れむということに、なってしまいそうだから。

 衆議院選挙を前に、十一人の党首が一堂に会し、テレビで公開討論をしていた。トップニュースなので、早速「みみずの戯言」で思いを述べたくなったが、かってない小党乱立のため、頭の整理がつかなくなった。

 考えをまとめる前準備に、軽い読書でもしようと、入江・遠藤両氏の本を読み出した結果がこれで、予定外の「たわごと」になってしまった。

コメント
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