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人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

過ちを繰り返すことなかれ:外国人技能実習制度

2007年05月11日 | 移民政策を追って

 このブログでも時々とりあげてきた外国人研修・技能実習制度がようやく再編されるらしい。メディア*の報じるところでは、政府は、これまでの労働関係法が適用されない研修制度を廃止し、受け入れ企業と雇用契約を結び、最低賃金などが保障される「実習制度」に一本化する方針を固めたようだ。

  これまでの制度は、「研修」と「雇用・就労」という異なった概念、内容の制度を無理にひとつに
折衷していたために、「研修」の名を借りて実際は低賃金で就労させるなどの違法が絶えなかった。

  一人のウオッチャーとしては、再編は遅きに失したと考えている。この制度について、「低賃金労働の隠れ蓑」というマイナス・イメージがアジア諸国などに根付いてしまったからだ。日本の制度に似た同様な制度を導入した台灣、韓国などでも違反が相次ぎ、制度破綻に追い込まれた。日本の場合、欠陥は制度成立当初から予想されていただけに、問題が露呈した早い時期に改革に着手すべきであった。しかし、今回の改正?案には、検討不十分と思われる多くの問題が残されている。

  「研修」と「就労」の制度を切り離すのは、これまでの流れからすれば当然な措置である。しかし、切り離すについては、十分検討しておかねばならない多くの重要問題がある。そのひとつは、「実習」制度に一本化するからには、「実習」と「就労・雇用」をいかに区分するかという問題がある。「実習」が再び「低賃金労働」の隠れ蓑になってはならない。

  「実習」という言葉には、実地(現場)における技能(熟練)習得という語感がある。技能の「研修」という響きを少なからず継承している。
ところが、今回の制度変革案では、「実習」の名の下でも受け入れ企業と「雇用契約」を結ぶ以上、外国人実習生が実質上、労働者として雇用されることはほぼ明らかである。

  これまでの経緯からみると、新たな制度の下で「実習生」が低賃金労働者として固定化されてしまうことが当然予想される。新聞の見出しとは裏腹に、「外国人を働かす実習制度」が生まれる。それも「実習生」の名の下に低賃金で雇用するとなれば、事態はこれまで以上に悪化しかねない。

  これでは厳しい労働力不足の到来を前に、低賃金の新たな外国人労働力を「実習」という不透明な受け入れ経路で確保しようとする動きとしか思われない。透明性のない制度はかならず悪用につながって行く。

  今回の制度は、これまで単純(不熟練)労働は受け入れないとしてきた日本の入管政策の実質的転換を意味するといえよう(と言っても、すでにさまざまな形で不熟練労働分野で、外国人労働者は働いているのだが)。日本がどうしても不熟練労働の分野での人手不足に対応するために、外国人労働者を受け入れる必要があるならば、そのあり方に十分な検討を行った上で、より透明性の高い制度改革がなされるべきだろう。「実習生」という名の新たな低賃金労働者を生み出してはならない。

  実質的に労働力として受け入れるからには、国内の労働需給とどのようなリンクをさせるか、外国人労働者の人権、労働条件をいかに確保するかなどの点について、国内労働者と同等の条件の保障
、切り離した「研修」の今後など、詰めるべき数多くの問題が残されている。禍根を残した旧制度の轍を踏まないよう、今後の法案化に向けて、十分な検討を望みたい。

* 「外国人働かす研修廃止案」『朝日新聞』2007511

** その後、この制度をめぐり、厚生労働省、経済産業省、さらには法相私案まで出されて、国論統一の場はどこにあるのだろうか。縦割り行政の弊害きわまれりという有様である。このままでは結果がまた歪んだ妥協の産物となることは目に見えている。

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